キサラマネジメント〈ライダ〉
俺は見知らぬかわいこちゃんにキサラを獲られるなんて嫌だ。
阻止するために全面的に木見戸リンに協力することにした。
善は急げだ! 俺は早速木見戸に連絡入れた。
『悲報を伝える。ついさっき発覚した。キサラには好きな子がいるらしい。でもな、今ならまだ間に合う!』
5限目の授業中だというのにすぐさま返事が来た。
『どういうこと?』
『キサラとその子はまだ付き合う寸前の仲らしい。だからギリ間に合かどうかの瀬戸際だ。こういうのってタイミングだろ? お互いフリーでいる時ってムズいじゃん? あっちの子と続いちゃったらもう木見戸にチャンス無くなる可能性だってある。だから今度の金曜日の弁当は気合い入れて作れよ! ここでアピールしておかなきゃダメだ!』
『じゃ、私なんかには無理だよ。いきなり私がでしゃばるなんて。お弁当も迷惑だよね・・・』
『そんな弱気じゃダメだ! もし今回上手く行かなくても、キサラだってあっちの子とすぐ別れてフリーになるかもだろ? 印象付けて確率上げとかないと。目の前だけ見てないで遠くまで見渡して行動しろよ』
『・・・そうだよね! ありがと。さすがライダくんて賢いよね。そうよね、そんなにすぐに両思いになんてなれるわけないもの。未来に向けて種まけってことね』
『俺が応援すっから、頑張れよ!』
『ありがと。でも津田沼くんの迷惑にはなりたくないから、お弁当は私の呪いを解いてくれたお礼として作るよ』
よし、これで木見戸の方はオッケー。
木見戸リンってマジいい子じゃん。顔も性格も清楚で合格だ。キサラと付き合うことを許す。
後は・・・・・
こっちは俺も気が重い。宇良川ルルスに連絡入れるなんて。
でも、キサラのためならやるしかない。
だからって、学校にいる時間にメッセージ送るのはさすがに嫌だ。
俺は今夜自分の部屋にこもって落ち着いてから連絡を入れる事にした。
それは夜9時過ぎ。
俺は今日やること全て終わらせて精神統一。
ベッドの上でスマホのディスプレイを見つめる。
要注意人物 宇良川ルルス!
ヘマしないように言葉に気をつけて送らねーとな。文字だけだと齟齬が生じることも結構あるし。
まずは、軽い出だしから・・・・・
『久しぶり。元気? ちょい、宇良川さんに聞きたい事があるんだけど、いいかな?』
・・・送信。これでどうだ? ディスプレイを睨む俺。
あ、既読ついた。すぐリプ来る?
『どんなこと?』
来た! 俺はすぐさま続ける。慎重に。
『宇良川さん、津田沼如月と同じ中学出身なんだってな』
『誰に聞いたの? それがどうかしたの?』
『宇良川さん、知ってるだろ? 中3の時、キサラとその友だちにひどい噂流れたそうだけど』
『たぶん。思い当たることはあるけど』
『それ、宇良川さんが関わっていたってことないのかな?』
『どうしてそんなこと金谷くんが聞いてくるのか不思議』
『キサラから頼まれた。その事で宇良川さんと会って話を聞きたいって言ってる』
ここで数分間が空いた。
宇良川さん、考え中? これってやっぱ関係してるってことだよな。
キサラとキサラの仲良し女子を攻撃なんて、宇良川さんキサラが好きだったってバレバレじゃん。同じ高校に・・・・・ん?・・・・・って!
あの高成績で鬼高来たって・・・ま、まさかキサラを追いかけて?
『私が悪口を流したとでも言いたそうだけど?』
『違うのならキサラに直接そう言ってやってくれよ』
『それで気が済むのなら』
俺は宇良川ルルスと今週の金曜日の放課後、進路資料室で話すことに合意して終わった。
何かヤバイことになんなきゃいいけど。
俺、当日キサラに付き添うわ。だってあんなヤツと二人っきりなんてキサラに何かあったら俺は更に後悔することになる。
俺の大切なキサラがあんなサイコパス女に屠られたら大変だ。
俺は宇良川ルルスとの約束の場所と時間をキサラに送り、当日は俺もついて行くと伝えた。
キサラはああ見えて一人では心細かったらしい。俺がついて行くって言ったら嬉しいみたいだった。
・・・キサラが俺を頼ってくれるって、嬉しいじゃんか。
そして、ついにキサラのバースデー、問題の金曜日を迎えた。
その日は気分と同様、もやもやした天気だった。今はなんとか持ってるけど午後からは強い雨らしい・・・・・
朝、教室の前まで行くと、若草色の風呂敷包を抱えた木見戸が廊下の壁にもたれて立っていた。
「ライダくん、おはよっ! これ、お願い。私今朝4時に起きてがんばったのよ! 二人で食べてね。喜んでくれたらいいな。津田沼くん」
「おう! さんきゅ! 木見戸。せっかくだし木見戸も一緒に食えばいいじゃん」
「えっっ! いいよ、私恥ずかしいし。これは私から津田沼くんへのただのお礼なの。今はいいの。ただ、見ているだけで。だからまだ言わないでね、私の気持ち」
「・・・いいのかよ? モタモタしてたらキサラ、他の子と付きあっちまうぞ?」
「・・・いいよ。だって津田沼くん、今好きな子がいるんでしょ? 私は想ってるだけでいいよ。迷惑かけたくないし。じゃ、これ、お願いね」
木見戸は俺に包みを押し付けると自分の教室に戻って行った。
最高じゃん、木見戸って。
俺は彼女の後ろ姿を見ながら決めた。
キサラに木見戸リンの気持ちを伝えるって。




