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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
よみがえる思い出の中で
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ミドリさん(仮名)の証言 ~D組の祟り神〈如月〉

 俺は実はシロイさん(仮名)という人は前から知っていた。


 だけど、サイコパスだってことは今回ライダに聞くまで全く知らなかった。


 同じ高校にいるのは知っていたけど、俺は関わらないようにしていたし、向こうだって特に何も言ってこないし。


 それにアイツがこの高校に来ること自体、おかしな話だった。


 あんなに成績優秀なやつが。


 まさか・・・・・?とは思うが不気味な存在だ。



 永井先生をコマに使った女子生徒、シロイさん。   



『そのシロイさんって女子は性格に難があってさ。"嘘つき" っていう。ステルスなサイコパスっていうの? そんな感じの』


 彼女について、俺の友だちのライダはそう語ったんだ。



 誰も俺がシロイさんの知り合いなんてことは知りはしない。


 俺は高校に入ってからアイツとは話した事もなければ目線すら合わせたこともないし、アイツのことを誰かに話したことすら無いんだから。



 ライダはいかにも嫌なことを思い出したって顔しながら言ったんだ。

 

『一緒にクラスで過ごしてた生徒はそんなこと皆、常識として知ってたに決まってんじゃん。だって、もうその時は9月だったんだからさ。4月からもう半年も経ってんだし。シロイさんの嘘の被害者数は既に二桁になってたと思うぜ』



 永井先生のこと知りたいなら、先生を手玉に取ったシロイさんの話は欠かせない。



 一体アイツは何を考えてそんなことを?

 サイコパスだったってマジかよ?

 いつからそんなんになったんだ?


 ライダに隠した俺の胸の内では、さわさわ小さなさざ波が立っていた。



 シロイさんて一体どんな女子生徒なのかライダに聞いたら、シロイさんをリアル体験した人が今いるかもって、教室の中を見回した。


 それでライダは、今年も同じクラスにいる去年D組だった被害者の一人を呼んでくれた。


『彼女はいまだにシロイさんの祟りから抜け出せてなくてナイーブになってるから、言葉には気をつけて話せよ』と 注意を受けた。



『おーい、XXXさん! ちょい いい? こいつにシロイの話してやってくれよ』




 ーーーミドリさん(仮名)の証言



 えっ?何、あたしの話聞きたいっていうのあんた?


 いいよ、話しても。でも、あたしから半径1.5m以上離れててね。フィジカルディスタンス保っててくれるかな?


 ・・・そういうんじゃないよ。ゴメン。だってさ、あたし臭くない?


 ・・・そう? 大丈夫? 本当に? 絶対? 命懸けて?・・・ならいいけど・・・すごく気になっちゃってさ。


 でもどうしたのよ? もしかしてあんたも被害にあったの?


 そういうわけじゃない? ふーん。


 なら、あの子には関わんないほうが利口だよ。


 あたし1年からのクラス替えの時はさ、次はぜーったいにシロイさんとは同じクラスにはなりませんようにって近隣の神社仏閣全部まわってお願いしたからね。


 ・・・あたし、あの子のせいで一番の親友だった子とギクシャクしちゃってさ。今はもうただの知り合いっぽい感じ。


 聞いてよ!


 入学してさ、すぐにめっちゃ気が合ってさ、すっごく仲良くなった子がいてさ、それ、キミドリ(仮名)っていうんだけどさ、彼女も "刀剣男の子" が大好きでさ、その話で盛り上がってたんだよね。


 席も近くてさ、あたしの後ろの後ろがキミドリでさ、それぞれの推しの話が尽きなくってさー。


 あたしのすぐ後ろの席にはそのシロイさんがいたわけだけど。


 だけどさ、その頃はシロイさんのこと、ただの真面目な優等生でめっちゃ頭良くってすごい人だとしか思ってなかったんだよね。


 口数は少ない子だったけど、話しかければ普通に返ってくるしさ、先生方とはハキハキとよく楽しそうに話してるの見かけたことあるし、コミュ障じゃなかったよ。


 宿題とかも一回200円払えば写真撮らせてくれたし、結構いい人でさ。信じてたんだ。彼女のこと。


 だからさ、そんな真面目そうなシロイさんがこっそりあたしに教えてくれたことが嘘だなんて思わないじゃん?


 シロイさんがある日言ったんだ。


『ねぇ、ミドリさん今日汗かいたの? ちょっと臭いがするからこのデオドラントシート一枚あげるね』


 周りをはばかりながら、こそっと教えてくれたんだよね。


 それからはたびたび言われたんだ。


『昨日何食べたの? ちょっとヤバくない? 私のミントタブレット一つどうぞ、はい!』


『ねぇ、ミドリさん。もしかして今日アレひどいの?私の席まで臭ってる。おトイレ行って替えてきなよ。私のデオドラントプラスのだからこれ、一個あげるね』


『ねえ、これ、秘密だよ? キミドリさんがさ、ミドリさんのこと、いっつもなにかしら臭いんだよね、ってゴールドくんとシルバくんたちに話してたの聞いちゃった』


『昨日さ、キミドリさんがこっそり私にさ、ミドリさんの後ろの席、臭くて可哀想って言ってきたから、そんなに臭くないよって言っといたよ』



 だからさ、あたし、すっごく臭いに気を使うようになってたのにそれでも言われてさ、段々辛くなってきてさ。


 あたし、キミドリと話すのもぎこちなくなってきて、キミドリのあたしを見る目がおかしくなってるのにも気づいてたから自然と距離置くようになってさ、7月にはもうお互いシカトになってた。



 でさ、そんな時、他の友だちから聞いたんだ。


 あたしには親切だったあのシロイさんが、あたしとキミドリの悪口を言ってたってこと。



 なんでもさ、こう言ってたらしいよ?


『私の席の前後にミドリさんとキミドリさんがいてさ、自分を越しておしゃべりする二人が超うざい、()ね! あいつら』


『あの二人超頭悪そうっていうか実際そうなんだけど、挟まれてる私って可哀想すぎでしょ? 自分で善処するしかないよね』


『ミドリさんとキミドリさんにほんとのこと教えてあげたらさ、やっと静かになったんだけど、もう席替えした後でさ、骨折り損っていうの? 私』



 その事、同時期にキミドリも聞いたみたいでさ、その事でうちら久々に話したわけ。したらさ、キミドリもシロイさんからあたしがキミドリの悪口言いふらしてるって聞かされてたことが判明してさ。もう、びっくりだよ。


 お互いに身に覚えのないこと言ったことになってたんだもん。



 だからってさ、その頃にはうちらもうそれぞれ違う子たちと仲良くなってたからさ、友情が元通りになることはなかったんだよね。


 シロイさんに嵌められたって分かってるけど、でもさ、なんとなくわだかまりは残るじゃん?


 あたし、キミドリのこと疑ってる訳じゃないんだけど、もしかしたらちょっとくらいは本当にあたしのこと悪く言ってたかもって気持ちが消えないんだよね。




 ・・・いいえ、どういたしまして。


 もういいよ。もう関係ないもん。


 シロイさんは "Dの組祟り神" なんだよ? あんたも気をつけた方がいいよ。

 そうだ! あんたどうせならついでにキミドリからも聞いてみれば?

 あの子はE組だよ。

 もし会ったら宜しく伝えといてね。




 ねえ、あたし、マジ臭くなかった?

 本当に? 少しも? 気ぃ使ってそう言ってるんでしょ?

 そう? 臭ってないんだ? 1万円賭けても? 嘘だったら呪うよ?


 ・・・3万円賭けてもいいって? ホントに? 



 あたし信じていいのかな?









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