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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
鬼胡桃高校 1ーD
74/221

これは自業自得〈イネリ〉

この回を先に投稿すべきでした。


一個前に割り込み投稿させていただきました m(_ _)m

「黒鳥さんが悪口を流していると思っているの?」


「わかりません。でも、きっと金谷くんに関係しているんじゃないかと感じています」


 私の問いかけに、うつむき加減の顔を上げたルルスちゃんと刹那 目が合った。



 あ・・・・・? 


 何かを企んでいる? その目に潜む光。



 見逃す所だった。ルルスちゃんのその瞳の奥の冷ややかな光。

 私にはわかるのよ? だって私はその目をよく知っているから。



 ねぇ?


 ・・・・今、演じてるよね。



 黒鳥さんが邪魔なの? 


 ああは言っているけど、もしかして金谷くんのことが好きなのかしら?


 どういう理由でなのかははっきりわからないけれど、ルルスちゃんがそう望むのなら私が排除してあげる。



 この子に贖罪すれば、私、きっとお父さんの亡霊から解放される・・・



 私は教師だというのに。私情を挟んでこんな振る舞いをしようと思うなんてどうかしてる。


 わかってる。でも・・・・




 ルルスちゃんの相談は、金谷くんがキーポイントみたい。



 金谷ライダくん。


 私は、彼に古典の授業のことで協力して貰っている。



 思春期にありがちな年上の女性に憧れる気持ちを利用して。


 もちろん私が男子生徒と特別な男女関係を持つなんてあるわけない。

 私には高1からずっと想い合っている彼がいるのに。



 金谷くんはクラス委員長でここの中では真面目な方で、偶然にも私の古典授業の教科担当だったから、生徒間での情報を聞き出すためにはちょうど良かった。


 本当はこれは学校では禁止事項なのだけれど、個人的に生徒とケータイで繋がった。古典の授業に身の入らないクラスの問題児たちの情報を聞き出すためには いた仕方がないのよ。だって彼らの心の内は同じ生徒同士でなくてはわからないのだから。


 教師の私に本心を話してくれる生徒なんているわけない。

 本当の気持ちなんて、同じ境遇の同じような立場の子同士でなければ打ち明けないものだろうし。


 私が潤んだ瞳でD組での授業の悩みを打ち明けたら、金谷くんは即、私の手伝いをしてくれると約束してくれた。


 うぶなお子様は可愛いわね。



 怒ったり 怒鳴ったりして強制し、従わない者には罰を与える・・・ それって生徒より立場が上の教師にとっては楽な授業の運営方法で、ただ機械的に授業を進めるだけなら有効なのだけれど、私はそんな風に生徒に接したくはないの。


 私はこの子たちに学ぶ楽しさや、学ぶ事によって自分の可能性が広がるって言うことに(みずか)ら気づいて欲しいのよ。


 なのに・・・


 ここの大部分の子は、高等学校という学ぶ環境を選択しながらも、ここまでやる気が無く 目の前に差し出されてる受け身だけで済む楽しい事に囚われている。


 幸せ過ぎて、毎日の平穏が当たり前で、それが永遠に続くのだと疑う事すらない世間知らずたち。


 そんなもの、きっかけさえあればあっけなく壊れてしまうものなのに。その時は自分の実力だけが頼りだというのに。


 手の届く狭い範囲内のコミュニティと架空世界に入り浸って、自分の現実での立ち位置を知らないし知ろうともしない。


 そんな彼らの気持ちを知り、興味の出るような授業を作るためにはやはり同じ年頃の金谷くんの助言は必要なのよ。



 私は私の理想とする授業を模索しながら目指す。


 古典を通じて子どもたちに、今も昔も変わらない人の心の根底にあるものを感じて欲しいと願った。


 そして、学ぶ事の意義を、出来るようになっていく達成感を与えてあげたかったのに。




 ーーーそれが・・・


 そんな私の理想論は、私がルルスちゃんに肩入れしたばかりに崩れ去ってしまった・・・・・




 ひと月後。


 私のしたことはすべてが裏目に出て終わった。


 一体ルルスちゃんは何を思っていたの?




 私はルルスちゃんの希望通り黒鳥さんを排除し、黒鳥さんをかばう榛原(はいばら)さんと根津さんを責め立てた。


 結果、二人の激しい反抗心を煽り、私の古典の授業は荒らされた。


 私は、教頭と学年主任の先生に呼ばれ事情を聞かれるはめになって、そこにはルルスちゃんも同席していた。


 そこで起こったことは私にとっては悲劇的だった。


 そう、ルルスちゃんは私とあなたとの密かなる血縁など知らないはず。

 それなのに、この私にみごと、復讐を果たしたの。


 そのよっちゃんと同じ冷ややかな瞳で。



 これは因縁なの・・・?



 ルルスちゃんは、教頭と学年主任の同席するこの場で、私がまるで男子生徒全般に媚を売っているかのような発言をして貶めて来た。


 さすがにこれには反論したけど、この学校では ずば抜けた優等生であるルルスちゃんの言葉が、他の先生方に与えた印象は強過ぎる。



「・・・私が気づいていなかったとでも? ねぇ、永井先生? ふふっ」



 ルルスちゃんは、金谷くんと私のことを指しているんだわ。


 (あざけ)がにじむ微かな笑みを浮かべながら、氷で出来た(つるぎ)を私に突きつけた。



 やっと理解した。


 彼女は金谷くんと私のことを誤解している。


 ルルスちゃんは金谷くんのことが好きなんだわ。だからこんなことを企んだのね?

 金谷くんから黒鳥さんと私を遠ざけるために。

 


 確かに私は彼の協力を得るためにほんの少し気を引くような態度を取ったのは認めるけれど、だからといって特別な関係などありはしないのよ?


 

 私はすっかりルルスちゃんの策略にはまってしまった。



 そして私に残されたものは落第教師の烙印。



 私の理想的教育のあり方を追及したいという(こころざし)は、あっけなく頓挫してしまった。



 私がいけなかったの。


 学校という場でルルスちゃんを特別視してしまったから。


 彼女に対する罪悪感から逃れるために、罪悪感を償却したいがために、間違った行動をしてしまった。


 いまだに時折フラッシュバックするあの、お父さんの姿から逃れたくて。


 あの部屋の臭気、汚れた床、あの几帳面だったお父さんとは思えないほどに変わり果てた醜い姿・・・・・



 そうね。自業自得。


 

 私も、お父さんもね。



 どうせ私はここにいても もう授業は担当させては貰えない。


 私の夢への道は一旦休止。どうやら精神修行が足りなかったみたい。



 私は休職する道を選んだ。



 よっちゃんにはこの事をどう伝えたらいいのかしら?


 ルルスちゃんのことも伝えるべきなのかしら?


 よっちゃんはこの事を知ったらどう捉えるのかしら?




 もし、この似た者同士の二人が出会ったら・・・?







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