目障りな優等生〈ライダ〉
俺は以前からクラスの生意気な女子、宇良川ルルスの事がいまいましくてむしゃくしゃしていた。
鬼高に来れば俺は楽して上位にいられると思ってたのに。
優越感に浸って3年間過ごせると思ってたのに。
アイツのせいですっかり霞んじまった。
確かに俺はここでは上位だ。
学年3位。
それだけ聞けばかなりすげぇ。だけどな・・・・・
同じクラスにはアイツがいた。
学期末最後のHRでは担任にめちゃ称賛され、それでもそれはさも当然の如くの澄ました顔してた。
そりゃ、中間ではすべての教科で100点、期末では一つだけミスって98点、その他パーフェクトってあり得ねーだろ?
学年3位の俺とだって2位の設楽ミキとだって比べ物にならねぇぶっちぎり。
偏差値50の俺ごときじゃ太刀打ち出来るわけない。
何でそんな奴がこの学校に来んだよ? 普通じゃねぇ。
そんなスゲー奴が来るとこじゃない。何考えてんだ?
宇良川ルルスの学力がクラスで判明して周りからの称賛を集め出してきてから、俺は顔には出さないようにしてたものの、はっきり言って目障りだと思ってた。
俺は鬼高では優秀なクラスのリーダーとなるはずだったんだ。
俺が受けるはずの称賛と優越感を奪い取った宇良川ルルス。
その学力がありながら鬼高を選ぶなんて、きっと素行に問題ありとか、成績以外で何かしらの障害があってトップ高を諦めたんじゃないだろうか?
そう思ってアイツには不気味さを感じていた。
そんな宇良川ルルスに俺の重大な秘密がばれてしまった。
先生と付き合ってるなんていう、トップシークレットが。
宇良川さんははっきりと俺を追及してきた訳じゃない。
ただ暗に牽制してきた。
その意味は多分、俺がクラスでリーダーシップを発揮しないように。
自分の邪魔はしないように、と。
それが目的で俺をストーカーして観察し、弱みを握ろうとしていたらしい。
怖ぇっ・・・何を企んでいる?
あの時、宇良川ルルスが俺に言った言葉。
『私ね、より良い高校生活を送りたいの。秩序を保ち決まりを守ってみんなが公平で、真面目な人や弱い子が被害者にならない環境を作るのが目標なのよ』
あれ、本心?
その為に鬼高に来た?
聖女様のごとく素晴らしき志。
何でそれが目的なのにクラスを引っ掻き回す?
アイツ、言ってる事と真逆のことしてね?
俺、宇良川さんの言葉で闇落ちしちまった奴、多数いるの気づいてる。
俺はアイツの脅しには屈しない。
永井先生とのことだっていつだって止めてやるし、これまでのことだって言わなきゃ誰にもわかるわけない。
宇良川ルルスが1人で言い張った所で俺たちが否定すればそれで済む。
俺は新しい彼女作ってまた楽しくやるだけ。
俺を見下してバカにしてる宇良川ルルス。
ここままじゃ俺の気が済まないぜ?
このまま気取っていられると思うなよ。
さっきのは、部室に向かう前のちょっとした寄り道ってだけだった。
今日は俺に聞きたい事がある、と 先生からメッセージが来たので、部活の時間より少し早めに学校に来た。
ならばと、場所は俺が男子更衣室の前を指定した。
人気が無いところだったら、先生と何か進展があるかもしんないし。
だけど、俺の期待は全く裏切られた。
俺のしたことと言えば、『1学期は古文の楽しさを生徒に伝えられなかった』とぐずぐず嘆く先生の泣き言を聞いてやっただけ。
そんで、先生が試作した古文解説AパターンとBパターンのどちらの説明が解りやすいか助言を求められた。夏休み明けに行う授業の準備らしい。
俺はつまらないので早々に切り上げようとしたら、着ていた体操服の背中をぐいっと掴まれ無理やり引き留められた。
構わず行こうとする俺。引き留め引っ張る先生。
お陰で体操服の裾が伸びてよれよれになってしまった。
洗濯すれば直るかな? これ。
先生が行った後、俺はついでにここで急いでバスケ用のユニフォームに着替えてしまった。もう結構部活の集合時間まで押してた。
で、ドアを開けたら宇良川ルルスが薄笑いでいきなり立っていた。
マジビビった。
俺は中学からバスケ部で、ここでもバスケに入部している。
部活ではクラスとは別で、めっちゃ気のいい奴と出会った。
それは俺の親友となった津田沼如月。
バスケ、ガチ上手い。しかもイケメン。
俺はキサラに憧れている。
キサラは俺にも誰にでも、助言を求められれば技術的なコツを惜しみ無く教えてくれるっていう心の広い奴で瞬く間に周りの信頼を集めた。
めっちゃ怖い先輩方もキサラには一目置いているようで、キサラにだけは当たりが弱い。
入部当初から注目されていたキサラは、かっけーからモテるのにキャーキャー寄ってくる女子にも深入りしない真面目野郎で、もしかしたら他で彼女がいるのかも知れない。
ここでキサラに会えた事は今のところ俺の一番の収穫だ。
夏休み中のキツい練習。厳しい先輩に揉まれながらも俺はキサラがいるから、その背中を追って頑張れる。
俺、マジでキサラに惚れている。
キサラのためなら何でも出来そうな気がするくらい。
毎日練習でくったくただ。でもこれは充実した疲労感。
一週間が、あっという間に過ぎてく。
俺の高校1年の夏休みはほぼ部活で終わった感じだった。
そして俺は、夏休み開けて始業式から即行動を開始した。
俺のリベンジ開始だぜ! 宇良川ルルス。
「俺さ、限定品のストラップ学校のどっかで落としちゃってんの気がついてさ、更衣室探して出たら、目の前で宇良川さんが俺のこと待っててさ、超ビビった」
クラスの友だちに都合の悪い所は一部改変して話した。
「やっべ! それってストーカーじゃん。宇良川さん、ライダに気があったのかよ?」
「宇良川さんてなんかヤバイ人だと思ってたけどな。ストーカーまでしてんの?」
ざまぁ
これでテストランキングを除き、宇良川ルルスの地位は俺の下。
その半日日課の日の放課後、俺は黒鳥さんを呼び出しコクった。
彼女はその場ですんなりOKした。
このことは俺の優越感と自己満足をすごく満たしてくれた。
こうでなくっちゃな。
俺が鬼高で求めていたものはこういうこと。
先生には時期を見て、近いうちに告げる。
俺たちのこと、宇良川ルルスにバレてるらしきこと、俺には新しい彼女が出来て、先生とはもう終わりにしようと思ってること。
そういうのって、タイミングが大事だろ? ゴタゴタは勘弁。




