金谷くんの苦情〈ルルス〉
そんなある日、クラス委員長の金谷くんが私をベランダに呼び出して言ってきた。
「ちょっといい? 話があんだけど」
「・・・何?」
「宇良川さん、蒼井が闇落ちしてるぜ? もういいかげん止めろよ」
なんなのよ? この人。急に話しかけて来て。何を止めろと言うの?
私はボランティアでこのクラスを、それぞれの良くない所を調教してあげてるだけなのよ。
それに、蒼井くんのロッカー荒らしだの万引き魔だのっていう噂は本当は私には関係ないし、結局は噂が大好物なあなたたちの産物でそうなったんじゃないのかな。
そんなことも気づかずに私を責めるなんて、短絡的過ぎると思わない?
私はその件についてはもう既に終わってるの。
そうよ、私の破損したノートの弁償は既に蒼井くんから受け取っているし、蒼井くんの追加された泥棒呼ばわりされた分の噂を捏造した犯人にはお仕置き済みよ。
その犯人はね、木見戸リンさんに片想いしていた茶室くんだった。
茶室くんは蒼井くんと一番の親友っぽい存在だったのにね?
二人は何やら些細な事でケンカして仲違い。
始まりは木見戸さんが、デオドラント気にしてる蒼井くんっていいよねって言ってる噂が流れ始めた頃だったよね。
今ではお互いシカトしてすっかり冷えてしまっている二人。
茶室くんには償いが必要だった。
私に罪をなすりつけた分。嫉妬して蒼井くんを貶めた分。
私はね、だから木見戸リンさんに敢えて言ってあげたのよ。
まあ、自分の取り巻きのひとりだし、彼女も薄々そう思っていたとは思うけど。
「茶室くんって木見戸さんのことすっごく好きみたいだね」
私、茶室くんにとても親切よね。告白の手間が省けたんだもの。
そしたら木見戸さんは私にちょっと照れたようなかわいらしい顔でこう言ったのよ。
「えっ? どうかな? やだぁ、冗談で言ってない?」
木見戸さんさんはただ照れてそう言っただけなんだけど・・・・
私は早速 恋ばな大好きな赤岩さんにそのまま切り取って教えてあげたのよ。
「木見戸さんにさ、茶室くんのことどう思うか聞いてみたらね、『やだぁ、冗談』って言ってたよ」
「あはっ、だよねー! 茶室にリンは無いって!」
すごく喜んでくれて。
もちろんこの手の噂は瞬く間に拡散よ。
公開失恋した茶室くん。
御愁傷様。
私は私と蒼井くんの被った被害の分、茶室くんに償わせた。
ねぇ、金谷くん。
私のボランティアの意義を誤解しないでもらいたいわ。
私は蒼井くんの分だってちゃんと茶室くんに償わせておいたのよ。
だから蒼井くんだって自分のしたことは自分で償って当然でしょう?
私はいつだって公平なんだから。
「蒼井くんが闇落ちって? それって私には関係ないと思うわよ。それにね、それはね、蒼井くん自身の罪悪感とか自己嫌悪がそうさせているんじゃないのかな?」
「・・・もしそうだとしても、ひどくねぇか? 宇良川さん」
「ひどい? 私が? 私は一人一人が自分のしたことに責任感を持つことが大切だと思うの。人に迷惑をかけるとか不公平な行いは正さないといけないのよ? そうしないと真面目な人や弱い人が傷ついてしまうのよ」
「俺、気づいてんだぜ? 宇良川さん、みんなを傷つけてんだろ?」
「それは違うわよ。悪い所を改めるための痛みは自身のものだもの。誰かがそう感じているとしても、それは私のせいじゃないよ。それにね・・・・・」
私は意味ありげに斜めに金谷くんを見る。
「永井先生のことなんだけど・・・・・」
急に目をそらして教室に戻ろうとしてる金谷くん。
あはは、私はある程度予測はついてるよ。
後はもっと確実な状況証拠を。
「・・・とにかく、これ以上クラスを引っ掻き回すな!」
あらあら。捨て台詞なんて。
これが人望厚き金谷ライダくんか。
君に私の邪魔など出来ないのよ。
だって、私はリアルの魔法が使えるんだから。
夢物語に出てくる魔法じゃない。
人の心に作用する本物の魔法を。
うふふ・・・・・あはははっ




