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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
鬼胡桃高校 1ーD
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永井先生の授業〈ルルス〉

 6月に入った。


 新任教師の永井先生。


 古典の時間。 


 先生の声だけが教室に響いてる。カツカツと黒板から響くチョークの音。


 永井先生。良く言えばとてもフレッシュ。他の先生方とは一味違ってる。

 すごく一生懸命だね。この授業。

 黒板の文字も丁寧で読みやすい。


 でも・・・


 せっかくの授業なのにほとんどの生徒は聞いていない。

 みんなこそこそケータイいじったり、ノートに落書きしたり、堂々と寝てたり・・・


 他の厳しい先生の授業だったらそんなことしないのに、永井先生の授業の時は皆、 "Let's have a break." 状態。


 2ヶ月たって、学校での大体のコツがつかめて来た私たち。


 永井先生はもう、生徒には完全なめられてる。



 私は教室を見回す。


 ちゃんと聞いてノートとっているのは私と・・・金谷くんと、後は数人だけみたい。



 永井先生はそれでも健気に一生懸命。



「紅川くん、ではこの "夢の浮き橋" とはどういう意味だと思いますか?」


「・・・ん? 俺? 俺今指された? 何で? 何で俺? えーっと、わっかりませーん」


 机の下、ケータイで遊んでた紅川くんにはわかるはずないよ。


「では、丸紅くん。答えて下さい」


「・・・・・」


「丸紅ルイくん?」


(おいっ、指されてるぞっ、マーベルっ! 起きろ、バーカ)


「へっ? 僕っ?」


 寝ぼけた顔でガタッっと立ち上がった丸紅くん。


「んー、わかりません」


 ひとこと言ってすぐ着席&睡眠。


 永井先生も、もっと先生らしくビシッと注意すればいいのに。


 戸惑う顔なんか生徒に見せたらいけないと思うわ。


 こんな先生初めてよ。



「はい、先生! この場合は はかない、ということだと思います」


 見かねた金谷くんが自ら手を上げて答えた。


「正解です。浮き橋というのはーーーーーー」


 ホッとしたみたい。説明の声が潤んでる。



 生徒に助けられてるなんて。



 永井先生、もうちょっとしっかりしないと。いくらなんでも先生としての厳しさとか威厳がないよ。


 こんなんじゃ授業も無駄な時間が多くて内容が物足りない。


 何とか改善しなくちゃ。


 私は一般受験で高得点を取り、最終学歴だけは恥じない大学に行かなければならないの。


 こんなスカスカの授業内容では、得られる知識が少な過ぎて、一人で本でも読んでいた方が充実だわよ。


 時間ほど貴重なものはないっていうのに。 


 金谷くんの様子をさりげなく見る。


 真面目にノートをとっている。


 私の見立てでは、金谷くんの学力はあまりあるとは言えないけれど、鬼高(ここ)ではかなりいい方なのかもね。



 私は、私のボランティアの障害になる可能性がある金谷くんの動向を毎日チェックしている。


 なぜか、あっちはあっちで私のことを警戒してる様子。


 クラスでは、どうした訳か陰で私をひどい人呼ばわりする噂があって、これはもしかしたらクラスのリーダー金谷くんの影響の可能性がある?


 私が嘘をついてみんなを陥れてるかのような言われようなのよ。


 私は嘘つきじゃない。


 そしてその私に対する陰口に便乗して、誰かが自己満足のための嘘の噂を流してる。


 私が言ってはいない事まで私が言ったかのようにされていて、例えば、『蒼井くんがロッカー荒らしをしてるのを見た人がいるらしいよ』なんて、私が言ってたことになっているらしい。


 このクラスにはどさくさに紛れて蒼井くんを陥れたい人がいるの。私の名前を使って。


 犯人の大体の見当はついているよ。

 それはきっと木見戸(きみど)リンさんの取り巻き男子の誰か。


 木見戸(きみど)さんが蒼井くんのこと褒めてたから妬まれているの。


 嘘はよくないね。しかも私の名前を使うなんて。


 犯人を突き止めて罪を償わせなきゃならないわ。



 ほんと、人間て醜悪。



 それに私がミキちゃんに言ったこのクラスの子のことが、原文より過激な言葉に変化して噂されている。

 


『私の席の前後にミドリさんとキミドリさんがいてさ、自分を越しておしゃべりする二人が超うざい、氏ね! あいつら』


 私がそんなバカっぽい言葉遣いするわけないじゃない。


 噂がそう変わってゆくのならば、それは誰かが私に悪いイメージを持っている、もしくは持たせようとしているってことね。


 私に向けられた悪意。


 でもね、別に構わないわ。多少こうなることは想定済みだもの。

 全ての人に好かれるなんてあり得ないし。




 そう言えば、私がミキちゃんに金谷くんの事を探っていたこと、ミキちゃんはまだ誰にも言ってはいないみたい。

 あれは秘密だって言っといたもんね。意外と約束は守るタイプなのかもね。



 4時限目の古典の授業終了のチャイムが鳴った。


 先生の授業終了の言葉も待たず、即座に日直が終わりの礼の号令をかけた。


 みんな既にお昼ご飯のことしか考えてない。


 仕方なく永井先生も従って終わりにした。


 これではいくらなんでも指導力なくない?



 皆が楽しげに声をかけ合いお昼の準備をし始めたざわめきの中、教科担当の金谷くんが先生の所へ行って話し始めた。


 多分、次の授業の予定を聞いてるのかな。



 私はこのクラスで一緒にお昼を食べる人はいないから、席から一人静かに永井先生と金谷くんを見ている。



 私は今、クラスにそれほど親しい人はいない。


 特に問題はないよ。


 だって、私はこの人たちと同列ではないのだから。


 私は管理者側なんだもの。


 上級国民と下級国民みたいな?


 もうじき、私はここでは特別な存在になる生徒。


 彼らの生殺与奪の権を少しずつ掌握している最中。


 その気になれば今だって魔法のスペルである程度のコントロールが出来る。



 I'm having absolute control over the classroom soon.




 あ? 今のは・・・・・?


 乙女の直感がピキーンと来た。



 永井先生と金谷くんが一緒に教室を出ていくわ。


 金谷くんは古典の教科担当。


 だからそれはおかしくはない。


 

 永井先生がなにげに金谷くんの左腕に置いた右手と、彼に向けてる子猫がすがるようなその目を見なかったのなら。

 


 この教室のざわめきの中で、気づいてる人は私以外、


 

 いない。






今更なのですが、これは『まだ未完、だから夢中に迷妄中』の続きです。

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