金谷くんをリサーチ〈ルルス〉
私は最初からクラスの一部を掌握してる金谷ライダくんについて調べる事にした。
彼は何者なの?
この既成勢力が私のボランティアに何かしらの影響を及ぼすかもしれない。
これは想定外よ。
せっかく入学したこの最低で最高な高校での私の役。
私が影のイニシアチブを握らなくてはならないの。誰にも邪魔はさせないよ。
そうだ。ピアノ少女のミキちゃんなら知っているかも。
私は入学式で新入生代表の挨拶に選ばれていて、リハーサルの時、同じ新入生で国家斉唱のピアノ伴奏に選ばれていた1人の女子と知り合いになっていた。
その子はミキちゃんていう子で、違うクラスになったのだけど、その子はすごく人懐こい女子でおしゃべりで、私のここでのミッションに結構使えそうな子だったから、とりあえず仲良くすることにしていた。
あの子も家が学校に近いって言ってたよね。
私は休み時間になると早速スマホを手に取った。
『ミキちゃん、秘密で教えて欲しい事があるの』
『秘密?』
『私と同じD組の金谷ライダくんのこと。地元勢だし、知ってるよね? ミキちゃんが知ってること全部お願い』
『ふーん、ふっふっふっ・・・そう言うことなの? ちょっとカッコいいよね、金谷くん。中学でもバスケ部で人気あったんだよ』
『今じゃなくていいから、今夜とか話せる?』
『うん、おっけー。うまく行くといいね』
ミキちゃんは何か勘違いしてる。
このままじゃ・・・ミキちゃんのことだからきっと、私が金谷くんに気があるとか、そんな噂が広がる。
あの子、秘密を守れそうな子には見えないし。
これはどう作用する? 今はわからない。
とりあえず小さなリスクを犯したけれど、その日の夜の内に情報は手に入った。
彼女は金谷くんとはクラスは違っていたけれど同じ中学だったから。
ミキちゃんの話によれば、金谷ライダくんは鬼胡桃中学校では人気の生徒だったらしい。
それほどイケメンって訳じゃないけど、バスケ部のレギュラーで運動神経も良かったし、髪型にはこだわりで気を使っててかっこよかったし、無駄毛処理もバッチリで爽やかな雰囲気だったから、女子からの人気も高かったとか。
男子の中ではリーダー的存在で、性格がいいって噂で人望があったらしい。わりと男子に囲まれてたとか。
成績はそれほどいいって訳でもなさそうだったけど、悪いって訳でもなさそうだったし、だから鬼高に行くとは思わなかったってミキちゃんは言った。
たぶんここはバスケ部がわりと強いからかもね、と付け加えた。
ミキちゃんは通学時間を節約してピアノのレッスンに時間を取るためにこの高校に来たって前に聞いてたね。
高校選びも学力だけじゃなくて皆いろんな理由があるのね。
私みたいに。
じゃあ、金谷くんバスケ部に入るのかしら?
私は "バスケ部" と聞くと思い出すことがあってちょっと切ないな。
私は同じ中学出身の同じこの鬼高に来た津田沼くんのことを今は避けている。
だって彼に惹かれてしまったことは私にとって、正に黒歴史。
出来ることなら忘れていたい。特にあのキスのこととか。
不意に今朝、昇降口で彼を見かけた時、ドキッとして私はその場を離れた。
今もある意味、特別な存在であることには変わりはないみたい。
そして、私たちは本格的に高校生活の日常をスタートさせた。
スタートして間もなく、私の席の前後で、ある問題が起きた。
私が一方的な被害者になってるの。
こういう小さな問題は自力で解決するしかない。
黙って我慢してたって誰かが私のために解決してくれるわけじゃない。
そんな対処くらい、もちろん一人で出来るわよ?
私には魔法のスペルがあるんだもの。
被害者はすみやかに救済し、加害者にはそれ相応の償いを。
そういうのが当たり前の世の中になって欲しいものよね。
ここの教室はいけない子ばかり。
だからと言って正面切って注意すればいいってものじゃない。
そんなことしても私のことまだよく知らない彼らは、私をなめてただ反発してくるだけだと思うの。
だってここの学校の子たちは自我がかなり強いもの。
自己紹介で得た感触では、ただの素直ないい子ちゃんも、背面服従の切れ者って人もいない。
だから解決すべき問題が起きるたび、私はその都度、オリジナルの魔法のスペルを発動させて行った。
それは間接魔法。
不発のこともあるし、速効性もないけれど、今はこれでいい。
改革にはある程度の時間は必要なものよ。
私のミッション遂行はわりと順調ね。
今のところ懸念していた金谷くんの影響は感じていない。
・・・・・ずっと感じてはいなかったのだけれど。




