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睡魔の奥の記憶はナッシング!〈ヤシロ〉

 のばらのお部屋・・・・・は、残念ながら見せては貰えなかった。


 ふうらちゃんでさえ見たことないそうだから仕方ないわ。

 あたしは興味津々だったのに。



 白茅(ちがや)さんに案内されて、あたしとふうらちゃんが通されたのは、同じ敷地の奥にある別棟だった。


 緑に囲まれた露地の飛び石を伝って行くと、現代風のおしゃれな和風の小さな平屋の建物が現れた。


 すごーい! 貸し切り高級温泉旅館みたい。



「ふうらちゃんはここに来たことあるの?」


「いや、ボクだってのばらん家に泊まるのは初めてだ」



 白茅(ちがや)さんが鍵を開けてくれた。


「のばらは荷物を持ってその内来るだろう。冷蔵庫の飲み物適当に飲んでていいから。但しアルコールのはダメだぞ!」


 白茅(ちがや)さんはふうらちゃんとあたしを順にぴっぴと指さした。


「当たり前だ。もしアルコール効果でヤシロがこれ以上騒がしくなったらヤバい」


 ふうらちゃんの右の口角が上がってる。


「ひっどーい! もーうっ! 今夜は一晩中寝かせてあげないよ?」


 あたしのおしゃべりにずーっと付き合わせちゃうもんね!

 ふうらちゃんの事ももっと知りたいしね。



「女の子ってよくそんなにしゃべるネタがあるよな。はぁ・・・。じゃ、何かあったら言ってくれ。中には内線もあるから」


「はい。ありがとうございます」



 明らかにあたしを羨んでいる様子に見える白茅(ちがや)さんに微笑んで見せた。


 ふふふん。今度はあたしのターンよ。ふうらちゃと今夜、もーっと友好を深めちゃうもんね!


 あたしだってふうらちゃんとは仲良しなんだからね!


 あたしはさっきから、あたしの知らなかったふうらちゃんの交遊関係にジェラスを感じている。


 あたしとリアがふうらちゃんの一番の仲良しだと思っていたのに。



「これ、渡しとく」


「ありがとう、白茅(ちがや)


 ふうらちゃんにカギを渡し、白茅(ちがや)さんは小さく頷いてから小道を戻って行った。 



 わくわくよ。今夜は超楽しみ!


「まさか今夜急にこんな素敵なところでお泊まり会になるなんて! らんらんらら~ん♪」


 あたしとふうらちゃんは早速この素敵なお客様用の離れを探検して回った。


 あたし、今日はホントにラッキー! まるで小旅行気分!


 その後はツインのベッドの置かれたメインのお部屋に入った。


 部屋の一番奥は、美しく配置された緑の植え込みと木々の庭を見渡せるガラス張り。その脇に置かれた小さなテーブルと見るからにふかふかソファー。


 ほわん


 ふぁーん、気持ちいい・・・このソファー。

 人をダメにするソファーって、もしかしてこれじゃない?



 あたし、眠くなっちゃいそう。スイーツでお腹も一杯なの。


 あたしがうとうとしちゃって目を瞑っていたらふうらちゃんが言ったの。


「ヤシロ、聞いてくれ」


「なあに?」


 あたしはオートマチックに下がってくるまぶたを何とか上げようとしながら返事をした。


「いいよ、そのままで」


「ごめんね、ふうらちゃん。何だかあたし、急に睡魔が・・・ふぁー・・・」


「永井っちのことなんだけど・・・入れ替わりの事実について、学校では一切(いっさい)口にしないこと。それに、ボクたちともこの事に関して今夜を以て今後話題にしないこと! 如月くんに聞かれても彼のサインが済むまでヤシロは決して何も言わないこと。約束して」


「うん・・・わかったよ・・・約束する・・・」


「いいか? 絶対だぞ? この約束を破ったらーーーーーー」


「・・・破った・・・・ら?・・・すー、すー、すー・・・・・」


「世のーーーー常識が通じなーーーーー」



 ふうらちゃん・・・あたし・・・すご・・く・・眠くなっ・・・・・





 ・・・・・葉擦れの音? さわさわとこんなに・・・・・どうして?


 むにゃん・・・なんかいつもと違う・・・・・


 このブランケット、ふわふわで気持ちいい・・・


 寝返りを打つあたし。


 う・・・う・・ん・・いつも一緒に寝ているディプロカウルスのペルムくんはどこ? あたしのお気にのぬいぐるみ。


 こっちに来て・・・ペルムくん・・・・・


 頭の上に手を伸ばしても掴めない。


 ベッドから落ちちゃったのかな?


 ん・・・? なんかいつもよりここ、硬くない? うう・・・・・ん・・・



 はっ! 


 

 目覚めたあたし!


 ・・・・・どういうことなのっ?! この天井、知らない・・・


 気がついたらあたしは知らないベッドで寝ていたのよ?


 ここはどこっ! どういう事よ?



 あたしはガバッと半身を起こした。


 横をく向くと、隣に並んだベッドには・・・誰かが・・・?


「!」


 ふうらちゃん!



 ほんのり月明かりが差すこのお部屋。


 そうよ! ここはのばらのお家のお客様用ファシリティよっ!


 ちょっと寒気を感じてブランケットを肩まで引っ張りあげた。


 今、何時なのっ? いつの間にか夜になっていたの。


 カーテンの半分開いたままのガラスを透した月の薄明かり。


 壁に掛かっている時計の針が見えた。



 夜中の12時過ぎ!! うそっ?



 今夜は のばらとふうらちゃんの3人で一晩中女子会のはずだったのにっ!


 

 あたしは昼間の記憶をたどる・・・・・



「・・・・・」



 きゃーーー!



 あたしったら!


 スイーツ食べ過ぎて、お腹一杯になって、眠くなって、寝落ちして、気づいたら夜中の12時って、マ?



 人様のお家に来てなんたる失敗!



 あたしはベッドから降りて立ち上がった。


 素肌が肌寒い・・・・・え?



 待って・・・あたし、下着姿?!



 きゃーーー! なんでっ?



 ベッドの隅にきちんとたたんで置かれたバスローブ。


 壁のフックには、ハンガーにきちんと掛けて吊るされてるあたしの水色ワンピース。


 ・・・あたし、ふうらちゃんにお世話をかけちゃったの?


 

 なんたる失態!



 ・・・朝が来るのが怖いよ。



 あたしのばかばかっ! もう、恥ずかしすぎっ!



 あれ、テーブルの上にお茶とおにぎりが二つ。


 メモ用紙には、『ヤシロへ』。



 あたしのために特別配慮が・・・・・

 皆様、本当にスミマセンでしたっ!



 ふうらちゃんの可愛すぎる寝顔を覗き、『ごめんね、ふうらちゃん』って、そーっと言っておいた。



 あたしはバスローブを掴むと、忍び足でバスルームに向かった。






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