天真爛漫少女〈ヤシロ〉
ふうらちゃんがのばらのおじい様に会うために部屋を出で行くと
白茅さんもふうらちゃんを追うように出て行った。
駅前のロータリーでもそうだったけど、白茅さんって、ふうらちゃんの金魚のフン・・・・・?
まあ、気持ちは解らないでもないわよ? あたしだってふうらちゃんは大好きだもん。
あたしなんて、追いかけて行かなくたって毎日学校で会えるもーん。へーんだ!
「・・・・・」
やだ、なんかあたし、白茅さんに対抗心目覚めてない?
これって焼きもち? やあね、あたしったら・・・・・
のばらは、ほんの少しスイーツに手をつけただけで、今から急いでヤシロとふうらのお泊まりの準備をしてくるわ、と言って席を外した。
もーうっ! 信じらんないっ! これを前にして去って行けるなんてっ!!
ほとんど手付かずで残された3段ケーキスタンドに見事に盛られているスイーツ!
これはあたしの出番だね!
あたしはぜーんぶ一人占めで堪能しちゃうよ。
森木林さんとスイーツ談義に花が咲き、超二人で盛り上がってきたら森木林さんが、
『実はまだ御披露目していない私考案の試作品の新作ケーキが冷蔵庫にあるのですけど・・・・・味見してみませんか?』
なんて言ってくれちゃったのよ!
家でも大学生の娘さんと手作りスイーツを作るのが趣味だとかで、二人で新レシピを考案しているんだって!
それでね、他に誰もいないしってことで特別に味見させて頂いて、それがもう、メッチャメチャ美味しくて、絶賛したら、明日お土産に持たせてくれるって言うので、そこまでしてもらったら流石にあたしも図々しすぎるっ!って思って、でも本当はもっと頂きたいよっ!という本音との板挟みで苦悩していた所にふうらちゃんたちが戻って来たの。
戻るの早くない? まだ30分しか経ってないのに。
森木林さんは会釈して戻ってしまった。
あーん、残念!
「ヤシロ、待たせたな。あれ? のばらは?」
いやいや、全然待って無かったよ。もっとゆっくりしてきて良かったよ。
あ・・・ふうらちゃんの後ろにいるのは・・・噂に聞いてたあの人?
「のばらはあたしたちのお泊まりの用意するからって・・・あの・・・もしかして、のばらさんのおじい様ですか?」
あたしは、ふうらちゃんからその後ろにいる初見の人物に目線を移した。
「初めまして。ようこそ。私、白茅とのばらのじいさんだ。のばらが世話になってるね」
「いえっ、あのっ、初めまして。今日はお招きありがとうございます! あたし、のばらさんのクラスメイトの向岸ヤシロです」
のばらのおじい様は品があって素敵なおじ様で・・・あれ? 前にふうらちゃん、のばらのじいちゃんは髪があんまり残って無いって言ってたよね・・・・・
ってことは、このふさふさは・・・・・
「うううんっ!」
ふうらちゃんの咳払い。
もーう・・・・・ふうらちゃん、あたしの心はお見通しのようね。
森木林さんが新たなお茶を用意して持ってきてくれた。
密かなる微笑みを交わすあたしたち。
もう、森木林さんは世代を越えたMyスイーツフレンドよ!
その後は、ふうらちゃんの仕切りにより大鏡おじい様を交えての再びのティータイムが始まった。
大鏡おじい様はすごく偉い人らしいんだけど、とても気さくな優しいおじ様で、学校での のばらの事をあたしに質問してきたり、今の女子高生の流行りを聞いてきたりした。
だからあたしは隣に腰かけてる大鏡おじい様にさっき公園で撮った雑草の可愛らしいお花と咲き誇るバラの花の写真を見せてあげた。
大鏡おじい様はバラの写真を凄く気に入ってくれたのでおじい様のスマホに一枚送ってあげた。
そしたらおじい様がここのお庭で早朝撮ったという、みどりの葉の上に朝露を乗せた可愛らしい純白のすずらんのお花の写真をくれた。
これはなんかのコンテストでなんとか賞を貰ったとか。
朝露に映った緑がすごくキレイ! この艶やかさは宝石でもかなわないね。
うふふ。これで今日はのばらとも、のばらのおじい様ともお友だちになれたね。
嬉しいな。お友だちが増えるのって。
ふって、気がついたらふうらちゃんと白茅さんがびっくりした顔して揃ってあたしの方を見てたから、あたしの方がびっくりした。
「どうかしたのっ? 二人とも」
あたしが二人に聞いたら、大鏡おじい様がソファーから立ち上がった。
「ヤシロさん、私はこれから出張でね。もう準備しなければ。ヤシロさん、学校でのばらをよろしくね。じゃ、ふうら、白茅、後は頼むよ」
「はい」
あたしは立ち上がって会釈した。
「はい、お任せ下さい」
白茅さんが立ち上がって45度のお辞儀した。
「じいちゃん、気をつけて。行ってらっしゃい」
座ったまま手を振るふうらちゃん。
・・・これじゃふうらちゃんの方が本当の孫みたいだよ。
大鏡おじい様の姿が見えなくなると白茅さんはボスンっと斜めにソファーに沈み込んで脚を組んだ。
「やっぱ、緊張するな。会長といると」
白茅さんが大きく息を吐きながら言った。
「白茅は期待されてるからな。最早白茅はただの孫ではないから仕方ない。がんばれよ」
「いいよな、ふうらもヤシロちゃんも・・・」
白茅さんはテンションが切れたみたい。
「ああ、でもボクもヤシロには負けるよ。まさか大鏡じいちゃんがさ・・・・・くっくっくっ」
「本当だな。女子高生と写真交換とはね」
「ヤシロはほんと、人タラシだな。まあ、こうなる事は想定済みだったけど。ヤシロもこの地の守護神の御加護の下に入ったな」
写真交換がどうかしたのかしら? 普通じゃない? こんなこと。それにこの地の守護神て?
「守護神なら既にいるわよ。あたしの守護神は黒鮒様付きのロードくんだもん」
いっけない! ロードくんが鮒梨神社の息子だってみんなには秘密なんだった!
今のでは まだバレてないよね?
ヤシロがしまった!って顔してたから、もちろんボクは知らんぷりしてあげてたさ。
ーーーヤシロ、こちらの神は黒鮒様のような穏やかな癒しの神じゃない。知略と武力の祟り神だ。悲運の落花生城城主のね。
これもヤシロには教えられないことだけどね。
チラりと刹那、白茅と目線を合わせた。




