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ヤシロと如月くんの仲〈ふうら〉

 ボクは車の後部座席でヤシロに抱きつかれている。


 ヤシロの石鹸のようなほんわかした女の子のいい匂い。


 一応女子のボクだってヤシロのような女の子に抱きつかれたら照れてしまう。

 きっとこれを見たらクラスではボクと入れ換わりたい男子は何人もいるだろうね。



 ボクは夕べ大鏡(だいきょう)じいちゃんからメールをもらった。


 永井っちの事で話があるって。


 きっと事実が判明したんだ。


 永井っち入れ換わりの事実を知っているヤシロと如月くんも知っておいた方がスッキリするだろうから連れて来てもいいよ、と大鏡じいちゃんから許可が出ていた。


 だからボクは昨日の夜にその旨のメッセージをヤシロに送った。


 ヤシロは明日は2時に如月くんと会う約束があると言う。

 だから如月くんと合流した後、ボクと合流するとヤシロはメッセージを返して来た。


 なんてことだ!


 ヤシロは明日、如月くんと二人で会う約束をしていたんなんて!


 一体如月くんと二人で何の話をするというのだろう?


 ボクがヤシロと如月くんを再会させるきっかけを作ったことによりヤシロと賽ノ宮(さいのみや)くんが別れることになったらボクは大変申し訳ないじゃないか。


 ボクの心は波立った。


 だが、ヤシロによるとその約束の中身は意外なことだった。


 実は如月くんが話したサイコパス少女シロイさんはヤシロたちの同級生で、もしかしたら自分たちも中3の時に彼女の被害に合っていた可能性があったという。

 なんでもヤシロと如月くんを含む4人グループに対し、ひどい中傷の噂が流されたとか。


 その事を如月くんがサイコ少女に直接尋ねて、結果をヤシロに報告してくれるのが今日だったそうだ。


 ボクはそんなことは全然知らなくて。



 ボクが知ってたら、もちろん如月くんを止めただろうけど、もう後の祭りだ。


 今ここに如月くんがいないのもそれに関係があるのかもしれないけど、ボクは子細がわからないから何とも言えない。


 さて、ボクは如月くんがヤシロに何を話したのかを尋ねた方が良さそうだ。


 のばらの家に着く前に。



 車なら10分とかからず着いてしまうからね。



「ヤシロ、如月くんは何て言ってたんだ? そのサイコ少女は何て答えたと言ったんだ?」


 ボクにハグして放さないヤシロに聞いた。


 ボクはヤシロのお気に入りのぬいぐるみのような扱われようだ。このままではお子様のようにヤシロの膝に乗せられてしまいそうな勢いだ。



「えっとね・・・・・」



 ヤシロはやっとボクを解放した。


 白茅(ちがや)とバックミラーの中で一瞬目が合った。



 ・・・ったく。この目。


 白茅(ちがや)はボクとヤシロの仲を妙な具合に勘ぐっているみたいだ。


 ボクはヤシロが好きだけど、そういうんじゃない。


 ヤシロには頼りなさそうな男子だけど、優しい賽ノ宮(さいのみや)くんがいるし。


 でも、こうしてヤシロにこんなにも好かれていることは、ボクにとって心地が良い。


「彼女はね、本当は宇良川(うらがわ)ルルスさんって言うの。宇良川(うらがわ)さんは普通のたわいもない噂話はしたことはあるけれど、誹謗中傷は言ってはいないそうよ。神様に誓ってそうだって言っているそうなの」


「ふうん」


「彼女は風紀委員長っていう立場だったし、確かにあんなにひどい噂をいきなり流すなんて考えにくいわ」


「・・・そうか」



 ・・・はっ、結構下らない。なるほどね。


 簡単な問題だったな。


 ボクと同じような手を使っただけか。


 たわいの "誰か" の噂。まず、それをその "誰かさん" を嫌っている人に伝えたらどうなるだろうか?


 間違いなく悪意に染まるだろうね。


 始発点初期に悪意に染める、それが拡散、それは正確にコピーされて拡散する訳じゃない。通過する人の感情や期待がスパイスされて分裂を繰り返せば原形さえ留めていないってことさえ起こり得る。



 意図を持った無実の確信犯か。


 確かに彼女に非を問うことは出来はしないね。



「・・・きっとそうなんだろうな。所で、如月くんはどうして?」


「それがね、今日は様子がちょっと変だったのよ。あたしのことをずっと護ってあげられないとか、ずっと友だちのままでいてくれとか、俺たちは心の奥ではずっと繋がっているとか言ってね、もしかしたら如月くん、学校の方で何かあったのかもしれないわ。あたし、心配してるの」



 ヤシロが沈んだ面持ちになった。



「・・・そうか。ずっと友だちのままね・・・ふーん、そう・・・・・」



 ヤシロの言葉によれば如月くんはなにやら感傷的になっていたようだけど、まあ、ヤシロと賽ノ宮(さいのみや)くんにヒビが入らないのならボクは一安心だ。



「二人のお嬢様方。もう着きますよ」



 白茅(ちがや)がバックミラー越しに僕たちを見た。



 ちょうどだな。


「ありがとう、白茅(ちがや)


「ありがとうございます。白茅(ちがや)さん」


「いえいえ、僕は可愛らしいお嬢様二人を乗せられて光栄ですよ」



 縦横一区画続く長くて高いレンガ塀の真ん中にあるゲートが開いた。



 ボクたちを乗せた車は緑に囲まれた車寄せまでの通路に吸い込まれて行った。







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