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ふうらちゃん可愛すぎ!〈ヤシロ〉

 あたしは慌てて走り去って行った如月くんの後ろ姿を見送った。


 今日はありがとう。如月くん・・・


 さて、この後は赤豆(あかず)駅でふうらちゃんと待ち合わせ。

 なんと、あたしたちは牧野のばらさんのおうちに行くことになっているのよ。


 重要なお話があるとかで。


 きっと永井っちのことだよ。

 何か分かったのかも知れないね。


 牧野さんのおうちはすごい豪邸らしい。


 あたしはだから、今日はお洋服のコーデすごく悩んで考えておしゃれして来たのよ。牧野さんに嗤われたくないし。



 まだ待ち合わせまで時間が余ってるし、隅っこに咲いている雑草のかわいいお花とか、花壇でちょうど見頃を迎えてるバラの写真を撮りながら公園を散策しようっと。


 うふふ、すごくいい香り。それにどれもとてもキレイな色ね。後でふうらちゃんに写真見せてあげよう。月曜日にロードくんにも見せてあげようっと。



 一人で公園を満喫したあたし。


 それから、ふうらちゃんとの待ち合わせ場所の駅には時間丁度に着いた。


 待ち合わせは南口の階段の下よ。


 えっと・・・?


 周りを見回してもそれらしき人はいないわ。


 そこに立っているのはスーツを来た就活中みたいなお兄さんと深緑のパーカのフードを被ったデニムショートパンツの小学生の男の子。


 あたしは階段の上を振り返り見上げた。


 降りて来る人の中にはいないみたい。でも、もうすぐ来るはず。



「ヤシロ!」


 ほら! ふうらちゃんの声だ!


 どこから? キョロキョロ・・・


 ん?


 深緑のパーカのフードを被った小学生の男の子があたしの前に?


「どうしたんだ? ヤシロ」


 その子はふうらちゃんの声で言った。


 ん?


「うそ、もしかして・・・・・」


「ボクだ!」



 フードを剥がしたら、ふうらちゃんの登場だった!



「・・・ちっ、だから私服は嫌なんだ」


「・・・きゃー! ふうらちゃん、かわいいっ!」


 あたしは思わず抱きついてしまった。


 なんてキュートなの! この、中性的な可愛らしさ!


 こんなかわいい弟か妹が欲しいわ! 


 だって本当の弟のイブキはあたしより背も大きくなって来ちゃったし、最近はちょっと男っぽくなって来ちゃっててなんか残念なのよね。ここの所怒りっぽいし何かと突っかかってくるし、反抗期かしら?


「ヤシロ! こんな衆人環視の中で何をするっ!」


 手をバタバタさせて焦るふうらちゃん。


「だってー! ふうらちゃんが可愛すぎるからだよー! 私服姿見るの初めてだし」


「ふふふっ、君たちはずいぶんと仲良しなんだね。ふうらがこんな風になってるの初めて見た」


 さっき、そこにいた就活中みたいなお兄さんだ!


 ふうらちゃんのお供の人だったの? きゃあ! 恥ずかしいかもっ。


「なっ、なんだよっ! 笑うな! 白茅(ちがや)


 ふうらちゃんのお兄さんかしら?


 あたしは顔がほてるのを感じてすぐさまふうらちゃんを解放した。


 ふうらちゃんはすぐさまいつもの無表情に戻り、落ち着いた口調で言った。


「ヤシロ。この人はのばらの兄さんの牧野白茅(ちがや)だ」



 ええっ! この人は牧野のばらさんのお兄さんなのっ? 



「は・・・初めまして。あたし、牧野さんとふうらちゃんと同じクラスの向岸(こうぎし)ヤシロです」


「のばらが迷惑をかけていないかい? のばらは気が強いし わがままだから」


「いえ、そんなこと」



 だって牧野のばらさんは孤高の美少女だもの。

 彼女に構える人なんてふうらちゃんと・・・違う意味ではクラス委員長の業村くんくらいよね。あの二人、前に暴言合戦してたし・・・



「僕のことは白茅(ちがや)でいいよ。じゃあ、行こうか」


 白茅(ちがや)さんはそう言って微笑んだ。


 これが牧野さんのお兄さん・・・


 スマートで品があって大人のデキる人って感じ。


「待て、ヤシロ。如月くんはどこだ? 今日はヤシロと一緒じゃなかったのか? あっと、トイレにでも行ってるのか」


「・・・えっ? えっと、如月くんは用があるみたいですぐに帰ってしまったの」



 あれ? 如月くんはふうらちゃんには行けないこと言ってなかったのね。じゃあ、ずいぶん突然の急用だったんだわ。


 慌てて帰ったわけだね・・・・・あのどんどん小さくなっていく後ろ姿がフラッシュバック。



「ならいい。急げ、二人とも!駐禁で捕まるぞ。だから白茅(ちがや)は車に残ってればよかったのに」


 ふうらちゃんが右手の親指でクイっとロータリーの右側を指差した。


「いいじゃないか、ちょっとくらい。僕はふうらが心配だし」


「・・・ボクは高校生だぞ? 小学生じゃない」


「はいはい」



 牧野さんのお兄さん。まるでふうらちゃんの保護者みたいだね。

 まさか牧野さんのお兄さんがあたしのために車でお迎えに来てくれるなんて思わなかったわ。


 如月くんも永井っちのことは気になっていたようだし、今日何か分かったら後で教えてあげようっと。


 ロータリーの隅っこに停めてあった高そうな車の後部座席のドアを白茅(ちがや)さんは開けた。



「どうぞ、お嬢様方」



 後部座席に乗り込みながらふうらちゃんがあたしに向かってわずかに微笑んだ。


「ヤシロ、今日はずいぶんとおしゃれじゃないか」


「だって、牧野さんのおうちはすごい豪邸だっていうからあたしすごく考えちゃって・・・」


 ふうらちゃん・・・ただのパーカとショートボトムスだよ・・・

 普通で・・・良かったね・・・


 あたし、気合い入れすぎで恥ずかしいかも。



「・・・似合ってるぞ、ヤシロ」


 ふうらちゃんは前をむいたままの横顔で隣に乗り込んだあたしに言った。



 ・・・もうっ! ふうらちゃんったら超かわいいっ!



「ありがとうっ! ふうらちゃんって優しい」



 あたしはまたもやふうらちゃんを抱き締めてしまった。



「うわっ! ヤシロ、そのっ・・・」


「あ~ん! 大好きだよー、ふうらちゃんっ!」



「うっ、ううん、あー・・・・・動かすよ。ふうら、ヤシロちゃん」


 白茅(ちがや)さんとバックミラーの中で目が合った。


 いっけない! ついつい学校のノリで。



 ・・・だって、ふうらちゃんが可愛すぎるからいけないのよ?









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