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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
よみがえる思い出の中で
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俺はここにいる〈如月〉

 

 ヤシロの連れのポニテ女子が俺を通り越し後ろを見てる。



「キサラギくん? 俺を放っておいてこんなとこで・・・何してんのかなっ?」


 がしっ! 痛っ(>_<)


 俺の両肩を後ろから掴む男。


 いつの間に来てた? ったく抜け目のないやつめ!


 俺がチア部と話してたから、エースのスモールフォワード、俺よりさらに背の高い礼千(らいち)がひょっこり来やがった。


「ねえねえ、チア部。俺がゴール決めた時は、あれ、あの技やってくんない? たまには俺らリクエストしてもよくね? なあ、キサラもそう思うだろ?」


「そうね、検討はするけど・・・"あれ" じゃわかんないよ、ねー、ヤシロ」


 ポニテ女子がちょいノって来た。

 マジでリクエストOK? だったら、俺だって。


 礼千(らいち)は・・・・・コイツ、なんて女子馴れしてんの?

 まるで前からのお友だちよろしくチアとしゃべってる。



「あの、脚高く上げてるやつ、こんな感じのさ、はぁっ!」


「やっだー、そんなの知らなーい! あはははっ」


 礼千(らいち)、ポニテ女子に受けてる・・・・・


「あれだって、あれ! こういうカッコしてからくるくるしてさ、スカートひらりんって・・・ああ、もう時間ないや。キサラも好きなの言っとけよ。その方がモチベ上がって応援してもらう甲斐もあるってもんじゃん? ああ、いっけね! 俺らもう行かないと。LINE教えといてくんない? 俺ら、ちゃんと思い出したら伝えるから」


 調子のいい礼千(らいち)はその場であっさり俺たちと彼女たちとの4人のLINEグループを作ることを了承させた。


 マジかよ? さすがエースだぜ!



 戻りながら礼千(らいち)が言った。


「やったぜ! キサラ。グループから始めれば警戒されないだろ? 向岸ヤシロと音見(おとみ)ミオン・・・俺、どっちもいいなぁ・・・」


 俺は礼千(らいち)の背中に指で作ったピストルを突き立てる。


「ヤシロには手を出すなよ」


「・・・だと思った」


 礼千(らいち)はニヤニヤしながら肩を組んできた。


「OK、じゃ、そういうことにしようぜ? 決まりっ!」




 チアの振り付けにかこつけ、俺らはまんまとヤシロとミオンに接近することに成功したのだった。


 それがきっかけだった。


 それから俺たちは4人でカラオケ行ったり、ホラー映画にも行ったし、夏休みには花火大会に行ったし、プール行ったり、でもそれは "友だち" として過ごした。


 そん時は4人で上手く行ってたから無理に告るのはためらわれた。このいい感じを壊したくなかった。


 その内いいタイミングを見計らってコクろうと思っていた。



 大会に遊びに課題にあっという間に夏休みも明けた。


 

 先月8月の全国大会初戦敗退で部活は引退してる。


 そろそろ高校受験に向けて志望校を絞り込まなきゃならない。


 だけど、俺はもうとっくに決めてる。


 私立でスポーツ推薦は魅力的だけどやめておく。

 もし、けがして出来なくなった時は悲惨だ。


 俺はほとんど勉強なんてしてねーし。

 今からやってもどーせ間に合わねーだろ。


 だから俺でも行けてバスケ部がまあまあなところは鬼胡桃高校しかない。


 ヤシロも鬼高来てくんねぇかな?


 来るわけねーよ。


 ヤシロは真面目に勉強やってるからいつも平均点以上は当たり前に取れてる。俺とは違うんだ。


 高校が別々になるってわかってんなら今のうちに俺はキメとかなきゃもうこれきりになっちまう。


 礼千(らいち)もまだミオンにはコクってはいない。

 俺らはいまだにいつも4人のまま。



 10月の終わり頃、妙な噂が流れていた。


 ミオンとヤシロはビッチで、礼千(らいち)と俺と遊びまくってるとか。


 んなわけねーじゃん。


 俺らはあの4月の日からまだ友だちのままだったし、4人都合が合わさる日だってそうそう無くて、4、5回4人で出掛けただけだ。

 俺らはみんなクラスも別々で普段直接話すことだってそんなにはないってのに。


 たまに廊下ですれ違いざまに手を振るくらいだ。



 放課後のフリーの英語の補習事業に俺は強制参加させられて、そこで偶然ミオンに会った。


 俺はミオンの隣に座り、例の俺らの噂の事を出した。


 ミオンは、


『うちらさ、4人友だちで仲いいじゃん? 結構知れ渡ってるみたい。うちら組み合わせ自由で付き合ってるって変に勘ぐってる子もいたのは知ってたし。きっと、うちらの誰か、たぶんヤシロに振られた誰かが焼きもちで腹いせに言ってるだけだと思う。だってヤシロに振られた子はたぶん両手で収まんないよ。私は別に気にしてないから大丈夫だよ。さんきゅ。如月くん』


 そう言って笑っていたのに。



 次の日にはミオンに対するさらに酷い中傷が流れ出した。

 俺と礼千(らいち)、ヤシロも巻き込んだ大変セクシーな作り話。



 さすがにこれにはミオンも泣いてしまったらしい。


 LINEにはミオンから、


『しばらくそっとしておいて。みんな、ごめんね』



 それきりだった。


 その4人のページは。



 

 俺らが近づけばヤシロとミオンが好奇心の視線を浴び、ひそひそ中傷される。


 部活もなくなったし、みんな受験勉強も本格的にしなきゃならない。


 それ以来4人の関係は消えてしまったも同然だった。




 ただ、俺のケータイに、ヤシロとミオンと礼千(らいち)が一つに合わさったアイコンだけが残された。




 秋が過ぎ冬が来て年が明け、俺らはそれぞれの高校に進学を決め3月を迎えた。


 今思うとあっという間だったって思う。中学の3年間って。



 卒業式の前日、俺は思いきってグループLINEにメッセージを送った。



『最後だし明日の式の後、4人で写真撮ろうぜ!』



 俺たちは久々に集合した。


 その時の一瞬だけ、俺たち元通りに戻れた。


 あの、心がわくわくドキドキしてた、今振り返ればメチャまぶしいあの頃に。



 何で俺たち壊れちまったんだろうな。



 最後まであのままいられたら俺らはハッピーエンド迎えてたんじゃねーの?



 礼千(らいち)はミオンと


 俺はヤシロと



 これ、俺の世迷い言か?


 俺はそうは思わない。



 その時の写真は俺の大切な青春の宝物。


 結局それがヤシロと、礼千(らいち)とミオンとの最後になっちまっていた。



 昨日いきなりのヤシロからのメッセージが届くまでは。



 だから、俺は今日のこのチャンスを逃がすわけがない。


 


 俺は鬼胡桃駅の改札口前のパン屋の脇で、幾分の緊張とかなりの期待を抱えながらヤシロが来るのを待っていた。



 いたっ!


 一目で判った。



 俺の幻の彼女、ヤシロ。




 俺はここにいる。











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