三日月の魔法〈ルルス〉
その日の夜。
自分の部屋の窓からは細い三日月が見えた。
勝手に私のほほを涙が伝う。
あの月、まるで嗤った悪魔の口のようだね。
そんな暗い夜空で何を囁いているの?
それとも、愚かな私を嗤っているの?
不器用で恋さえまともに出来ない私を。
私、一生懸命やってるの。今まで何にだって真面目に取り組んで頑張ってきたの。
みんなの役に立ちたくて。私に期待する人たちに応えようと必死で。
私、何にも悪いことなんてしてないよ?
それなのに。
誰もかれもひどいよ。
みんな心の奥で私をバカにして嗤っているの。
これ以上私を傷つけないで。
私・・・壊れてしまうよ・・・・・
ーーー大丈夫よ。私が助けてあげる。
ルルスは今までスッゴく頑張ってきたよね?
知ってるよ、
津田沼くんの理不尽。向岸さんの傲慢。
世の中にはこんな人がたくさんいるんだ。
利己的で無神経で放漫な人たち。
こうすればいいよ。
こうすればもうルルスが傷つく事はなくなるよ。
声が聞こえた。
ーーーさあ、始めようか?
何を?
ーーー冷やせばいいの。ただ冷たく冷たく。
それだけでルルスは救われるよ。
お願い。私を助けて・・・・・
私の抱えた白く色褪せたハート。
そこに、冷ややかな青い血液が注ぎ込まれてゆく。
あの時、包み込むように張り巡らされた青い血管から。
これは私が私をヒールするための特別応急処置。
青く青く冷たく冷たく染められてゆく私のハート。
もう、これで何も感じなくて済むの。
凍えるように冷たく深い深い海の色に染まった私のハート。
なんて美しいの・・・・・
私はそのまま深い眠りに落ちた。
目覚めた私は生まれ変わっていた。
昨日感じていた堪え難い痛みは収まっていた。
きっと、三日月の魔法が私を救ってくれたんだ!
だからと言って、この心のアザは消えてはいない。
三日月の魔法の導き。
私のするべきことは分かっているよ。
そんなこと、今の私には簡単よ。
だって、私は魔法の呪文を編み出すのがとても上手なんだもの。
痛みには痛みをお返してイーブンよ。
私の受けた痛み、どうぞその身で味わってね。




