二つ結びの美少女〈ルルス〉
夏休み中の部活動。
夏休みなのにボランティア部は忙しい。
だって夏は地域のイベントだってたくさんあるから雑用のお手伝い要請も多いのよ。
当日の準備と片付けのみならず、迷子で預かってる子のお相手に、ゴミ拾い、案内、荷物運び。することは山ほどあるの。
私は3年生だし、参加は任意なんだけど、なるべく参加してるのよ。
だって、誰かの役に立って感謝されるのって嬉しいじゃない?
自分の価値を、存在意義を認めてもらえたみたいで。
ボランティア活動の後日には部室で反省会が行われる。
反省会が終わった後は仲間とのたわいのないお喋り。
私はさほど興味はない話にも適当な相づち。
私が昔夢見ていたお友だちとのお喋りも、こそこそ話も、こんなにくだらないものだったなんてね。しかも、結構気を使う。
私の憧れてたもの。
手にいれてみたら。
思い描いていたものとは差異が大きかった。
どうやら隣の芝生効果、だったみたいだね。
それなのに。
私の耳はピクリ。
いつしか "くだらない話" に食いついてる私がいた。
またあの人の噂。
ずいぶんと人気者のようね。こんなにお話の種にされてるなんて。
津田沼如月くん。
お喋りな仲良し3人組女子がキャイキャイ楽しげに盛り上がってる。
『あのさ、私、花火大会でさ、礼千ジュンくんと津田沼如月くんと浴衣姿の向岸ヤシロさんと音見ミオンさんが一緒にいるのを見かけたよ。すっごい楽しそうにしてた』
『付き合ってるって本当だったんだ?』
『・・・じゃない? つい最近のことなんだけど、ファミレスにその4人でいたの見た人いるって友だちの友だちが言ってたって私の友だちから聞いてたから、なるほどねって思ったよ』
『ダブルデートしてたの?』
『どっちとどう組み合わさってんの?』
『それ、わかんないんだよね。どんな組み合わせにしろお似合いじゃない? イケてるグループって感じだし』
・・・私とはほとんど一緒に出掛けてくれなかったくせに。
津田沼くん、今まで何人もの告白を断っていたのに。
音見ミオンさんか向岸ヤシロさんのどちらかと付き合い始めたんだ?
私にはもう関係無いことなのに、私はやはり気になってしまう。
津田沼くんを射止めた女の子のこと。
私に無いものを持っている女の子のこと。
・・・知りたい。
そうだ! 向岸さんさんだったら接触するのは簡単よ。
夏休み明けの風紀委員会の時に声をかけられるもの。
夏休みが明けてチャンスの日が来ると、私は早速実行に移した。
「ねぇ、あなた、待って! 向岸ヤシロさんでしょ?」
「うん、そうだけど・・・?」
委員会が終わった後に呼び止めた。
向岸さんはその愛らしい顔に にわかに警戒感を浮かべて振り返った。
彼女、津田沼くんの好きな二つ結びしてる。
音見さんじゃなくて、向岸さんが津田沼くんの彼女?
もしかして、向岸さんも津田沼くんと付き合い始めてから二つ結びしてるの?
その髪型にしてって津田沼くんにおねだりされて。
「ねぇ、その二つ結び、かわいいね。いつからしてるの?」
「え? これ?」
向岸さんさんは自分の左右耳元で結んだ髪を乱暴に掴んで持ち上げて横にひっぱった。
なんか、お顔に似合わず飾り気のない人ね。
「ずっと伸ばしてたの?」
私が聞くと、
「うん、小学6年の頃からずっと学校ではこれよ。レイヤーセミロングが好きなの。ほどいた時もいい感じだし。ほら、あたし癖毛でしょ?だからちょっと長めの方が落ち着くの。宇良川さんの丸めのくびれレイヤーボブ、かわいいね。ショートヘア、すごく似合ってる」
私に可愛らしい笑顔を向けた。
・・・美人って得ね。こんな顔を向けられて褒められたら同じ女子の私だってドキッってしてしまったわ。
「そう? ありがとう・・・・・じゃ、向岸さん、ここに入学してからもずっと二つ結びにしてたんだ?」
「うん、そうだよ。これは違反じゃないよ? どうかしたの?」
キラキラ美少女の顔に怪訝がわずかに浮かんでいる。
私が急に話しかけたから、服装を注意されると思っていたようね。
私はただ、津田沼くんと仲良しのあなたのことを知りたいだけ。
私に無いものを持っているあなたのことを。




