現況 : 真面目な優等生〈ルルス〉
中2のあの日、現実に気がついた私。
涙が枯れるまで泣いた私。
現実に打ちのめされた私。
入学したあの日に描いていたキラキラの憧れや希望は全て流れ去った。
そして、覚った。
私は恋に憧れてただけの幼稚なおバカさんだったと。
ーーーずいぶんと愚かな女の子だこと。フフフ・・・
気づけば私を嗤う、別の私がいた。
頑張って伸ばした髪はバッサリカットして、ショートヘアに戻した。
これが本当の私。本来の私。
そうだったね。
私は無心にボランティア部と勉強に打ち込んだ。
結局、私に対する周囲の人たちの認識は、私が6年生の時とほぼ変わらなかった。
"真面目な優等生"
青白く変質したハートには、いつしか深海色の美しい青い血管が張り巡らされた。
死にかけた私のハートは徐々に回復していたの。
私は、もう大丈夫。
そのままクラスは持ち上がりで3年生になった。
私はクラス委員長の他に風紀委員長にも選任された。
厳選されたお友だちも、ほら、何人も出来たわ。
私と同じ、真面目な成績優秀者たち。
あの頃、小6の頃同様、ただ一段上に見られる存在の私。
先生方からはひいきにされ、ひいきにされるほど、私を遠巻きに見てくる生徒も増えて行く。
平民には近寄り難き存在よ。
そこには憧れも、崇拝も、好意も、興味さえ向けられてはいないけれど。
私はキラキラしてるわけじゃないから。
でも、そんなこともうどうでもいいわ。
私はクラス委員長。
改めて教壇からクラスの中を見渡す。
上から目線で見渡せば、よく見えること。このクラスの構図。
うふふ。私は生徒だから先生方の知らない生徒間の事情も知ってる。
先生方ともよくお話するから先生がどの生徒をどのような目で見ているのかもわかるわ。
フフフ、そしてそれはね、面白いことに、私の一言で先生がその生徒に持つイメージを変えられるのよ。
私、魔法使いみたいじゃない?
私は先生に期待されてるクラス委員長。
このクラスをより良いクラスに変えなきゃね?
早速実験してみようか。
私は魔法の呪文を考える。
ターゲットはクラスの成績底辺の二人組の女子。
興味はおしゃれと恋とスイーツって感じの子たち。
先生も手を焼いてる不真面目ちゃん。
私にとってもクラスをまとめるのに非協力的で邪魔なちょっと厄介な子たち。
これは汎用呪文だね。うまく発動するかな?
「ねぇ、私偶然見ちゃったんだよね。あれ・・・ヤバくない?」
ただ、一言呟いてみた。ちょっと微妙な表情作って。
「・・・・・何のこと?」
二人顔を見合わせた。
「・・・・・」
私はまず、視線を彼女の顔から彼女の手にしてるスマホに移し固定する。
「・・・・・ああいうのって、どうなのかな?」
私は再び彼女たちと目を合わすと、無言でゆっくりと視線を下に外す。
「・・・・・何であれ、うちらってわかったの?」
陥落した困ったちゃんたち。
ずいぶんと簡単だったね。
人の話を精査することもなく鵜呑みにしてしまう単純でかわいい子たち。
「・・・これからは気をつけた方がいいね。私誰にも言わないから、大丈夫だよ」
私はいかにもいい人だね。この人たちにとって。
「本当に? 絶対だからね!うちらすぐ削除しなきゃ! ねえ、宇良川さん。マジ絶対誰にも言わないでよ!」
「・・・・・」
私は冷えた視線を一瞬投げかけてから無言で立ち去る。
私の後ろでは、あわててこそこそ相談し始めた二人のおバカさんたちの気配。
私の魔法の呪文大成功!
これでクラス委員長もやり易くなるね。
私には彼女たちが気にしているのは何のことだかさっぱりだったけれど。
きっと、黒歴史刻むような写真でも上げてるのかもね。
バカな人たち。
ゴールデンウィークが明けてちょっとたった頃、女子の間であの人の噂が流れてきた。
『聞いた? バスケ部の礼千ジュンくんとさ、津田沼如月くんの話。あのさ、あの二人、チアの子とデキてるらしいよ。外で遊んでんの見た人いるんだってさ』
ドキン。
どうしてなの?
私の心臓が反応する。
そんなこともう、私には関係がないどうでもいいことなのに。
私の席の横の男子が前の席の男子とこそこそおしゃべり。
『知ってる?あの、チアの向岸ヤシロさんと音見ミオンさん、バスケ部の男子とついに付き合ってるらしいぜ? きっとショック受けてるやつ多数だよな』
『それな。でもさ、僕が聞いたとこによると仲はいいけどただの友だちらしいよ。』
『俺が聞いたのはグループ交際だとかって』
私、この名前は知っている。
向岸ヤシロ。
風紀委員にいたよね。3組だったっけ? この名前。
そういえば、委員会の時、すごく人目を引いてる子がいる。
かわいくて、姿勢もスタイルも良くて。
周りにいる子はチラチラ意識して見てた。
きっとあの子のことだ!
二つ結びの髪のあの子。
私の中で名前と顔と噂が一致した。
向岸ヤシロさん
青春してるキラキラ女子だね。
私が手に入れられなかったキラキラを持つ女の子。
向こう側の人。




