憧れのキラキラスクールライフ〈宇良川ルルス〉
小学校6年生の私。
他人から見た私の評価。数々。
「ルルスちゃんってガチ真面目だよね」
「宇良川さん、先生にまた褒められてる」
「絵に描いたみたいなパーフェクト優等生だよね。」
「宇良川さんっていつもテストの点いいよね。地頭いい人はうらやましいよ」
「忘れ物したことないってすごくね? 神じゃん」
「宇良川さんグループにいるとさ、ノリ悪いしつまんなくない? 別にいてもいいけどさ」
「宇良川さんにそんなくだらねーギャグ言っちゃダメだって! 真面目なんだから」
「ルルスちゃん、何か怒ってるの? 目つき怖い」
いじめられてるわけじゃない。
意地悪されてるわけじゃない。
それなのに私はみんなの仲間に入れない。
本当は私だってお友だちと楽しくお喋りして、笑いあって、ひそひそナイショ話だってしてみたいよ。
そう、私は真面目な優等生。
面白みも可愛げもないつまらない子。
誰も相手にしてくれない。
それが私。
ーーー私、変わりたい。
でも今、突然は無理だよ。
でも、中学校に入学したら、その時は
思いきって今までの私を変えるの。
私だってキラキラ青春してみたい。
マンガや小説の世界みたいに。
今までの私を知らない新しいお友だちが欲しい。
それに彼氏だって・・・
そういうの、すごく憧れてる。
私、勇気を出して変わるの。
ーーー中学生になったら
私は夢一杯で中学校の門をくぐった。
全てが目新しくて、どぎまぎしてしまう。
顔見知りはいるけど、知らない人がほとんど。
入学式が終わって一旦教室に戻った。
歩きながら中にはもう、楽しげにお喋りしてる女子二人組もいる。
私、遅れを取っている?
どうやったらそんなにすぐにお友だちになれるの?
ちょっと焦り気味の私。
私のクラスは1年1組。
そして私の席の右側にはちょっと不真面目で怖そうな男子。
見た目はカッコいいけど。
名前は津田沼如月くん。
ちょと気になる。でも、私から話しかけるのはハードル高いよ。
最初の言葉も、話題も見つからないし。
入学して始まりの週は特にお話することも無かった。
でもね、明けて月曜日の朝、急に私に話しかけて来たの。
まだ、教室に来ている人は少ない。
「ねぇ、宇良川さん、だっけ? 今日提出の数学の宿題プリント、やってきた? ちょい見せてくんない?」
なっ? 出された宿題をやってこないなんて、なんて不真面目な男子なのかしら!
そのために早目に登校して来たのね?
そんなことするくらいなら夜ちゃんとやって来ればいいのに。
断ろうと思ったんだけど・・・
ーーー見せてあげたらこれがきっかけで津田沼くんと仲良くなれるかな? 新しいお友だちが欲しいよ。私、いまだにお友だちが出来ていないの。
教室では心細い私。
「・・・今日だけだよ。本当は自分でやらないと為にならないんだから」
「やったねー♪ あざー、宇良川さん超いい人!」
嬉しそうに笑った顔を向けられた瞬間、キュンとなった。
顔が熱い。
私の顔のほてりなど気づくことなくさっさとプリントを写し始めた津田沼くん。
その真剣な表情。
イケてる。
こんな彼氏がいたら素敵だろうな。
ちょっとダメな男子をしっかりものの彼女の私がフォローしてあげるの。
それって楽しげな未来の予感がした。
そして次の日も、その又次の日も宿題を見せてくれと言って来たから見せてあげた。その度に私に向けられるあの笑顔が見たくて。
私、津田沼くんにまた頼まれるかもって思って、なるべく間違わないように慎重に計算して、文字だっていつもより丁寧に書いてきてるのよ。
そんなこと、思ってもいないでしょう? 津田沼くん。
私の初恋。
きっと、普通にお付き合いしてくださいってお願いしたって私はきっと振られてしまうわ。
だって、このクラスには既に津田沼くんにしょちゅう話しかけている女子も数人いて、その中にはクラスのアイドルになりそうな女子も入ってる。
私、いいこと思いついた。
一方通行であろうこの想いを実らせる魔法の言葉を思いついたよ!
これは契約
餌をつけた釣竿
目の前にぶら下げられるニンジン
上手くいくかな?
ダメで元々。
勇気を出して実行よ! 私は変わるんだもん。
私は憧れのキラキラ生活してみたいの。
今までの地味な優等生だと見られてた自分を捨て去って。
今日も津田沼くんに宿題見せてって言われた。
ドキドキドキドキ・・・・・
この言葉、待ってました!
『私、彼氏にしかもう見せてあげないことにしたから』
これが私の思いついた津田沼くん専用魔法の呪文よ。
巧く発動しますように!
『えーっ! なんだよ、昨日まで見せてくれてたのによぉ? ひっでーな!』
『じゃあね、いい方法があるよ?』
『何?』
『私の彼氏になる? そしたらこれからずーっと見せてあげるよ?』
甘い甘いニンジンだよ? おいしそうでしょ?
『マジ? ずっと? 嘘じゃねーだろうな?』
訝しむその顔も素敵だよ。
『うん、本当だよ。約束する』
彼女だったらそんなこと当然よ。
『・・・でも、このこと誰にも言うなよ! 俺らのことも秘密にしろよ。誰かにバレたら即刻解消すっからな!』
『いいよ。秘密って面白そうだし』
ドキドキドキドキ・・・・・
大成功だよ? 私の魔法。
知ってた?
本当の魔法は普通の言葉なんだよ。
現実ではね、意味のわからないスペルを唱えた所で魔法は使えないの。
ここはリアルなんだから。
私、魔法の素質あるかも。
私の初めての魔法は上出来。
『よっしゃ。決まりな。俺は彼氏だからこれから毎日宿題見せろよ』
『うん、いいよ。はい、これ今日の分』
『やったね! あざー』
私、憧れのキラキラスクールライフに近づいているね。




