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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
よみがえる思い出の中で
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伝言ゲーム〈如月〉

 午後の授業はかったるい。


 俺の耳を素通りする念仏。


 ああ、そうだ! 木見戸(きみど)さんに弁当のお礼、何かしねーとな。

 このままって訳にもいかねーし。


 金、要るなぁ。


 これからはヤシロとのデートもあるし。


 ああ、部活もねーし、バイトでもしたいけど、このアッシュの頭と膝痛抱えて出来るとこなんてあんのか?



「はい、ここ! 津田沼、続きから読んで」



 バイトバイト探しなら~、えっと・・・



 ・・・おい、キサラ指されてるぞっ! おいっ!



 隣の席から俺の机の上にチビた消しゴムが飛んできた。


 はい?



「また聞いて無かったのかっ! 津田沼。立っていろっ!」


「・・・ハイ、スミマセン」


 ・・・クスクス クスクスっ



 ったくついてねーな! 今日は誕生日だってのに。



 6限目となると、徐々にナーバスが広がり始めた。


 放課後が近づくに連れて俺の頭は宇良川(うらがわ)ルルスとの約束のことでいっぱいになっていった。



 外は雨が降りだしている。


 今日の予報は降ったり止んだり、所により強く降る所もあるらしい。


 憂鬱に拍車がかかる。



 帰りの挨拶が済んで俺が廊下に出ると、廊下の壁に持たれてライダがスマホを見ていた。


「ライダ、わりぃ。待たせたな」


「・・・行くぜ。隙、見せてヘマすんなよ」


「わかってる」



 二人ともやっぱ緊張してる。



 俺たちはそれからは黙ったまま進路資料室に向かった。


 戸の前まで来ると、俺たちの目が合った。


「来てっかな?」


「入ってみようぜ」


 中に入って扉を閉めた時、ライダのケータイが鳴った。


 ライダは画面をパッと見たとたん俺を見た。


宇良川(うらがわ)さんだ! 通話してきたぞ!」


 ライダはワイヤレスイヤホンをポケットから出すとスイッチを入れ、俺に片方渡してきた。


 俺は無言で受け取り右耳に着けた。


「もしもしー、宇良川(うらがわ)さん?」


 ライダが俺の目を見ながら言った。


『そうだよ。今、津田沼くんと資料室にいるの?』


「・・・ああ、そうだけど」


『だと思った。津田沼くん、一人じゃ来れないって。ふふふっ』


「・・・宇良川(うらがわ)さん、早く来いよ」


『話があるならこのまま聞くわ。津田沼くんに代わってくれない?』


 俺はライダに頷いた。


「わかった」


 ライダがスマホと左のイヤホンを渡して来た。


 俺が受けとると、気を利かせて部屋を出ようとしたので腕を掴んだ。


 話は聞かれたくは無かったけど、一人にはなりたく無かった。


 俺の声は聞かれるけど、いい。


 ライダは黙って(とど)まってくれた。



「もしもし、俺、津田沼だけど」


『・・・一体何かな? 私とはもうお話したく無かったんじゃないのかな?』


「ちょっと聞きたいことがあって」


『うん、聞いたよ。中3の頃のあの噂話のこと聞きたいんだってね』


「そうだけど」


『あれ、私は言ったけど言ってはいないよ』


「どういうことだよ?」


『私が言ったのはね、これだけよ。神に誓って』



 ーーーチアの音見ミオンさんと向岸ヤシロさんっていつもイケメンの運動部に人気だよね。特別な秘訣があるのかな?


 ーーーチアの音見ミオンさんと向岸ヤシロさんは応援してる運動部の男子にモテモテだよ。でも告白されてもみーんな振ってるんだって。美人はすごいよね


 ーーーチアの音見ミオンさんと向岸ヤシロさんは元バスケ部ツートップの礼千(らいち)ジュンくんと津田沼如月くんと外でも一緒に遊んでるんだって


 ーーーチアの音見ミオンさんと津田沼如月くんは補習授業中、二人で深刻な顔してこそこそお話してたの見たよ



『ねぇ? 私、そんなに悪いこと言ったかな?』


「嘘だ! あの噂はこんなもんじゃなかった!」



 そう、あれは主にこんなんだった。


 ーーーチアの音見ミオンと向岸ヤシロはイケメン運動部員たちの回りにはびこるビッチ


 ーーー音見ミオンと向岸ヤシロはつるんで男遊び。運動部を応援しながら男漁りで大漁捕獲!


 ーーー音見ミオンと向岸ヤシロは元バスケ部ツートップを狙い打ち、美脚の魅力に礼千(らいち)ジュンと津田沼如月は・・・



 そしてトドメは、あのクソな俺とミオンの最悪の噂。



『・・・それは私のせいじゃないよ? 伝言ゲームは正確に伝わらないからゲームになるの。途中で誰かが間違えたからって、それは私のせいじゃないよ?』


「ああなること、狙ってた?」


『津田沼くんがどう思おうと勝手よ? 私は嘘は言っていない。いつだって』


「嘘は言っていないって? それがもう嘘だろ?」


『津田沼くんがどう捉えようと構わないわ』



 氷点下の声の響き。



「・・・・・」


『・・・たぶん、あれは天罰だったんじゃないのかな? 私に長い髪は似合わないの。でもね、私、あの時頑張って毎日トリートメントして伸ばしたの。それが向岸ヤシロさんの模倣だなんて知らずに』


「・・・えっ?」


『私、わかっちゃったんだよね。だから』


「・・・・・」


『うふふふ・・・・・わかるよね? 天罰だよ?』


「あれは・・・・・」


『もういいよ? 津田沼くん、もう天誅(てんちゅう)は済んでいるから。だからね、後はもう私に構わないで』


「・・・・・」


『返事は?』


「・・・・・わかった。あの・・・」


『何?』


「・・・ゴメン、宇良川(うらがわ)さん」


『・・・・・』



 ぴっ



 切れた。



 俺はスマホをライダに返した。



 ライダは事情はわかってはいないけど、雰囲気を察してわざとそっぽを向いて俺と目を合わせないように気を使ってる。



 

 ーーー全ては俺のせいだったんだ。


 ヤシロを、ミオンを礼千(らいち)を辛い目に遇わせたのは俺自身だった。



 あれは俺に向けた仕返し。


 みんなを巻き込んでの。



 ザザザザザーザザザー ガタッ ザザザザー

 


 強く窓を打ち付けるこの雨の音が、俺を責め立てている。





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