表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
よみがえる思い出の中で
3/221

バスケ部とチア部〈如月〉

 夢かと思った。


 俺が中学から思い続けていた彼女から1年以上たって急に連絡が来た。




 俺は中学に入ってバスケ部に入部した。


 話に聞くと地方の学校は校庭も広く、2面あったりすることもあるようだけど、俺らの中学の校庭は一面しかない。しかも校庭は狭い。100M真っ直ぐ走ることさえ叶わない。校庭を斜めに突っ切って80M走がやっとだ。 


 そんな俺らの学校ではどの運動部も十分な練習場所確保は難しい。そのせいか運動部の種類は少なかった。


 バドミントン部なんて、体育館が使えない日は、放課後の校舎の廊下でラケット振り回してるくらいだからな。


 だからバスケ部の俺らは体育館で練習中、チア部の子たちの練習と被ることがしょっちゅうだった。


 だけど、その日はラッキーデーだ。

 かっけーとこ見せようと妙に張り切るやつばかり。


 チア部の子たちは可愛くてスタイルもいい子が多い。


 だから、当たり前じゃん?


 もち、俺らは皆、お互い意識していないように見せかけて実はチア部をめっちゃ見ていた。


 そう、俺だって。


 その中で、俺の目はいつの間にか1人の女子だけをいつも追うようになっていた。


 それが俺が中学卒業するまで続くなんて思いもしなかったんだけど。



 彼女の名前は向岸(こうぎし)ヤシロっていった。



 だけど俺は入学してすぐに同じクラスの女の子と秘密で付き合い始めていた。


 最初は順調だったこの事は、いつしか俺を悩ませ落胆させた。



 そう、俺はヤシロを知ってしまったから。



 だからって俺は付き合ってる彼女を突き放す事は出来ずにいた。

 その子といてもそれなりに恩恵は受けてたし。


 俺は惰性でその子と付き合い続けた。

 酷いことに、俺はヤシロを思い浮かべながらその子にキスしたこともあった。

 一度きりだけど。



 中2になって、ちょっと経った頃広まった噂。


 俺らの先輩、俺らの憧れの的の3年のバスケ部のエース、明星(みょうじょう)先輩がヤシロにコクったらしい。


 あのアルティメットにかっけー明星先輩に好きだなんて言われて断る女がいるわけない。


 きっとヤシロは先輩と・・・・・


 ヤシロが明星先輩と抱き合う姿が、ふと、頭に浮かぶ。


 俺の心は砂を流し込まれたようにざらざらと、そして重苦しくなり、ふとしたきっかけでその感覚は幾度となく繰り返された。



 一方、俺はその頃には付き合ってた彼女とはケンカばかりしていた。


 俺が『私の話を全然聞いていない』とか、『どこにも誘ってくれない』とか、『既読スルーしてばっか』だとかで。


 その子はちょっとした色仕掛けしてきたこともあったけど、興味本位だけで変に手を出せば後に引けなくなるはわかっていた。

 俺はその子には興味を無くしていたし、はっきりいって邪魔な存在だった。


 だから俺は誘いに乗ることはなくシカトしてたら自然に消滅してくれたようだった。


 結局、まともに付き合ったのは最初の数ヶ月だけだった。




 明星(みょうじょう)先輩とヤシロはその後どうなったのか俺はずっと気にして見ていた。


 だけど、二人が付き合い始めたという噂もなく、実際そんな様子はみられなかった。


 その内、明星先輩は他のチアの子と付き合い始めた。


 それって、ヤシロに振られた? あの明星(みょうじょう)先輩を振るなんてありえんの?


 信じられないけど、それは本当だった。



 俺はフリーになったけれど、とてもヤシロに告る事は出来なかった。


 だって、そうだろ?明星先輩でだめならおれがコクってもほぼ振られる公算だ。万が一上手くいったとして、俺がヤシロと付き合ったら明星先輩は後輩の俺にどう出るかだよな?


 無理だ。


 どっちにしろ、俺は3年になるまで動けはしなかった。



 俺は待ちに待った3年になった。


 俺はその頃には既にスタメンを勝ち取っていた。


 2番。シューティングガード


 スリーポイントシュートの精度とドライブ初動の加速ぶりが認められた。

 俺はしつこいディフェンスを巧みに突破し、ポイントを稼ぐ。


 俺はやっとヤシロに声をかけることが出来る体勢が出来た。


 ヤシロが誰かと付き合ったという噂は無く、かなりガードが固い子だという噂だった。


 よっしゃ! 今の俺なら行けるだろ?



 ある日、休憩時間に外水道で顔を洗い終わった時、ちょうどヤシロが友だちと二人で来るっていう絶好のチャンスが訪れた。



「よお!チア、いつも試合の時応援ありがとな」


 俺はタオルで顔を拭きながら偶然に自然に声をかけることが出来た。

 俺は目線をヤシロに合わせて笑った。


「あっっっ! いえっ、どういたしまして」


 ヤシロはびくっとして緊張した顔から、作った小さな笑みを見せた。


 俺が急に声をかけたから驚いてる。


「いつも応援して貰ってんのにあんま話す機会無かったじゃん?」


「えっと・・・そうですね。でも、応援自体が会話ですから・・・」


 ちっ! いきなりガードされた・・・・・


 噂は正しかった。

 ヤシロを落とすのは簡単じゃなさそうだ。


 俺、何て言えばいいんだよ? こういう時。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ