ライダとスペシャルランチ〈如月〉
空はなんとか雨を降らすのを待っていてくれた。
俺は普段なら歩いていたとことだけど、駅までバスで行ってから電車に10分ほど乗って学校に着いた。
放課後のことを思うとちょっとばかりナーバスになってる自分がいる。
ま、何とかなるだろ?
俺はいつもよりも更に上の空で授業を受けていた。
チャラーンコローンカーンコーン・・・
4限目終了のチャイムが鳴り響く。
「では、今日はここまで、ワークは35ページまでやっておくこと! 忘れたら居残りだからな! 終わりっ」
先生が言うと同時に日直の号令がかかり、皆揃って起立礼し、俺たちはしばし解放された。
やっと昼メシだ。
「わり、俺、今日はちょい呼ばれてるから行くわ」
俺はいつもの昼メシメンバーに断りを入れてから隣のB組に行った。
俺が行くとライダはまるでお花見に行くかの如くの包みを持って待っていた。
「よっ、待ってたぜ! 生徒会室で食おうぜ。俺、カギ持ってっから」
ライダは生徒会会計をしてる。
さっさと歩き出したライダの横に急ぎ足で追い付いた。
ライダの抱えている若草色の風呂敷に包まれてるこれ、俺のためにライダが?
「スゲー包みじゃんか。どうしたんだよ? これライダが作ったのか?」
「あっ、いや、えーとこれは俺が作った訳じゃないけどな、キサラへの愛がこもってっからな、きっと美味いぜ。俺も食うの楽しみだなぁ」
やっぱり間違いはない。
ライダの奴、俺のことを・・・・
いつからそうなっていたんだよ? 俺は今週初めて気づいたんだぜ?
俺だってライダに応えてやりたいけど、それは無理なんだ・・・
「あっ、その・・・じゃあ家の誰かに作ってもらったのかよ? 大変だっただろ? 俺のためにありがとうな。お礼言っといてくれよ」
「あっ、そうだな・・・でもさ、多分自分で言う機会があると思うから、そん時言ってやってくれよ。きっとスッゲー喜ぶからさ」
「あるかな? そんな機会。学校来んの? でもま、そん時は教えてくれよな。ちゃんとお礼言わなかったら、姉ちゃんに怒られちまうから」
「おう!」
生徒会室に着いた。
「これ、持って。俺、カギ開けるから」
渡された重箱包みはずっしりしている。
ライダ愛が詰まった弁当・・・・・
嬉しいようなそうでもないような。複雑だ・・・
ライダは戸をガラリと開き、中に入ると細長い折り畳み式のテーブルが置かれた所に折り畳み椅子を二つ並べた。
「さあ、早く食おうぜ! キサラ」
「おう!」
若草色の包みを開けると漆塗りの3段重が出てきた!
「すっげーな。ライダ」
「早く並べてみようぜ」
ライダも中身は知らないようだ。
「わぁお!」
おむすびの段、おかずの段、デザートの段。
きれいに彩りよく並べられてすごく美味しそうだ。
「キサラ、誕生日おめでとう! 俺より先に17才だな」
「サンキュー! ライダ。俺、家でも誕生日にこんな豪華なごはん出してもらったことねーし」
「そうなのか? じゃあ作ったかいがあったってもんだな」
「ライダも少しは手伝ったのか?」
「いや、俺はなんも」
俺への愛が詰まったとか言う割りに何もしてねーのかよ?
ふと、俺は大変重要な事に気がついた。
「・・・でもさ、箸無くね? 取り皿とかも。このグレープフルーツの皮に入ってるゼリーもスプーン必須だぜ」
「・・・マジで?・・・・・と、とりあえずおむすび食おうぜ、ほらっ! これならまず問題はない」
ライダは左手に持ったスマホを親指で操作しながら右手でおむすびをひとつ掴んだ。
「お、おう・・・」
「お、このタラコおむすび、うめぇ!」
ライダが大きく一口かじって笑った。
「俺のはシャケだ。これもすごく美味いぜ」
俺らはおむすびを一個づつ食い終わった。
・・・ご馳走を前におあずけ状態だな。どうする? ライダ。
「・・・・・」
「・・・えっと」
・・・・・バタバタバタバタバタバタっ・・・ピタッ
廊下の向こうからこちら方面に走って来る足音が響いて来て、不意に止まった。
バンバンっ
誰かがドアを乱暴にノックしたと思ったらガラッと急に開けて入って来た。
俺らの前まで来ると小さな手提げバッグを片手に握りながら膝に手をおいて長い髪を垂らし、うつ向いたまま上がった息を整えてる。
「ごっ、ごめ、はぁ、はぁ・・・」
誰だよ? こんな慌ててはぁはぁ息を切らして。
その子はようやく顔をあげて俺とライダを交互に見ると、赤らんでいた顔が更に真っ赤に染まった。
誰だろ? 見たことない女子だけど。
ずいぶん清楚で可愛い子だな。
乱れたサラサラの髪を左手で耳にかけた。
首まで赤らんでる。
「あっ、あの・・・ライダくんっ、あたしこれっ、これ渡すの忘れてて・・・別にしてたから・・・カトラリーと紙皿・・・」
「ああ、サンキュー! ナイスタイミングだぜ、木見戸さん」
ライダが小さなバッグを受け取った。
ちょい待て!
この女子は・・・本当に・・・?
「・・・・・木見戸さん? って、これ、木見戸リンさんっ?」
俺は自分の目を疑った。




