用具倉庫の裏側で〈如月〉
そして、俺らは中2になった。
俺は宇良川さんとはクラスは別になった。
俺が神様にめっちゃお願いしていたヤシロとも別々だった。
がっかり。はぁ・・・・・
俺はもうクラスが違う宇良川さんの彼氏でいる理由はなかったけれど、そのまま放置したままだった。
どうでもよかったし、話すのも面倒だったし、そのままでも特に問題などなかった。
秘密のつきあいだから学校で接触することはまず無かったし、たまに気が向いた時リプするだけだったし。
1年経ち部活の先輩が卒業して抜け、2年になった俺はバスケ部で目立つ存在になって来た。
俺は1年の後半からちょくちょく女の子からコクられるようになって来てて、2年になった直後には数人からコクられた。
噂を聞いたのか、宇良川さんは度々LINEでその事を聞いて来た。
俺の心ん中には、もちろんヤシロしかいない。
俺のリプはいつも同じ。
『んなもん全部却下に決まってんだろ?』
『だよね。知ってた』
それで済んでいた。
そんなある日3年のスーパーエースの明星先輩がヤシロにコクったという衝撃の噂が流れて来た。
明星先輩は男の俺にだってガチ憧れの存在だった。
成績優秀、運動神経レベチ、しかもイケメン。
後輩の面倒見も良くて、俺が行き詰まってる時も一緒に原因を考えてアドバイスしてくれる頼れる先輩だった。
あの明星先輩にコクられたらヤシロはもち・・・・・
俺の受けた衝撃は大きかった。
それを聞いてから、俺の頭ん中では、あの明星先輩とヤシロが抱き合ってキスしている妄想が幾度となく現れては無理やり消してを繰り返していた。
部活に行けば嫌でも明星先輩がいる。
先輩はいつもと変わらない態度。
俺は心が沈み重苦しい日々。
明星先輩とヤシロは結局どうなったのか俺にはわからない。
一方、俺はその頃には宇良川さんとは個チャでケンカばかりしていた。
俺が『私の話を全然聞いていない』とか、『どこにも誘ってくれない』とか、『既読スルーしてばっか』だとかで。
もう、2年になった頃には、俺は宇良川さんと繋がってる意味など無かったし、元々彼女を好きだった訳ではなかったし、はっきりいってもううざい存在だった。
クラスが違うし出される宿題だって違うんだ。もうなんのメリットもない。
ある日、俺の部活の終わるのをグラウンド脇の用具倉庫の裏側で待っていると連絡が来た。
俺は断ったけど、宇良川さんは、来るまでずっとここから動かないって脅して来た。
仕方なく俺は約束の場所に行った。
マジめんどくせぇ。
空は暮れなずんでもうすぐ暗くなりそうだ。
宇良川さんは俺を見ると嬉しそうに微笑んだ。
『久しぶりだね。2年になってからLINEでしか話してなかったから。もう、2ヶ月近く経ってるもん』
『・・・一体どういうつもりだよ? 俺を脅しやがって!』
『だって・・・そう言わないと来てくれないでしょ?』
そりゃそうだけど。
『見て! 私の髪。すごく伸びたよ! どうかな? こういうの好きなんでしょう?』
『・・・・・』
なんなんだよ? こいつ。
まだそんなこと続けてたのか?
俺がちょっと言ってみただけのことを。
『ご褒美をちょうだい。私、1年お手入れがんばったの』
『ご褒美?』
『うん、彼氏だもん。いいでしょ?』
『なに言ってんのかわかんねーんだけど?』
辺りはもう薄暗くなってきていた。
宇良川さんは俺の方に顔を向けて目を瞑った。
・・・そういうこと?
俺の脳裏にふっとヤシロと明星先輩のキスシーンが浮かび上がった。
ああ、この二つ結びの女の子がヤシロだったらよかったのに。
ヤシロだったら・・・
俺は妄想のなかで明星先輩となり、宇良川さんはヤシロになった。
俺はそっとヤシロにくちづけた。
『一緒に帰ろ』
宇良川さんは恥じらいながら言った。
『ごめん、無理。先帰ってくれる?』
俺は現実に返った。
そっけなくいい放ち、帰りとは反対方向へ走った。
俺は即刻自己嫌悪に陥った。
何やってんだ? 俺。
俺は外水道で顔を洗い、うがいをし、自分で自分の頬を思い切り叩いた。
痛っ・・・・・
自分で自分が嫌になったのはこれが初めてだ。
次の日、また同じように宇良川さんからメッセージが来た。
俺はシカト。
また次の日も来た。
『何でもしていいんだよ? 私彼女だもん』
もち、シカト。
ついでにもう、ブロックした。
ああ、すっきりした。
さっさとやっときゃ良かった。
向こうもずっと既読つかなきゃそのうちスタンププレゼントを試して俺がブロックしたこと、悟るだろ。
それが宇良川さんに対する俺の気持ち。
つーことで、察してくれよ。
結局、まともに付き合ったのは釣り堀行った最初の2ヶ月くらいだったな。




