疑心と迷い〈ヤシロ〉
前回の会話をヤシロ視点で。
如月くんが宇良川さんにあの中3のころのあたしたちへの悪意の噂のこと、確かめてくれるって約束してくれた。
「ほんと? でもあたし、証拠もないのにこんなこと言ってしまって良くなかったよね・・・」
あたしは落ち着いてきたら、とんでもないこと言ってしまったような気がしてきた。
むやみに宇良川さんを疑うなんて。
もし、違っていたらどんなに気分を悪くさせてしまうことか。
そんなこと如月くんに頼んでいいの・・・・・?
それに、宇良川さんはサイコパス。
だとしたらもし、あの噂を流した元凶だったとしてもほんとのこと言うわけないじゃない!
それに・・・宇良川さんは如月くんの元カノだもの。
如月くん、もしかしたら、今まで知っていたけど、かばって隠していたって可能性も否定出来ないよ?
だめだ! 人に頼っていたら!
「待って、如月くんっ」
あたしは如月くんの肩に乗った手を振りほどき、ガッと勢いよく立ち上がった。
「ど、どうしたんだよ?」
如月くんはびっくりしたように座ったままあたしを見た。
「あたしが、あたしが直接聞くわ!」
「は?」
「だからお願い。あたしに連絡して欲しいって宇良川さんに伝えてくれないかな?」
「なっ、何言ってんだ! そんなのダメに決まってんだろ? 俺の話聞いてたのか? アイツ、いつの間にかサイコパスになってたんだぞ? そんなやつにわざわざ関わりにいくなんて!」
如月くんも立ち上がった。
「だって、あたし・・・・・」
もし、噂を流した人がわかるのならひとこと言いたいのよ。
言葉の凶器を、しかも隠れて使うなんて卑怯だって!
ハートに次々と突き刺さるスローイングナイフ。
その痛み、想像してみて欲しいの。
「もう、いいじゃねーか? たとえそうだったとしてももう終わった事じゃん。ヤシロだってミオンだって礼千だってもうアイツになんて一生会うこたねーんだ。俺だってほんとはもう関わりたくねーよ!」
「・・・如月くん」
「永井先生のこと聞いてたら思わぬことも出てきたけど、これ以上やっかいごとに関わるな! ただでさえそっちの永井先生の謎だってあるのに。マジ、気を付けろよ、ヤシロ」
その真剣な顔。
如月くん、真剣にあたしのこと心配してくれてる。
「俺が宇良川さんにちゃんと聞いておく。いいな?」
「・・・でも、こんなこと聞いたら今度は如月くんが恨まれちゃうかも知れないよ? それとも・・・・・」
「それとも?」
「怒らないでね。如月くんと宇良川さんはお互い心が残ってて、如月くんは彼女のことかばってたんじゃないかって・・・」
「・・・もしそうだったら?」
「それは元カノの宇良川さんへのやさしさからそうなったんだもの。如月くんを責める気持ちはないのよ?」
「なぁ、ヤシロ。俺がヤシロを傷つけた奴をずっとかばってたとでも?」
「・・・如月くん。ごめんなさい、あたし・・・なんか頭がぐちゃぐちゃなのよ・・・」
あたし、いつの間にかまた宇良川さんの仕業だったと決めつけてる。
ただの可能性が見えただけのことなのに。
「とにかく、俺が宇良川さんに聞いとくから、俺を信じてヤシロはおとなしく待ってろ」
「でも、如月くんに迷惑かけたくないわ。聞いたら宇良川さんが気を悪くするのは必然よ」
如月くんまで恨まれて宇良川さんの言霊で呪われてしまったらどうしよう・・・
あたし、頼んでいいの? こんなこと。
「・・・どうせ・・・かわんねーよっ」
如月くんは投げ捨てるように横を向いて言った。
それって、宇良川さんは如月くんをよくは思っていないってこと?
・・・如月くんと宇良川さんって、どうなってるの?




