俺たち相思相愛〈如月〉
ヤシロは昔の辛かったこと思い出して泣き出した。
噂を流したのが宇良川ルルスだったら彼女を許さない、とか言い出して。
もしかして・・・・・
俺が過去にうっかりあんな女の子と付き合っちまったこと怒ってんのか?
だったらごめんな、ヤシロ。
俺の心はお前のもの。安心しろよ。
俺はそっとヤシロを抱き締めたまま。
「ごめんね、もう大丈夫だから」
ヤシロが俺の腕の中でももぞもぞしながら言った。
感情的になったこと、謝んなくたっていいんだ。
だって、それは俺への愛ゆえなんだから。
そうだろ?
俺はヤシロへの愛を示すためそのままそっと抱き締めていた。
ヤシロ、やっぱお前も俺のこと想っててくれたんだな。
だよな。言葉は無くともわかってたさ。
俺はヤシロを腕から解放し、ヤシロの左肩にポンと手を乗せた。そしてヤシロの顔を見ながらこう約束した。
「・・・ヤシロ、わかった。俺がアイツに直に聞いてやる。それで白黒つけようぜ」
これで、気が済むだろ?
俺たちを引き裂いた悪の伝道師が宇良川さんだったのなら俺だって一言言ってやりたいぜ!
「ほんと? でもあたし、証拠もないのにこんなこと言ってしまって良くなかったよね・・・」
ヤシロは、ビビって遠慮してるけど、大丈夫だ。俺に任せとけ!
「待って、如月くんっ」
ヤシロは俺の手を振り払い、勢いよくシートから立ち上がった。
「ど、どうしたんだよ?」
ヤシロは何か思い立ったようだ。
「あたしが、あたしが直接聞くわ!」
「は?」
「だからお願い。あたしに連絡して欲しいって宇良川さんに伝えてくれないかな?」
ヤシロ・・・!
俺の元カノのこと、そんなに気するなんて!
どんだけ俺のこと想っててくれてたんだよ?
俺、もうあんな女、全然関係無いんだぜ?
高校が俺と一緒だったからって気にすることなんかねーんだ。
ったく、可愛いやつだな。ヤシロって。
「なっ、何言ってんだ! そんなのダメに決まってんだろ? 俺の話聞いてたのか? アイツ、いつの間にかサイコパスになってたんだぞ? そんなやつにわざわざ関わりにいくなんて!」
俺も立ちあがり、ヤシロの前に立ち言い聞かせた。
「だって、あたし・・・・・」
ヤシロは俺の両腕をつかんで懸命に訴えてくる。
ううっ! たまんねぇー!
なんていじらしいんだよ? ヤシロって!
「もう、いいじゃねーか? たとえそうだったとしてももう終わった事じゃん。ヤシロだってミオンだって礼千だってもうアイツになんて一生会うこたねーんだ。俺だってほんとはもう関わりたくねーよ!」
そうだろ?
俺とヤシロはこれから再スタートだ!
「・・・如月くん」
「永井先生のこと聞いてたら思わぬことも出てきたけど、これ以上やっかいごとに関わるな! ただでさえそっちの永井先生の謎だってあるのに。マジ、気を付けろよ、ヤシロ」
俺にしたら、サイコパス宇良川より、そっちの学校の方が心配だぜ。
まあ、あの泉ってちっこい奴、あれけっこう使えそうな女子だったしな。あいつがヤシロについててくれれば大丈夫だと思うけど。
「俺が宇良川さんにちゃんと聞いておく。いいな?」
「・・・でも、こんなこと聞いたら今度は如月くんが恨まれちゃうかも知れないよ? それとも・・・・・」
ヤシロが言いにくそうに上目遣いでチロチロ見てる。
「それとも?」
「怒らないでね。如月くんと宇良川さんはお互い心が残ってて、如月くんは彼女のことかばってたんじゃないかって・・・」
うわお! 焼きもち? へへっ・・・
俺はにやけそうになるのを奥歯を噛み締めて抑える。
「・・・もしそうだったら?」
「それは元カノの宇良川さんへのやさしさからそうなったんだもの。如月くんを責める気持ちはないのよ?」
ヤシロは考えすぎだぜ?
俺の心に宇良川なんて1マイクロメートルもないんだぜ?
「なぁ、ヤシロ。俺がヤシロを傷つけた奴をずっとかばってたとでも?」
「・・・如月くん。ごめんなさい、あたし・・・なんか頭がぐちゃぐちゃなのよ・・・」
だよな? わかってる。
今日は永井先生のことやら宇良川のサイコパスやら、俺との再会やらいろいろありすぎた。
しかもヤシロはこれから賽ノ宮ってやつとケリつけなきゃなんねぇしな。
「とにかく、俺が宇良川さんに聞いとくから、俺を信じてヤシロはおとなしく待ってろ」
「でも、如月くんに迷惑かけたくないわ。聞いたら宇良川さんが気を悪くするのは必然よ」
俺のヤシロの頼みだ。
その辺はきっちりしておくぜ。
それに、俺、宇良川のことブロックして後はシカトしてたし、当然恨まれてるだろうし、更に恨まれたって現状維持だっての。
「・・・どうせ・・・かわんねーよっ」
俺はあの夕闇迫る中の、あの初めての自己嫌悪に陥いる原因となった、あのクソ思い出したくもない宇良川ルルスとの倉庫裏での出来事を思い出していた。




