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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
よみがえる思い出の中で
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如月くんと再会〈ヤシロ〉

 あたしは向岸(こうぎし)ヤシロ。高2。


 あたしは今、鬼胡桃(おにぐるみ)駅で中学の時同級生だった津田沼(つだぬま)如月(きさらぎ)くんと待ち合わせしている。


 如月くんとは中3の頃、仲のいい4人グループで遊んでいた時期があった。


 クラスは同じだったことはなかったんだけど、如月きさらぎくんはバスケ部で、あたしはチアダンス部で、体育館での練習時間がかぶったり、試合の応援に行ったりしているうちに友だちになったの。


 4人でカラオケ行ったり、花火大会にも1回一緒に行ったこともあったな。あ、その時は弟のイブキも一緒に。


 如月くんは運動神経が良いし、バスケしてる時はすごくカッコいいんだよ。あ、歌もけっこうイケてる。デスボもすごくて盛り上げるのもうまいの。


 ああ、色々思い出すな。


 懐かしいな・・・・・


 見かけはヤンキーっぽいし怖そうに見えるから避ける人もいたけど、あたしには親切で優しいし、いい人だよ。


 今日会うのは卒業式以来。なんと1年以上前!


 楽しみ。


 どんな風に変わっているんだろ?


 如月きさらぎくん、あたしのことすぐわかるかな?


 あたしはそんなに変わっていないと思うけど。



 昔の友だちに会うってなにかきっかけがないとなかなかないもんね。


 昨日のお弁当の時間、ふうらちゃんから鬼胡桃高校に知り合いはいないか聞かれたのがきっかけだった。


 それであたしは如月きさらぎくんのこと思い出して、ケータイ見たらまだLINE残ってて、すぐにメッセージ送ってみたらすぐリプがきた。


 ふうらちゃんは永井っちのこと聞いて欲しいっていうから、あたし、ご無沙汰の挨拶の後、『突然ですみませんが、去年そっちの高校にいた永井イネリ先生って知ってる?』って聞いたら、『知ってるけど、何で?』って来たから、『今、あたしの担任なんだけど、何か変な先生。去年はどんな先生だったのか教えて欲しいの』って送った。


 そしたら、『俺は直は知らないけど噂は聞いたことある。友だちが知ってっから聞いといてやるよ』ってリプ来たから、聞いてから送ってくれるのかと思ってたら、放課後にメッセージが来てて、『聞いといたけど、けっこういろいろあってさ。出来たら明日会えない?その方が早いから』って言ってきた。


 まだ教室にふうらちゃんがいたから、『明日、直接会って教えてくれるらしいよ。どうする?』って聞いたら、『それはありがたいな、さっさと済ませたいし』っていうので、あたしは『じゃあ、明日会おうよ』って送って、今のこの待ち合わせなのよ。



 鬼胡桃高校はヤンキーの集まる高校で、ちょっと一般人からは避けられてる高校で、毎年募集定員に受験生が満たないの。


 でも、如月きさらぎくんは怖い人じゃないよ。



 あたしが駅の待ち合わせの、改札出たすぐ前にあるパン屋さんの脇に行ったら、いたっ!


 すぐわかったわ。


 だってそのアッシュは相当目立つでしょ?


 如月きさらぎくんもあたしにすぐ気がついた。


 あれ?って顔してから急に笑顔になった。



「きゃー! 如月きさらぎくん久しぶりー! 元気?」


「おう! ヤシロ、変わってねーじゃん。おまえ相変わらず・・・」


「相変わらず?」


「・・・相変わらず・・・かわいいよな、お前」


「やっだー、いきなりなあに?くすっ」


「いや、久々だからリップサービス」


「だと思った。あの、今日はありがとね。別にケータイに送ってくれるだけでよかったのよ。ごめんね、来てもらって」


「別に。結局誘ったの俺じゃん。さてと、どこ行く?」


「あそこよ。あのファストフードでふうらちゃんが待ってるの」


「はっ? 誰それ? 他に誰かいんのかよ?」


「・・・あれ? 言ってなかったっけ? 永井っちの話聞きたいのあたしじゃなくて、あたしの友だちよ」


「マジ? まあ、いいや。その後で・・・」


「なあに?」


「ううん、別に。じゃ、さっさと行って終わらせようぜ」



 雨、しとしと。


 傘をさしてあたしたちは揃って歩き始めた。


「ねえ、背がさらに伸びた? 今もバスケしてるの?」


「いや、怪我しちゃってさ、もうやってない。ヤシロはチアやってんの?」


「ううん、今の学校にはチアダンス部はないの」


「何だよ、つまんねーな。ヤシロの脚見らんないじゃん」


「もーう、そんなことばっかり!・・・相変わらずは如月きさらぎくんよ・・・・・あの頃思い出すね。なつかしいな・・・」


「だな。戻りてーな、俺。人生、中1の一番最初からやり直してーよ。」



 寂しそうな顔。



「・・・どうかしたの?」


「だってさ、色々間違ってきたこと後悔してる。バスケもやめちゃったし、俺」



 ・・・そうよね、あんなにバスケに夢中になっていたんだもん。何か慰めになるいい言葉はないかしら?



「そうね、でもどうせすぐ受験よ?受験対策で忙しくなるんじゃない?」


「俺の高校じゃ受験なんてかんけーねーし」



 うわん! 失敗。



「そうなの? 如月きさらぎくんにやりたいこと見つかるといいけど・・・」


「・・・あざー。ヤシロ」



 そうよね、目標なくしたら誰だって一瞬腑抜けになるものよ。


 あたしがふうらちゃんみたいにもっとしっかりした人なら的確なアドバイスしてあげられるのに・・・





 店に入り、あたしはアイスミルクティ、如月きさらぎくんはコーラを持って2F席に向かった。


 席を見回した。


 さっき、カウンター席で待ってるってメッセージ来てたの。



 ・・・・・みっけ!



 ふうらちゃんは、カウンター席から4人掛けのテーブル席に移動してる所だった。


「ふうらちゃん、おまたせー!」


「やあ、ヤシロ」


 あたしが声をかけるとミルクの紙パックを持って振り向いた。


 ふうらちゃんを見た如月きさらぎくんはすかさず言った。



「ちっちぇ!」



 ふっと動作がとまったふうらちゃん。


 一見、無表情のふうらちゃんの顔。


 あたしにはわかるよ。


 右の眉頭がわずかに動いたのが。



「まあ、座ってくれ。そこのデカいの」



 ふうらちゃんが抑揚のない声で言った。


 

 ・・・・・とにかく、あたしが何とかしなきゃだね。





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