ヤシロ攻略へGO!〈如月〉
「うん、どうしたの? 宇良川さんがどうかしたの? あっ! わかっちゃったよ~ あたし・・・・いひひー・・・もしかして・・・・・如月くん、宇良川さんと?」
何なんだよ? そのニヤニヤ。
俺の心中などお構いなしにおかしな勘ぐりをするヤシロ。
どっからそんな発想が出た?
・・・俺が中1ん時アイツと付き合ってたの知ってた?
まさかな。ヤシロが知ってるわけない。
俺は誰にも話したことねーし。
あれは、ガキ過ぎた頃の気の迷い。
くっそ!
俺のこと、眼中にねーのかよ? 少しは俺を意識しろっての。
個室に二人きりでいるんだぜ?
「全然見当違いだぜ! 俺を怒らせんなよ、ヤシロ!」
俺は超不機嫌に振る舞った。
ヤシロが急にしょぼんとした。
「・・・ごめん・・・如月くん。だって、宇良川さんが・・・」
何か言いたげに俺の目を見てきた。
「もう、いいから」
こんなことさっさと済ませて俺は今日、ここでキメてやる。
その前に、シロイさんのことヤシロに言っとかねぇと。
だって、あの話のシロイさんは俺たちの中学の同窓生な訳だし。
「まず、俺の話を聞け、ヤシロ」
「・・・うん、どうしたの?」
「俺がさっき泉さんに話してたあれな、あの "シロイさん" て言ってたサイコパス女子な、あれ・・・実は宇良川ルルスなんだ」
「うそっ!」
ヤシロが口を手で押さえた。
「嘘じゃねーよ」
「・・・・・・・」
ふっと、ヤシロの表情がぬけて焦点がどっかに飛んだ。
「・・・・・・・」
ずっと黙り込んだまま。
・・・・・ふっと、顎を上げてまっすぐ前を向いた。
ヤシロの意識は戻って来たようだ。
今度は次第にキョトキョト視線をさ迷わせ、落ち着きを無くしてきた。
「どうした?」
俺はさりげなくヤシロの肩を抱く。
ちょい、いい雰囲気じゃね? 俺とヤシロ。
「・・・・・・・」
ヤシロは無言のまま不安げな顔で俺の目を見つめて来た・・・・・
これって、ヤシロが俺にアピール?
「・・・・・・・」
でも、無言。
俺から目をそらし、ヤシロは憂えた顔してる。
胸元を押さえた右手の指先が意味ありげにオフショルダーのカットソーから露出した肌をなぞっている。
これって・・・俺、GOサイン?
「ヤシロ、俺・・・」
チャンスは逃さないぜ!
俺がヤシロにキスしようと動いた刹那、ヤシロが言った。
「・・・あの、成績優秀で、風紀委員長だった宇良川さんが・・・鬼高でサイコパスになって、言霊の呪いでクラスのお友だちを陥れてるっていうの?」
俺に向けたヤシロの目に涙が浮かんでる。
「ヤシロ?」
俺はヤシロの表情の変化に戸惑いを覚えながら見つめ返した。
ヤシロの肩を抱いた俺の手のひらに力が入る。
「あのね、あたし中3の時ね、宇良川さんから聞かされたんだけど、如月くん、昔秘密で付き合ってたんでしょ?宇良川さんと」
「アイツが? ヤシロに?」
「そうよ。だからあたしさっき勘違いしちゃったの・・・」
宇良川ルルスがヤシロにそんなこと話してただなんて!
俺は初耳だ!
アイツ・・・俺のヤシロへの気持ちわかってた? で、探り入れた?
俺の邪魔するためだった? 俺の知らないところでヤシロにチクるなんて! とんだクソ女。
「ホント?」
俺を憂えた瞳で見つめる超かわいいヤシロ。
心配すんな。 俺の本命はヤシロだけ。
ヤシロが本当に俺の彼女になったら、他は全部要らない。
はぁ・・・言いたかねーけど、宇良川のことバレてんならしょうがない。
「ほんとに付き合ってたのは中学入ってすぐの2ヶ月くらいだ。後はほぼ放置してて2年になってちょっとたった頃、完全に消えた」
「・・・そう」
誰にだって黒歴史はあんだろ?
許してくれよ、ヤシロ。
あれは、ガキの頃のほんの気の迷いってだけだったんだ。
別にアイツが好きだったとかじゃねーんだ。
ヤシロへの気持ちが本物なんだ。
信じてくれるだろ?
俺が再びヤシロのくちびるを奪うべく、かがみ始めた瞬間、ヤシロが言った。
「あたし、なぜか宇良川さんがサイコパスだったって聞いて、あのこと、ふぅってよぎったの。」
「あのこと?」
「うん、中3の時の、あのひどい中傷よ。あたしたち、4人が受けたあの」
「・・・・・ああ、あれはひどかったな」
俺たち、あの事はなるべく口にはしないでいる。
苦い思い出。
あのひどいフェイクの噂話によって俺たちは引き裂かれた。
俺と礼千よりもヤシロとミオンの受けたダメージは数倍大きいだろう。
あの時、俺と礼千はあの噂により、一部男子からは羨望の目で見られ、一部男子からは憎しみを込めた目で見られ、またはあきれた嘲笑の目で見られた。
そして一部女子からは忌まわしい目で見られ、一部女子からは不興を買いシカトされ、はたまた憂えた目で見てくる子もいた。
俺たちは噂が薄まるまで、砂を噛むような2ヶ月余りを過ごした。
ヤシロは何も言わなかったけど、相当辛い思いをしただろう。
ミオンの傷はもっと深かった。
あんなにひどい嘘の噂を面白半分にされて。
「・・・こんなこと、何の証拠も無いのに言ったら悪いのは分かっているの。でも・・・もしかして、もしかするとそうかもって思えて来て」
「えっ・・・?」
「あたし、宇良川さんが如月くんと付き合っていたこと、なぜわざわざあたしに言いに来たのかずっと謎だった」
何を言い出す?
「宇良川さん、ずっと如月くんのこと想っていたんじゃないかな? だから高校も同じにしたんじゃないの?」
「・・・まさか。だったら俺に接触してくるはずだろ? 俺、高校入ってから宇良川さんとは話したこともねーし。入学してから宇良川さんがいること知って俺だって驚いたんだ」
ほほを赤らめながら、ヤシロは俺に訴えてきた。
「・・・あたし、もしあの時の噂を流したのが宇良川さんだったのなら、絶対彼女を許さない! ミオンをあんなに傷つけたんだもの!」
ヤシロの瞳から涙がこぼれた。
俺はたまらなくなり、ヤシロを引き寄せ抱き締めた。




