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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
よみがえる思い出の中で
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如月くんとあたし〈ヤシロ〉

 あたしはもちろん1年のころから津田沼如月くんの顔だけは知っていた。


 だって、チアで試合の応援にも行っていたし、練習もバスケとチアは体育館で被ることもしばしばだったから。


 それに如月くんはバスケットボールを持ってる時はとっても目立っていたしね。


 2年になった頃には、如月くんが活躍すると見学の子たちの黄色い声があちこちからキャアキャア飛ぶようになってた。



 あたしが如月くんと話をするようになったのは3年になってすぐの偶然の出来事から。


 ある日の放課後の部活の休憩時間、ミオンと外水道に顔を洗いに行ったのよ。


 その時、ちょうどバスケ部の如月くんがいて、話しかけてきた。


 気のせいかもしれなかったけど、如月くんからは、あたしとミオン二人というより、あたしに話しかけて来てるような感触を受けたの。


 何かあたしに物言いたげな感じに思えて。


 それであたし、この時、まさかまたいきなり告白されたらどうしようって警戒した。


 去年の明星先輩の前例があったから。


 でも全然違ってたからほんと良かったよ。



 好きでもない人気者からコクられたらもう悲劇しか起こらないからね。


 推しの女子からの冷たい視線にひそひそ話。

 靴箱には中傷の手紙。


 中には直でこれ見よがしにわざわざあたしのとこまでやって来る女子の先輩たちもいて。



「まさか、この子? マジなの?」 


「それな。明星くんて趣味わるっ!」 


「誰でも間違うことってあるからね。明星くんもすぐ間違いに気がつくと思うよ。行こっ、みんな」



 ーーーそういうのは何故か皆3人組っていうのは不思議だわね。



 はぁ・・・こんなの好きな人からの告白じゃなかったら、ただの痛手くらったってだけだもん。


 冗談じゃないよ! あたしが告白を頼んだ訳じゃないのに。



 そんなんで前回の踏襲を警戒していたんだけど、如月くんの話は全然違ってた。


 やあね。あたしったら意識過剰。

 はーあ、これも去年のトラウマのせいだ。



 礼千(らいち)くんと如月くんが言ったのは、応援の振り付けリクエストの話だった。


 ありじゃない? そういうのもいいと思う。


 あたしたちのチアダンスで選手もノってくれて試合が盛り上がるのはうれしいし。


 部長のミオンはもちろんリクエストに応えたいと即断したの。


 だって、エースの背番号7番の礼千(らいち)くんと、並ぶポイントゲッターの背番号6番の如月くんから直接言われたら断れるわけないよ?


 部長のミオンと副部長のあたしを交え、4人でLINEグループを作った。そこで振り付け相談を受け付けることになった。


 如月くんと礼千(らいち)くんは仲良さそうに肩組んで戻って行った。


 戻って行ったと思ったらすぐに二人からメッセージが来た。


 でも、LINE上では礼千(らいち)くんと如月くんの言わんとしている事が全然あたしとミオンには意味不だった。


 結局あたしたちは4人とも空いてる時間に集まって会議を開くことになったの。


 それはなぜか、土曜日の部活終了後、カラオケ店で。


 まあ、ミオンがいいならいいけど・・・・・



 振り付けリクエストは実演しながら話したらあっという間に決まってしまって、後はただのカラオケ大会に化した。


 如月くんはミックス無しでも歌い手さんになれそうなくらい歌うまくってびっくりよ。


 礼千(らいち)くんは如月くんにハモってみたり、替え歌で面白いことばっか言ってミオンとあたしをメチャ笑わせた。


 それであたしたちはすっかり打ち解けたの。


 気の合う仲のいい4人グループの出来上がり!だった。

 新しい気の合う友だちが出来るってうれしかった。


 それからは、4人の都合を合わせて何回か遊びに出掛けた。



 8月に入ってすぐのバスケの全国大会。


 残念ながら1回戦敗退。


 あたしたちも泣いちゃった。


 でも、すごいよ! ここまで来たんだもん。

 快挙だったと思う。


 これで部活も引退だね。



 その後の夏休みにも何回か一緒に遊んだ。


 8月はあたしの誕生日もあったからファミレスでお祝いしてもらったりもした。


 小さなプレゼントまでもらったの。


 ミオンからは、あたしの推しキャラのミニキャララバーキーホルダー、礼千(らいち)くんからは将来価値が出るとかで、礼千(らいち)くんサイン入りのスポーツタオル。


 そして、如月くんからはかわいいクローバーの縁取りの写真立て。なぜか如月くんがユニフォーム姿でバスケットボール持ってキメてる写真が既に入っていてみんなで笑った。


 今までで一番楽しい充実した夏休みだった。


 あの夏。


 本当に楽しかったね。


 ねえ? ミオン、礼千(らいち)くん、如月くん。



 

 部活の帰りが同じ位の時は、途中まで4人で帰ったりもした。



 ーーーそういうことが礼千(らいち)くんと如月くんの推しの子たちの気に障ったみたいだった。


 だって、この二人は3年になったその時では校内でかなりの人気者だったんだもの。



 だから、あんなことが起きたんだね。



 あれは、制服が冬の衣替えに移行期間ころのことだった。


 あのデマの噂が流れ出したのは。


 ううん、あたしの耳に入ったのはそれくらいだったけど、きっともっと前からささやかれていたに違いないの。


『チアの音見ミオンと向岸ヤシロはイケてる男子たちの回りにはびこるビッチ』


『音見ミオンと向岸ヤシロはつるんで男遊び。男子バスケ部、サッカー部、野球部、バレー部、被害者多数!』



 クラスの友だちグループがかばってくれなかったらあたし、相当なダメージ受けてたよ。


 クラスのサッカー部と野球の男子もそんなことねえよって否定してくれたから教室では普通でいられたし。


 でも秋が深まった頃にはもっと具体的でリアルなひどい噂が流れ出した。



『音見ミオンと向岸ヤシロは元バスケ部ツートップに絡むビッチ!礼千(らいち)ジュンと津田沼如月はやり放題らしい』


 きっと、礼千(らいち)くんと如月くんの推しの人の誰かが言ってるだけだ。


 あたしたちが二人と仲いいから勘ぐって勝手にジェラシーしてるだけ。


 そんな噂であたしにダメージ食らわせようたってそうは行かないよ?



 こんなの・・・気になんて・・・しないもんね!


 慣れてるし。


 ・・・・・嘘。


 慣れるわけない。こんなこと。


 でも、あたしには恥じる事なんか一つもないの。


 いつも通りよ。あたしがなにか変えるべき事なんてなんにもないもん!



 ーーーそう思ってた。



 でもね、ミオンにはさらにたたみかけるようにあり得ないようなえげつない噂が流れ出した。


 ミオンはこれには泣いてしまった。


 ひどいよ!! こんな嘘でミオンが傷つくのは嫌!


 ミオンはしばらくあたしたちと距離をおくことを選択したの。



 かわいそうなミオン。


 あたしは学校でミオンに近づけなくなってしまった。


 だって、あたしといればさらにバッシングされるに決まってる。



 ミオンがこれ以上傷つけられるのは絶対に嫌。


 しっかり者で、時に厳しくも、みんなの意見を尊重してチア部を導いて来たミオン。


 部長として、皆が嫌がる仕事だって率先してこなしてくれていたミオン。


 あたしの大切な親友ミオン。




 結局あたしたち4人の関係は実質壊れてしまった。


 あたしはミオンが好きだったからこれは仕方がないの。


 ミオンには代えられないから。



 冬が本格的になる頃にはそんな嘘の噂話もすっかり消えていた。


 みんな高校受験が迫って来ていたし。



 結局人の噂なんてそんなものよね。

 一時期それで楽しんで、飽きたら次へ。



 噂の種にされた方はたまんないよ?


 それが悪意あふれたフェイクだったらなおのこと。 



 お陰であたしは礼千(らいち)くんと如月くんっていう友だちを二人失ったの。





 

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