俺のターンだ!〈如月〉
待て。泉さんヤシロに今何つった?
賽ノ宮くんとリアにも内緒って?
リアってのはいいけど、誰だよ賽ノ宮くんってその男?
「ヤシロ、賽ノ宮とリアってヤシロの友だち?」
泉さんが席を立った後すぐに俺はヤシロに聞いた。
「えへへ」
ヤシロはちらっと俺を見てから照れ笑いをした。
嫌な予感。
「リアもあたしの親友よ。リアは運動神経抜群でね、忍者に憧れてる子なのよ。で、賽ノ宮くんは・・・うふふ、あたし先月、初めて彼氏が出来ちゃったんだ」
ほほを少し赤らめて俺から目を反らした。
・・・・・嘘だろ? つい先月って・・・
せっかく再会出来たってのに! なんてタイミングの悪さだ!
とにかく一旦落ち着け! 自分。
まずは基本、事実確認だ。
あのパーフェクトな明星先輩を振ったヤシロの彼氏になった奴。ヤシロに選ばれた男。
なら、その賽ノ宮って奴は相当な奴なんだろうな?
俺はショックを隠しながらヤシロに聞いた。
「ヤシロに初めての彼氏? どんな奴? 教えてよ。写真もってんだろ?」
俺の顔、平常保ってる? 目つき悪くなってっかもな。
「賽ノ宮くんは同じクラスの男子でね、2年になったときね、偶然席が前後になって、あたしの後ろが賽ノ宮くんだったんだ」
「一目ぼれってか!? ヤシロが?」
嘘だろ? 明星先輩よりイケてる奴ってマジで?
「そうだなー? そうとも言えるかもね。最初は才能に一目ぼれしてたのかもね。ロードくんはね、とっても絵が上手いの! ほら、見て! これ、あたしを描いてくれた黒板アートなの」
ヤシロはスマホの画面を俺に見せて来た。
確かに絵は上手いかもしんないけど、そんな奴世の中にごまんといるだろ?
「えっとね・・・・・この写真がいいかな。これがロードくんよ」
ヤシロが並んだ横からスマホを俺の方に寄せた。
・・・・・ヤシロ
お前どうなってんの? 正気かよ?
明星先輩を振ったお前がこんなショボい男を彼氏にするなんて!
「・・・・・」
言葉を失った俺。
「どうかした? その微妙な顔はなあに?」
「・・・・・なんでもねぇよ。なあ、ヤシロ。久しぶりに会ったんだ。場所変えて二人で昔話でもしようぜ。いいだろ? そうだ!カラオケいこうぜ! 久々に俺のシャウト聞きてーだろ?」
「うふふ、そうだね。1年以上も経っちゃったんだもんね・・・・あれから」
ヤシロは物憂げに俺を見た。
「・・・ああ」
俺らは最高に楽しい時間を共有したけど、だけど、それだけじゃなかった。
ヤシロも辛かったんだろうな。あの頃も何にも言わなかったけど。
俺、決めた。ヤシロに彼氏がいようが関係ない。
もう、終わったと思っていたヤシロとの繋がりが甦ったんだ。
・・・・・俺はここでヤシロを取り戻す!
それと・・・泉さんには言わなかったけど、ヤシロに伝えたい事がある。
あの事。
ヤシロ、アイツの事知ってっかな?
俺とヤシロはすぐ近くにあるビルの2Fのカラオケ店に入った。
個室に入ってバッグを下ろす。
やっとヤシロと二人きり・・・・・
「何飲む? 座ってて。俺が持って来るから」
「ありがとう。じゃあ、冷たいレモンティをお願い」
俺は個室から出るとWCに直行。
用を足し、うがいをし、ミントを噛み、鏡を見て髪型を整える。
よっしゃ。我ながら決まってるぜ。
俺はドリンクを手にヤシロの待つ個室に戻った。
「お待たせ、ヤシロ」
「ありがとう、如月くん」
俺の差し出すグラスを受けとるヤシロ。
俺はヤシロが座っているすぐ横にそのまま座った。
「なあ、ミオンはどうしてるか知ってる?」
「ミオンは元気でやってるよ。私立セレン高校でね、今度はチアリーディングやってるのよ! 生傷が絶えないって言ってた。ゴールデンウィークに会ったの。元チアダンス部の子3人で」
「ふうん、俺も会いたいな・・・・・礼千もさ、活躍してるぜ。バスケで。あのスポーツ強豪校、私立テルル学園でだぜ? もう、スタメン入りしてるって。スゲーよなー。俺、おいてけぼりだな」
「仕方ないよ・・・怪我しちゃったんだもん。」
「まあな。リハビリはしてるけど、右膝治るまで時間かかるし、俺、一旦休部してる。良くなったら復帰したいけどどうなるか・・・・・」
「右膝・・・」
ヤシロがそっと俺の右膝を押さえた。
「ん〰️〰️〰️〰️〰️、早く良くなれっ! 黒鮒パワーインジェクション! 黒鮒様にあたしのお願い届けっ!・・・これ、おまじないよ」
俺の右膝に真剣な顔でマジに祈りを捧げてる。
何だかよくわかんねぇおまじないだったけど、やっぱヤシロはすることも可愛い。
「・・・・・あざー、ヤシロはいい奴だな」
俺の今の気持ち少しはわかってる?
中学ん時、俺らの間にはなんもなかったけど、お互い言葉にしなかっただけのことで、ヤシロだって俺の事、好きになってくれてたはずだ。
上手く行きそうな予感・・・
俺がコクればあんな冴えない男より俺を選ぶに決まってる。
コクる前にあの事、話しておかなきゃ。
「なあ、ヤシロ。中学ん時同じ学年に宇良川ルルスって子いたの知ってる?」
「宇良川ルルスさん? うん、知ってるよ。あたし、クラスは同じになったことはないんだけど、中3の時、風紀委員で一緒だったから。宇良川さん風紀委員長してたのよ。でも・・・・・今は全然知らないわ。一回だけど、少しだけお話したことあるよ」
「マジで?」
「うん、どうしたの? 宇良川さんがどうかしたの? あっ! わかっちゃったよ~ あたし・・・・いひひー・・・もしかして・・・・・如月くん、宇良川さんと?」
グサッと俺の胸に言葉のナイフが突き刺さった。
どっからそんな発想が出た?
あの事、知ってた? まさかな。
ヤシロ、それはとんだ勘違いだ。
くっそ!
俺のこと、眼中にねーのかよ?
少しは俺を意識しろっての。
個室に二人きりでいるんだぜ?
あの賽ノ宮より俺の方が絶対イケてるってのに。
チクショウ!




