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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
挿話 あなたがいたから
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私のガーディアン〈小雪〉

「千年も昔の物語‥‥‥?」


 そんな昔の物語が私と何の関係があるというの? 


 旦那様が伸ばして来た指先が私のほほに触れてきました。

 私はビクッとして下がって避けました。


「出来の悪い新月だが、良いこともした。小雪を私の前に導いてくれたのだから」


 私はこの異様な雰囲気に限界が近づいています。


「‥‥‥すみません。私、旦那様の言っている事がよくわかりません。あと、新月さんは優しくていい人だと思います。私、もう失礼します」


 言いたい事だけ早口で言ってソファーから立ち上がりました。



 今すぐお兄ちゃんと私の部屋に戻りたい!


「あの、私はこれで‥‥‥」


 言いかけで、私の左手首がぎゅっと掴まれました。


「‥‥‥まだだ」


 びっくりして旦那様と目が合い、そのまま数秒硬直していた所に部屋の扉がノックされました。



「おやじ、ちょっといい?」



 これは三日月さんの声!



「今、取り込み中だ! 後にしてくれ」


 旦那様は大きな声で返しました。



「旦那様、私はもう遠慮しますから、どうぞ三日月さんとお話なさってください」


「いいから! 小雪」


「いえ、三日月さんがいらしているのに申し訳ないです」


 私はこれ幸いと廊下に呼び掛けました。


「三日月さん、どうぞ、お入り下さい」


 ガチャリと扉が開き、三日月さんが部屋に一歩入ると、私を見て驚いた顔をしました。



「やっぱさっきの声小雪だったんだ。なんでここに小雪がいんの? それに母さんの前でも無いのにまたずいぶんめかしこんでんじゃん? 母さんがいなくなっちまったら今度はおやじとおめかしごっこかよ? はん?」


「あの‥‥私、旦那様にお洋服をいただいたお礼を言いに来ただけで、今ちょうど下がる所でした」


 三日月さんは、ドアを押さえたまま私を上から下までじろじろ見てから、はっとして旦那様を見ました。



「三日月、私は今忙しい。戻りなさい」


「‥‥‥‥ふうん‥‥そう、了解。だったら丁度いいじゃん。俺らは行こうぜ、小雪」


 掴まれた私の手首は、グッと一度握られてからスルリと放されました。


 これって何だったの? なんだかもやもやした気持ちです。



「はい、では失礼します。旦那様」



 旦那様にお深く辞儀をしてから早歩きで扉に向かい、三日月さんと共に旦那様のお部屋を出ました。



「‥‥‥‥このまま黙って俺の部屋に来い、小雪」


 扉が閉まった途端に私を見ずに小さな声で言いました。


「でも‥‥‥‥個人のお部屋に入ったらダメだって」


「バーカ、それはガキん時の話だろ? 俺が来いって言ってんだからそれでOK。他になんか要る?」


 呆れたように私を見ました。


 確かに私より3つも年上で高校生の三日月さんは大人びて見えますけど。



 私は同じ階にある、今は出掛けていない新月さんの部屋の隣の三日月さんのお部屋に失礼することにしました。


 お兄ちゃんたちはまだ夕方まで帰って来ないだろうし、他の人はお仕事中だし、自分の部屋に戻っても一人きりだとなんだか不安に思えて来たから丁度いいです。誰かの側にいたいの。


 三日月さんはちょっと苦手だけど、今だけは。



「そこ、座ってて」


 3人掛けのソファーとローテーブルをあごで指しました。


 旦那様のお部屋より狭いけれど、12畳相当はあります。新月さんの部屋の左右対称の作りです。壁には大きな道路マップとバイクの写真、カンフーアクション映画と水着のアイドルのポスターとか貼ってあって、いかにも男の子っぽい部屋です。床にはヌンチャクが転がってる。


 密かに練習してるのかな? なんか‥‥‥‥くすっ


 悪いけど、あちこちぶつけながら練習してるの想像するとちょっとかわいいかも。


 三日月さんは以前から尖った性格でしたが、この春に高校に入ってから、さらに進化した感じになっています。でも勉強はそれなりにしてるようです。お兄ちゃんから聞いています。


 お兄ちゃんは夕方週3の三日月さんの家庭教師の時間に入れてもらって一緒に勉強しているのです。それはもう何年も前からです。


「ほら、行くぜ」


 三日月さんが棚からカンジュースを取り出し、ソファーの端っこに座っている私に放り投げて来ました。


「きゃっ!」


 私は取り損ね、自分の赤いスリッパの足元のふかふかな敷物の上に落としてしまいました。


 私が右手を伸ばして拾おうとした時、


「‥‥‥なあ、小雪。その赤いスリッパ‥‥‥‥」


 手を伸ばしたまま顔を上げると、三日月さんは私の足元を見て眉根を寄せていました。


「はい、これがどうかしましたか?」


「‥‥‥‥」


 三日月さんは黙ったまま私の隣に座りました。冷たく鋭い眼差しで私の目をとらえています。


 いったいどうしたと言うの? その目、何を怒っているの?


「で、‥‥‥‥小雪がおやじのプライベートルームにいた訳を言え。あの部屋で何していた?」


「何って‥‥‥?」


「隠すなよ? もし、俺に言えないことなら今すぐ大鏡とこの家から出て行け!」


「ど、どういうことですか? 言えないことって? 五十嵐さんに勧められてドレスをいただいたお礼を言いに行っただけなのに‥‥‥‥」


 私は三日月さんの言葉にすごく困惑しました。


 ドレスを貰っただけでいきなり私に出て行けだなんてひどいよ。

 私が下さいなんて頼んだわけでもないのに! まるで私が何か悪いことしたみたいじゃない。


「最初から言え。全て」


 私は自室に五十嵐さんがプレゼントを持って来た所から今までの事を順を追って話しました。



「‥‥‥どうやら小雪は俺に本当のことを話したように思う、けど‥‥‥このままじゃいずれ‥‥‥」


 小さな声で『全ては繋がったな‥‥‥』と、呟いたのが聞こえました。


「どうかしたのですか? さっきから怒っているみたいですけど‥‥‥」


 三日月さん、怖いです。普段でさえ取っつきにくい人なのに。新月さんのお兄さんとは思えないくらい全然タイプが違います。


「‥‥‥俺は小雪に怒ってはいない」


「‥‥‥‥‥」


 そうは全然見えないよ。


「‥‥‥‥‥俺が、俺が守ってやるから」


「はい?」


「大鏡では無理だ。俺じゃねーと」


「あの‥‥‥‥‥?」


「だから小雪は今すぐここでブラコンは卒業しろ。いいな?」


「私‥‥‥‥ブラコン‥‥‥ですか?」


「ったく、自覚無しかよ? 小雪だってもう()()()になったんだろ? しっかりしろよ!」


「‥‥‥‥!」


 私は急激に顔が熱くなりました! 


 鏡で見たら、顔がゆでタコみたいに染まってるはず。



 三日月さんにまで知られていたなんて! 最悪の最悪です。






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