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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
よみがえる思い出の中で
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ふうらの考察〈ふうら〉

 ボクは話を基に、脳内でシロイさんという女子生徒像を徐々に構築してゆく。


 なるほどね。


 シロイさんて面白い子だね。関わりたくはないけど観察するには興味深い。


 クラスの生徒たちを心理的に押さえつけた。そこに実質的暴力などの存在は無い。


 そして・・・学校運営サイドから絶大に信頼されているシロイさんか・・・


 


「ふうん。そんな女王様がいたんだ? それでクロイさんはどうなっちゃったの? 可哀想だよ! そんな濡れ衣着せられて。永井先生は全く気がつかなかったの?」


 ヤシロは理不尽な話を聞いてクロイさんに同情してる。


「気づくわけないだろ? 他のやつらがクロイさんの無実を永井先生に訴えたらさ、そいつらもぐるでシロイさんをいじめてるんじゃないかって疑いの目で、逆に問い詰められたんだってさ。優等生っていうラベルはリアルチートだっての」


「そんなぁ・・・・・」


「ヤシロ、先入観は誰にでもある。だけど、一歩引いてそのことを自覚することが大事だ。そんなことも出来ない先生に当たるとは不運だったな。それに学校がそんな状態なら、シロイさんのサイコパスが発覚しようがしまいが学校はシロイさんの味方だ。」


 結局シロイさんがイニシアチブを握ることに変わりはないね。


「んでな、クロイさんと仲の良かったグレイさんとネズさんがこのことを抗議するために永井先生の古典の授業をボイコットしようって話になったらしい。」


「ボイコット?」


「うん、だからって、ほんとに授業を受けてなかったら単位が足りなくて留年とか、挙げ句の果てには退学ってことにもなりかねない。だからグレイさんとネズさんは永井先生の古典の授業中には先生をシカトしておしゃべりし出した。注意されたって怒られたってシカト。」


「すごい勇気ね。怖くなかったのかな?」


「だって、永井先生は見かけも先生らしくなかったし、貫禄も威厳もなかったし、その辺のねーちゃんと変わらないから怒ったって怖くもなんともねーし、永井先生がグレイさんとネズさんに構って言い聞かせてる間、他の生徒は暇じゃん。それで他の生徒もこそこそおしゃべり始めて。それ繰り返して、負のスパイラルで授業は荒れてって永井先生先生の授業はついに崩壊したんだってさ」


「童顔が災いしちゃったんだ?」


「まだ、続きはあるんだぜ? 永井先生は流石にこうなっちゃったらさ、他の先生にそれまでの経緯を全て話して相談したらしい」


「シロイさんからクロイさんにいじめられてるって相談された事からね?」


「もち。それが発端だろ?」


「じゃあ、永井先生はシロイさんが相談したことを秘密にしておいてっていう約束を破ったんだな」


「それ言わねーと永井先生だって生徒が授業を聞いてくれなくなった理由(わけ)、他の先生に相談できねーからな」



 ってことは・・・・・そうか、なるほどね。


 これで永井先生はクロイさんを不幸にするのに役に立たなくなった。その上シロイさんの秘密の相談事を他の先生にバラした永井先生・・・・・


 ボクにはここで永井っちの全体が見えてきた。



「・・・そうさ。シロイさんは約束を破った永井先生を許すわけないだろ? シロイさんはサイコパスだ」



 シロイさんは放課後、担任に1F予備室に呼び出された時に永井先生の裏切りを知った。



「シロイさんと永井先生、担任の学年主任の先生と教頭先生の4人で話をしたんだって。その内容はグレイさんとネズさんが外からちょいと窓開けて、カーテンに隠してこっそりボイレコ録ってたんだ。それによるとなーーーーー」




 如月くんによると隠し録りしたその話し合いはこんな内容だった模様だ。




「私、そんなこと言ってません。」


 シロイさんがきっぱりと言った。


「え? シロイさん? クロイさんから苛めを受けていたのよね。臭いと罵られたり、容姿をけなされたり、悪い噂を流されたりしていたのよね?」


 狼狽の現れた永井先生の声。


「私の言っていたこととは違いますよ? 永井先生。あの・・・私がここに呼ばれたのは永井先生の授業が荒れている原因を生徒側から聞きたいからだとばかり思っていました。教頭先生」


「ちょっ・・・」


「永井先生ちょっと待ってて下さい。で、続けて。シロイさん」


「私、永井先生の授業は解りにくいし、つまらないし、古典の面白さが全く伝わってきません。それが根本の原因ではないでしょうか? 生徒の私などが言ってはいけないとは思いますが指導力に欠けていると思います」


「シロイさんは原因は永井先生自身だと思うのですか?」


「はい、だから生徒がお喋りしてしまうんだと思います。ここの生徒は内申点なんて気にしてる人は極少数派ですよね? ですからここでは、指導力の足りない教師がよくやる、内申点という生徒の将来を左右する手札をちらつかせて脅して言うことをきかせるって(わざ)は通用しませんよね? この学校の中では、本質的な指導力がない教師は上手くいかないのではないでしょうか? それに・・・・・これはいいにくいな・・・」


「思っていることは全部言っていいんだよ。そのために集まったのだから」


「はい、では。永井先生は男子生徒に受けるために、がんばって若見えさせてますよね? 服装やメイクも。先生の意識無意識に関係なく、生徒からはそう見えています。そういう所も先生の威厳とか無いし、尊敬されにくくて一部女子たちからそっぽを向かれたんだと思います。原因はともかく、きっかけはそこではないですか?」


「ちょっと待って下さい! 私が男子生徒に受け狙いなんて!!私はシロイさんからいじめの相談を受けてクロイさんに説明を求めて生徒の反感を買ってしまって・・・」




「・・・私が気づいていなかったとでも? ねぇ、永井先生? ふふっ」


 シロイさんの皮肉めいた声と小さな嘲笑。




「永井先生、私は確かに先生に私はクラスに気の合う友だちがいないことで相談したけれど・・・・・自分の授業崩壊の言い訳に私の相談事を利用するのはやめてください。私すごく傷つきました。生徒からの相談事は秘密厳守だと思っていたのに・・・私、誰にも知られたくなかったです。信頼していたのに。永井先生にはすごく裏切られた気持ちでいっぱいです。教頭先生・・・・・くっすん、しくしく」


「シロイさん・・・」


「あの・・・私、もういいですか? 私、少しでも上の大学に行きたくて努力してるんです。塾に間に合わなくなりそうです」


「ああ、それはいけない。悪かったね。これからも勉学に励んでください。期待してますよ。シロイさん」


「ありがとうございます、教頭先生。私、期待に応えられるようにがんばります」




 ーーーってな具合。




 如月くんは、はぁ~と大きなため息を吐いた。


「永井先生はすっかりシロイさんにやられちまったんだと。学校にとって、永井先生よりシロイさんの価値の方が何倍も上だしな。永井先生も十分わかってたはずさ。担任だってシロイさんのことスペシャル贔屓(ひいき)してたとかで」




 なーんだ。永井っちの謎はそんな簡単な事だったんだ。


 余りにもやることが短絡的でわかり易く、造作無くシロイさんの呪いにかかった永井っちに、ボクは嗤う・・・というよりは哀れみを感じていた。



「ふうん、自分がやられちゃってからやっとシロイさんの本性を知ったんだ? だからって自分よりシロイさんのほうが上司から信頼得ているなるってなると孤立無援だね。クロイさんを疑ったことで生徒からも反感を持たれてるわけだし。如月くんの友だちのライダくんの言う通り、同情しにくい被害者でもあるし無意識パワハラ正義感ふりかざしの加害者でもあるな。全面的被害者のクロイさんはどうなった?」


 

 ボクは如月くんに質問した。






  

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