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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
穏当な帰結と当惑の帰趨
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"ナガヨネ先生" と "きららちゃん"〈古谷〉

「それがね、いるんだって。世の中いろんな人がいるものよ。ねぇ、相野さん。そんなに嫌ならやらなくていいよ。私とおしゃべりでもして時間潰して帰ればいいよ。そしたら怒られずに済むでしょ?」


 永井さんが軽い調子でさらっと言った。


「‥‥‥何言ってんのぉ? 一応先生なんでしょ? 変なのぉー。やっぱホントの先生じゃないんじゃない? 前に一回来た時と全然違うもん。ねぇ、先生って大学生のバイトの先生? だから緩いの? 後でバレて先生が怒られちゃったりしない?」


 相野きららはこの不適切とも言えるラッキーを誰かに聞かれていないか、回りをきょろきょろ確認しながら言った。嬉しいながらも困惑したようだ。

 ちょっとはばかるように声をひそめてる。



 永井さんは色白の童顔。背も高い方ではないし、確かに黙っていれば高校生で通るかもしれないと思う。


 現役高校生から見たらどう見えてるのかは定かではないけれど、でもきっと永井さんに対してなら他の講師たちより年の差を感じないんじゃないかな。



 永井さんが言うには、新歓の時は会長も見てるしお披露目だから見た目 派手目に作っていたそうで、2が月経った今ではギャル寄りの女の子ってくらいに()()()変えてるそうだ。(会長に気づかれて怒られないよう気を使ってるんだって)


 だから、今ではメイクは本物のギャルのような盛られまくったフェイスではなくて、自然な感じ。大きめのカーキのニットワンピースに黒いミニスカート、ショートブーツの出で立ち。


 講師は皆アクセサリー類は結婚指輪以外禁止だから身につけてないし、大人っぽく見える要素は無いな。


 永井さんの見かけがそんなんだから、相野きららも新しく知り合った友だちと話しているかのようになってる。



「うふふ。相野さんたら私の心配してくれてんの? やさしいのね。でもしょうがないよ。やりたくないのに無理やりやっても苦痛だもん。そんなの学校だけで十分だって」


「マジ? やったー! ナガヨネったら話わっかるぅ! だいたいさー、勉強ってつまんないよねー、特に数学ってさー、きららを眠らすためにあるんじゃんって思うしーーーーーーーーーーーーーーー」



 相野さんの勉強や親への愚痴が延々と始まり、やがて学校の授業や宿題の愚痴に及んできた。



「だよねー、同意」


「うんうん、それ理解!」


 相づちを入れながら楽しそうに聞き役してる永井さん。


 その間、相野きららはリュックからおもむろに取り出した一口チョコを永井さんにいくつか差し出し、自分の口にも放り込み、ドリンクバーまで2回往復した。


 まるで仲の良い友だち、もしくは姉妹のようにも見えて来た。


 もう、既に40分経過している。後もう、50分。



「わかるよ! きららちゃん。学校はきちんと宿題も提出物も出さないとすーぐ先生おこだもんね。めんどくさいよ。出すまで何回も注意されるもんね」


「そうなんだよー! クラスの友だちもさ、変に真面目な子多くて見せてくんないしさ、たまに見せてくれる子のは間違った答えと空白ばっかでさ、困ってんだー」


「じゃ、今出してみなよ。私がやってあげる。どうせ最後はやんなきゃなんないなら怒られる前に提出した方が徳じゃない? それにきららちゃんちはここに大金を払ってるわけだし、それくらいの権利はあるよ。ただし‥‥‥条件があるよ? このまま終わるまで私の隣に座っていること。いい?」 


「きゃー! マジ? やったぁー! きらら超幸せぇー」


 そそくさとリュックから教科書とノート、プリント数枚を出した模様。


「‥‥‥きららちゃん、どんだけ溜めてんのよっ!」


 永井さんが呆れたように顔をしかめると相野きららはえへへと笑った。


「‥‥‥今からこれ全部は私ひとりじゃ無理ね。きららちゃん、自分で出来そうなところもあるんでしょ? そこは今からやってよ。わかんなそうな問題にだけまずはチェックつけといてくれる?」


 永井さんは先ずはこの子の真の実力を確認する気だ。つまずき箇所を知るために。



「‥‥‥上手いな」


 エントが呟いた。


 ああ、本当に。ここまでは見事だ。相野さん、永井さんにすっかりなついてる。


 でも、永井さん、ここからが勝負だな。



「わかった、ナガヨネ先生。ちょっと待っててね」


 相野さんは真面目にチェックし出した模様。


 永井さんがチラッと一瞬僕らの方を見た。



「チェック出来たよー! ナガヨネ先生。このプリントのデッドラインは実は明日で、こっちのはもう過ぎてる分」


「そう、とりあえず明日の分だけは先に片付けなきゃね、明日困っちゃうもの。最初の計算問題は出来るのね? じゃ、ここやっといて。私は、他のやっておくから。私のレポート用紙に解答を書いておくから、後で自分で写すのよ? いい?」


 永井さんは彼女のプリントを写真に撮ると、それを見ながら真剣な顔で問題を解いているようだ。


 先ほどとは打って変わり、二人とも机に向かい静かに問題を解き始めた。


「‥‥‥ねぇ、ナガヨネ先生、ここさぁ、これで合ってる?」


「えっとね、ここは符号が変わるのよ。うっかりしやすいところね。他のとこの計算方法はバッチリね。そこに気を付けて先に進んでて。二人協力してなるべくたくさん終わらせようよ! きららちゃん」


「おっけーい! 頼りにしてまーす! きららもがんばるねっ!」



 なんだかんだ言いながらも自ら勉強をし始めた相野さん。


 なんとかスタートラインにたどり着いた。


 隣のエントが嬉しそうに下向いてにやけてる。


 ‥‥‥こんなエントは初めて見たな。


 自分が指導担当した新人講師の活躍は格別に嬉しいよな。

 理由は他にもあるんだろうけど。




 とにもかくにも、永井さんの最初の授業は合格点が貰えるだろう。





 

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