表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
穏当な帰結と当惑の帰趨
101/221

新人歓迎会にて〈古谷〉

 甲斐(かい)会長の言う通りだった。


 永井ヨネリは見事にギャルに変身した。


 あのストレートの黒髪は西洋の人形みたいな髪の色の巻き毛に。切れ長の瞳にキュートなピンクのくちびる。


 僕たちは生徒の安全の為、爪を伸ばしてはいけない。代わりに何かキラキラしたものをつけてるもよう。


 いやはや、彼女のミニスカートはなかなかキュートだけれど。


 だけどあのリンドウや彼岸花が似合いそうな女の子は消えてしまった。


 外見が変わったからって中身までギャルになってしまったって訳じゃないだろ? その瞳の奥のミステリアスは変わっていないように感じてる。


 なんだろ? こんなに小さくて童顔の女の子に剣呑(けんのん)な魅力を感じるなんて。



 確かめずにはいられない。君のこと。


 すごく気になるんだ。


 ねぇ、君ってどんな人? これって僕、一目惚れ? 自分でもわからない。




 ここはホテルのレセプションホール。


 会場の前方ステージに一列に並んでポーズをとる講師陣新入社員10人。本日の主役たち。


 まるでタレントのオーディション会場みたい。



 変身のための猶予二日間を与えられた新入社員たちが会長のダメ出しを受けた後、全社員にお披露目された。


 この新人歓迎会 & お披露目会は僕たち既存社員の毎年のお楽しみでもある。



 大企業と違ってベンチャーって面白い発想するよなぁ。



 新人が並んだ舞台、その中央の真ん前まで袖から出てきた男。


 両腕を真横に大きく広げて新人を見渡してからそのままクルリとターンした。僕らの方を向いたその顔には会心の笑みが浮かんでる。左腕はそのまま、右手を軽く胸に当てスッとお辞儀した。


 その人は、ブランドスーツと派手なエンジのシャツで決めてるイケメン俳優顔負けの我らの甲斐会長。


 派手好きで自身にも華がある会長には皆を惹きつける魅力がある。


 稀にいるんだよな。こういう人。


 甲斐会長は我々のカリスマだ。


 会長にもお子さんが3人いて、4月から大学2年の息子さんと高校3年になる息子さん、今度中2になる娘さんの3人の父親だそうで。(なのに自分の子どもは塾には行かせたことないし、家庭教師もつけたことないだと!)とてもそんな大きなお子さんがいるようには見えない若さだ。何でも学生結婚されたとか。


 欲しいものは何でも即手に入れちゃうタイプだな。隠れ不器用な僕にはうらやましい限り。



「うーん、なかなかいいじゃないか、今年の新人さんたち。な? みんな」


 自身の命令で変身して来た永井さんたちを見て会長は満足げだ。


 立食パーティー形式の会場のあちらこちらから拍手喝采と指笛が起きた。



 新入社員たちはそれぞれ個性を与えられ、今年は、永井さんのギャルのほかには、爽やかモデル系風 男女各1名、厳しく調教お姉さん風 1名、話せるお友だちセンパイ風 男女各1名、いかにも僕は有名国立大学出身オーラ全開男子 1名、タカラジェンヌ出身風イケメン女子 1名。街で道聞かれやすいフツーの無害の人っぽい感じの男 2名、だとか。


 今から厳しい2週間の研修を受け、それから先輩エージェントに1ヶ月ついて実践を経験者し、会長及び幹部らの前での実技試験を受けパスし、それでやっと新人エージェントとして一人前で働く事になる。


 ああ、残念だな。彼女の教科は数学だと。


 古典だったら僕が少なくとも何日かは研修教官になれたのに。

 今年は残念ながら古典担当の新人はいなかった。


 そのうち中途採用があるかもね。でもそういう人は大抵ベテランの年上だ。個性は与えられない。主に塾構内での生徒の個別指導にあたる専門職だ。


 僕としては入社するなら若い子の方が嬉しいんだけど。




 あれ? いつの間にか会長の話は終わり、会場内はあちこちで小さな歓談の輪ができている。


 いかん、日頃の疲れがたまっていて集中力キレてる‥‥‥



「古谷さん、お飲み物はいかが?」



 僕が指の先で目をぐにぐにマッサージしていたらすぐ横で女の人の声がした。 


 あ、国語の国分(こくぶん)先生がグラスを二つ持って立っている。僕の2年先輩の人。個性は1年半で辞めたとかで今は塾構内の個別指導をしてる。



「ありがとうございます、国分先生。でも、僕‥‥‥少し外の風に当たって来ます」


 僕は額に手を当てながら、ちょっと貧血ぎみの人を装いながら彼女に告げた。


 それなのに、大胆に開いた胸元を強調させながら更に近づいて来る。

 くっそ! 見たいわけでもないのに自然に目線が行ってしまうじゃないか。



「まあ‥‥大丈夫ですか? 私が付き添いしましょうか?」


「いえ、国分先生はここでパーティーを楽しんでいて下さい。僕のことはお気になさらず‥‥‥」


 そそくさとその場を離れた。


 僕、国分さんに狙われてる。僕にその気は無い。いい加減 察して欲しいものだ。


 僕はこういう積極的な人は苦手だ。あざとさが見えてしまって。同性をさりげなく威嚇したり、口撃で蹴落としておいてからお目当てに向かって行くタイプ。


 こういう人に引っ掛かる男は可哀想だな。きっと結婚してからいろいろキツそう。いくら美女だろうが僕は遠慮しておく。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ