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ABSOLUTE CONTROL ~リアルの呪文をあげる  作者: メイズ
よみがえる思い出の中で
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待ち合わせ〈ふうら〉

この回は色々説明っぽくなってしまいました。


面倒な方は次話から読んで頂いて結構です。


 外は雨。今日は降ったり止んだりだな。


 きっと梅雨の走りだ。

 来週辺りには梅雨入りかもね。


 土曜日の午後2時44分。


 ボクはとある駅前のファストフード店の2Fカウンター席から、街ゆく人々を眺めている。


 色とりどりの行き交う傘。でも、透明ビニール傘が半分占めてるな。

 あのすぐパクられるやつ。ボクは使わないけどね。



 ボクはここでヤシロが来るのを待っている。

 ヤシロはボクと同じ2年2組の友だち。


 ヤシロは蓮の葉にたまった朝露のようにキラキラしてる魅力的な女の子。

 付き合いはまだ2ヶ月だけどヤシロはボクを親友だと言ってくれる。


 残念なことに同じ女子だってのにボクはヤシロとは大違い。


 だって、ボクはもう高校生だというのに制服を着ていないと、いまだに小学生と間違われること必至。


 だから今日は土曜日だというのに相変わらず制服を着ている。



 ヤシロはこの店の前の鬼胡桃(おにぐるみ)駅で中学時代の友人と待ち合わせしている。

 そして、ここにその友人を連れて来てボクと合流する予定だ。


 約束は3時。


 駅前のロータリーを上から見渡せるこのカウンター席。


 あ、あれはヤシロの傘だ。あの白地に黒猫の模様の縁取り。

 透明ビニール傘の男子と並んでこちらに向かってくる。


 良かった。やはり直接話が聞けるのはありがたい。


 やはり文字だけではお互いに誤解して受け取ってしまうこともあるし、雰囲気までもは伝わってこないからね。


 それに直接会って話せば質問もしやすいし。



 ボクは今、ボクらのクラスの担任、永井っちについて調査している。


 永井先生は今年我が校へ赴任して来た、女性の古典の先生だ。


 華奢だし、背もあまり高くない。150センチのボクよりはあるけど。

 たぶん160センチはないだろう。


 いつもセンスの悪い派手な色合いのブラウスとロングスカートを着ていて、かなりの濃いメイクを施している。


 見た目は30代後半?


 永井っちにはわからないことが多い。

 永井っちはプライベートなことは一切公表していないのだ。


 大抵の先生は最初にそれなりの自己紹介を生徒にするものだ。


 だけど、永井っちは名前と古典担当ということ以外、生徒には何も話してはいない。


 自己紹介のプリントを作って歴任校や指導方針、趣味、家族構成までプロフィールを配布する先生までいるってのに。



 永井っちのお気に入りの生徒は業村ゴウシ。

 自身が指名してクラス委員長とした。


 彼は一見、イケメンの爽やか系の男子だ。


 一部の女子からは人気だが、人によって態度を変える、性格がカメレオンみたいな男子。


 いや、ここでは世渡り上手だと言っておこうか。そのため、先生受けは良い。


 永井っちは彼の言うことなら何でも信用していると言えるだろう。


 永井っちはこの4月に転任でこの学校に来たばかりだったから、業村くんの事は知らなかったはず。


 だから、最初は業村くんの以前の担任の評価を見てとりあえず彼を信用してクラス委員長にしたんだろうね。


 そして業村くんはそれに十二分に応える能力を備えている。


 すっかり業村くんを気に入った永井っちは、彼には超甘で、その他男子にも全般的に甘い。


 対照的に、クラスでは女子にだけ異常に厳しく、特に見た目が目立つ女子には特に厳しくするので不評を買っている。



 そのため、4月始まって早々にトラブルが起きた。


 きっかけはクラスの女子、牧野のばらに いちゃもんとも取れる指導を行ったことだ。


 天然の赤い髪を持つ彼女におしゃれ染めをしていると決めつけ、黒く染めるよう強要したのだ。


 おとなしい生徒なら不服ながらも指導に従っていたかもしれない。

 内申を握る教師には逆らうのは得策じゃないしね。


 でも、のばらは違う。


 のばらの気は相当強い。気に染まない、しかも理不尽な指導に従うタマじゃない。


 彼女は内申点など気にする生徒じゃないし、気にする必要もない。


 彼女の家はここら辺一帯の地元の有力者の家柄だし、祖父はこの辺じゃ有名な篤志家。あちこちから尊敬を集めている存在で、のばらにはその七光りの恩恵があるから。




『先生は女なんだから、同じ女子に厳しくするのは当たり前でしょ!それに、牧野さん、人のこととやかく言ってないでその頭、黒く染めて来なさい』



『どこに地毛の色だっていう証拠があるって言うの?普通の日本人がそんな髪色してるわけないでしょう?提出書類によればあなたのご両親は日本人だわよね?』



 永井っちの のばらのアイデンティティーを否定するとも取れるような発言に、のばらの怒りは相当だった。 


 生まれ持った髪色が黒じゃなきゃいけないなんて一体誰の考えなんだろう?



 ボクたちは知らず知らずのうちに強要され "教育" され、当然の如くいつにまにか思い込まされて受け入れさせられてる。

 

 だからって、全体主義通す為に学校で『茶髪は風紀の乱れ』なんて、茶髪しか生えてこない人に言われてもね。



 そこで、ボクたちはささやかな反旗を翻した。ついでに小さな自由を手に入れるべく。


 結果、ボクとのばらは生徒会に髪色の自由を求める要望書を提出することにした。


 これは、時期生徒会長でのばらに片思い中の雪村煌のディベートと、のばらのじいちゃんの裏からの学校への圧力もあってほぼ可決される公算だ。


 雪村くんは生徒会と先生との会議で、『髪染めで校内の風紀が乱れるというのなら、先生方が規範となるべきです。"(かい)より始めよ" と、言うではありませんか? 学内の風紀の問題なのなら共に過ごしている教職員とて例外とは言えないのではないでしょうか?』と言って、これを認めないのなら、教職員の白髪染めや増毛などの処置の禁止、加齢による脱毛部分のウイッグの禁止、女性教職員のメイクの禁止を求めたらしい。


 同じ理論ならこれらは、自身を偽り、学びの妨げとなる虚飾と華美を奨励し、教師自らが生徒に悪影響を与えているというのと同じことだと主張したらしい。 


 大鏡じいちゃんによる孫の のばらが通うこの高校、それに落花生(おかき)市、市営図書館と博物館などの文化施設への毎年行われている寄付金撤回ちらつかせも大きかった。


 こんな生徒の髪色なんて先生自身には特に影響もないことで強硬に反対して大鏡じいちゃんの機嫌を損ねて、当然入るとあてにしていたものが次年度からもらえなくなったら大変だよね。来年度からの計画に支障が出る。


 更に巻き添えを食った各所から責めれれるのは皆ごめんだろうし。


 だからもうこっちの方はもうOKなんだ。


 夏休み前に髪色校則が改正施行されれば、休み明けには校内はさぞやカラフルになってるだろうね。



 そして、残りのイシューは・・・永井っちそのものだ。


 この教師は明らかにおかしい。

 明らかな女子差別とのばらへの個人攻撃。


 それに自身を生徒にあんなにも隠してるなんて、何かあるのは想像に(かた)くない。


 この先生はボクたちに壁を作っている。


 そして、自身にもシールドをかけている。



 永井っちが落花生高校に来る前には鬼胡桃(おにぐるみ)高校にいたことは、始業式の転任してきた教職員の紹介の時に判明している。


 あの鬼胡桃高校。


 ボクはさりげなく周りに探りを入れていた所、偶然ヤシロの中学の同級生に鬼胡桃(おにぐるみ)高校に進学した友だちがいると知った。

 しかし、卒業してからはご無沙汰しているという。

 

 あの鬼胡桃高校に友だちがいる人をこの学校内で探すのは難しそうだ。


 ヤシロには申し訳ないけど、ここはボクに助力をお願いすることにした。


 ボクは早速昼休みにヤシロに頼んで、その人が永井っちの事を知っていないか尋ねて貰った。


 その人は、見かけた事は何回もあるそうで、直接教わった事は無いけど、噂話は聞いていたそうだ。そんなに知りたいなら自分の友だちは永井っちに教わった事あるから聞いといてあげる、と言ってくれたそうだ。


 その後、そのヤシロの友だちは、明日土曜日にヤシロさえ良ければ、待ち合わせして会って、詳しく教えてくれると言っていると伝えてきたそうだ。


 ヤシロは、卒業式以来会ってはいないけど優しくて親切な人だから、と言っていた。


 

 そして、今このシチュエーションとなっているんだ。


 さて、彼からどんな話を引き出せるのだろう?



 それにしても・・・こんなにも簡単に、聞いた次の日に会う約束を取りつけてくれたヤシロはすごいな。


  

 ・・・・・ヤシロの中学の友だちの男子。


 ヤシロから連絡されたことで、妙な誤解してなきゃいいけどね。



 ヤシロはボクも同席することちゃんと話してあるんだろうな?

 ボクはうっかりしてヤシロに確認を取っていなかった。



 いまさらだけど、これは杞憂じゃないような気がする・・・・・








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