プロローグ 「赤ずきん」
初めまして、蜂ミツバチです。
今回この作品が処女作になります、目に留めて頂いただけでも嬉しいです。
どうか、この物語が多くの方に読んでいただけますように。
プロローグ「赤ずきん」
ここは、町から遠く離れた深い深い森の奥。
小さく可愛らしい家が一軒、佇んでいた。
森に囲まれたこの小さな家には、一人の美しい少女が住んでいた。
「んぁ〜〜〜〜、よく寝た。」
艶やかな黒い髪は肩まで伸び、毛先はきっちり揃えられている。
長い睫毛に、少し垂れ、大きくりんごのような紅い瞳。
少女の名前はリオネ。
この小さな家に18年間住み続けている。
リオネは白くふかふかのベッドから起き上がり、目を擦りながら
樹木で作られたバスタブに湯を張った。
「ふんふん、ふふんふ〜ん。」
鼻歌を歌いながら白くきめ細かい肌に湯をかけ、体を洗った。
ふう、と息を吐きながらバスタブに浸かる。
ぼーっと天井を見つめているリオネ、しかし何かを思い出したように呟いた。
「...........あ。そういえば今日は。」
風呂を済ませ、白いブラウスに袖を通し膝丈まである赤いスカートを履いた。
いつもの馴染みのある服、リオネは昔からこの服ばかり着ていた。
特別気に入っている服という訳ではなく、ただ着る服を考えるのが面倒だったからだ。
朝食のために庭のベリーを摘みにいこう、そう思いドアを開けた瞬間。
バタバタバタっ
「わああっ!!な、何!?」
勢いよく飛んできたのは、白い梟だった。
「なんだ、梟か。レディーの家にいきなり押しかけるなんて、失礼じゃないあなた。ん?何これ、手紙と...小包?」
よく見ると白い梟は綺麗な朱色の手紙とかぼちゃほどの大きさの小包を咥えていた。
リオネは梟から手紙を受け取り、レターナイフで封を開ける。
「........これは。」
手紙の内容はこう書いてあった。
『私の可愛いリオネ
今日はあなたが生まれて18年経った日ですね。おめでとう。
お元気にしていますか?
婆は今、フォールスタインという街で暮らしています。
突然ですがあなたの母、リリアが生前にあなたに残した”お見舞い”を
私の元へ持ってきて欲しいのです。
道中気をつけてくださいね。
あなたの”おつかい”が無事に終わることを祈っています。
待っていますよ、私の可愛い、赤ずきん。
リルヴェリア』
手紙を読み終えたリオネは椅子に腰掛け眉を寄せた。
「なーに言ってんの?この婆さん。私の祖母?お見舞い?何のことだか。18年間一度だって手紙なんか寄越したことなかったのに。」
はあ、とため息を吐き、視線は小包に移る。
「”お見舞い”ってこれのこと?でも届けるんだから、わざわざ向こうから送ってくるなんてないよね。」
リオネの母、リリアが生前リオネに残したというお見舞いは、リオネも知らなかった。
いや、思い出せなかった。
小包を丁寧に広げ、中に入っている布を広げてみると、
「赤い...頭巾?」
綺麗な朱色をした頭巾だった。