#1:I'm do not know about this game.
2065年 21世紀も半分が過ぎた。
かつてこの国の首都だった場所も今では、人が立ち入ることが厳しく制限されてしまっていた。
理由は、「電脳」に大きな影響を与えるため。
すべては、AIが決めたものだった。
だが、そんなかつての都市部でゲームが開かれようとしている。それは、遊びではなくヒューマンそのものを思い出すためのものだ。
***
薄暗い部屋。コンクリートの壁や天井、床から見て少なくとも家でないということだけはすぐに理解できた。
意識を失っていたのか先ほど目覚めたばかりだが、知らない場所...いや知らない部屋に僕は今いる。
見回すと、僕を含めて10人の同世代らしき人たちがいた。 男女比率は、1:1だ。
「あれ?」
一人が目を覚ましたらしい。 その後も次々に目を覚まし、今僕が思ったことを口にしていた。
「どこだココ」
全員が目が覚め、お互いが誰なのかを確かめ始めた。積極的に話しかける者や反対に無口で状況の理解が追い付ていない者。そして、僕のように 知っている といったような者といった感じだ。
「まずは、状況を確かめる前に名前を順に名乗ろう」
そういいだしたのは、いかにも仕切りたがり屋な坊主の青年だった。
【A-1】
こんにちは、俺は ■■■■ です。 高校2年です。野球部に入っていて、キャッチャーっす。
なんで、ここに来たのかいまいちよくわからないんです。
野球少年の次は、その隣にいた女子が立ち上がった。
【A-2】
どーも。■■■■です。あたしは、高3です。 よろしく!
えっ? 何... あぁ、覚えてないわよここに来た理由なんてさぁ
【B-1】
Hi, I'm a victor.j nice to meet you.
well...ニホンゴ スコシ ハナセマス。 ヨロシク
ワタシモ オボエテナイ ヨ。
【B-2】
私は、■■■■。 高校2年です。 見ての通りだね...
私が覚えているのは、ここで何かの説明を知らないオヤジにされてたことくらい。気づいたら今に至ってた。
【C-1】
■■■■です。
...
【C-2】
■■■■。よろしく。 全部知らない帰りたい。
...
【01】
はははははははははははははははははは
【02】
この人(【01】)おかしいよっwwww あたし? 見てわかんないの?
JKモデルの桜桃だって。
そうして、最後から2番目の僕が順番で来た。
【#3-1】
こんにちは。葉波みなとです。高校2年生です。 ここに来た理由もいる理由も全く覚えていない。
【#3-2】
凪葉凛です。 よろしく。 私が知る限りでは、向こうに見える扉を開けて入ってきたことは覚えている。
***
全員がそれとなく、自己紹介が終わると沈黙が始まった。
その時、自己紹介で笑ってしかいなかった男子が子供のような口調で言い始めた。
「あれれれ? なんでみんな頬っぺたに書いてあるの―――?なんで――???」
そうとだけ言うと、興味がなくなったようにうつむいてしまった。
(なんだこの人は?)
そう思いつつも隣の凪葉という少女の方を見ると、確かに頬には うすい灰色で「#3-2」と書かれていた。
目があった凪葉が小さな声で訪ねてきた。
「ねぇ、私にはなんて書いてあると思う?」
「...#3-2って書いてあるよ」
思う...それは、答えを知っているものが使う言い方だよななんて思いつつも僕が答えると、
「正解!」
とやはり小声で言った。 その後、僕の頬になんて書いてあるか教えてあげるよと読み上げ始めた。
「#3-1ね。私と同じだ」
どこか不思議な雰囲気な彼女をよそに、最初に紹介していた坊主の野球青年がまとめ始めていた。
「なぁ、"-"の前の数字記号で2人組5グループ作れるぞ。 それも席の順番に...」
探偵気取りで考え出す彼に僕はどこか冷めてみていた。 まるで昔見た映画のワンシーンのようだと。
僕が見たその映画は、生き残りをかけたゲームで集められた主人公らが1づつ無残に殺されはじめ、その犯人を見つけ出すという心理的なストーリーだったと記憶している。 まさに、今の状況そのものだ。
だが、まさかリアルでそんなことが起こるなんて思っていない僕は意味もなくあたりを見回した。
僕がそっぽを向いている中、野球青年によって「どうしてこうなった」だとか「逃げよう」とか話していた。
ちなみに、見回した限り扉は2つあり1つはトイレと書かれている。一方は何も書かれていないからおそらく出入口だろう...
「じゃぁ、ひとまず扉を開けて出ようよ。そう簡単じゃないよねぇ」
女子の一人がそう言って無造作に扉のドアノブに手を伸ばした。 この時、僕は先ほど思い出していた映画のワンシーンを思い出していた。
その映画では、「は、早く逃げよーぜ!」といったチャラい男がドアノブに触れた瞬間感電死するという流れだったな。
「ぎゃっ!!!!!」
短く甲高い声で悲鳴が聞こえた。と、思ってそっちの方向を見ると無残な状態の彼女がいた。
周りにいた者たちは、泣きそうな表情をしている。
バンッ
ところどころ焼け焦げ、倒れこむ彼女に駆け寄る者たち。かろうじて、意識はあるようだが戦力離脱といった状態だった。
「おい...ここから出れないとか簡便だぜ」
今の今まで無口だった男が急に不安そうにしゃべりだす。 一方では怯え切った野球青年。
意味もなく笑い始めた男。
「カオスだ...」
僕がささやくと、冷たい口調で そうね と隣にいた凪葉が言った。視線を僕に向けることなく感電した彼女の方を見ていた。
「始まったのね...」
そうとだけ言って部屋の後ろの方へ歩いて行った。
***
目覚めてから1時間ばかりが経った...と思う。テレビがないこの部屋で時計代わりになるものなんて何もない。おまけに、腕時計もなくなっていたから余計に時間はわからない。
「あぁっ!」
起こり始めたかと思えば泣き始める。それを繰り返している僕と部屋の端で眺めている彼女を除いて全員が軽いうつ状態になっていた。
その時、天井の方から声が聞こえた。 見上げると、天井に丸いスピーカーがありそこから聞こえるようだ。
「な、なんだ? 何をしたいんだぁ!」
誰かが叫んでいたが、それには一切反応することなく機械音声が流れ始めた。
「...ワタシハ コスモスOS AI です。 ミナサンニハ コレカラ シジヲ ダシマス。」
***
[[[指示]]]
・これから、電気ショックを解除し扉を解放する。
・10人の者たちには、ミッションを与えそれをクリアすることで元の日常に戻すことを約束する。
・時間制限はない。ミッションクリアのみがゲームクリアだ。
ミッションは、「AltCommand」をすべて回収すること。
AltCommandとは、記憶である。
AltCommandは、メモリーカードのような形をしているがとても薄い。
持つだけでメモリーカードを読み取り、カウントをする。
***
「ソレデハ、トビラヲ 解放シマス」
ガチャンとドアの方から音がした。
その音と、同時に多くの者が扉から走って外へ出てしまった。 気づいたら、部屋にまだいるのは僕と凪葉。そして、電気ショックをもろに食らった「桜桃」という少女だけだった。
「大丈夫?」
僕が横たわっている彼女に問いかけると、「ダイジョブ」と震えながら言っていた。
僕の後ろから、凪葉が顔を出し話し始めた。
「気分はどう? まさか、あなたがトラップに引っかかるなんてね」
先ほどから、今回の何かを知っているような口調の彼女に僕は少し強い口調で聞いた。
「君は、何者だ? 何を知っているんだ」
そうすると、ゆっくりと体を起こす「桜桃」がいいのよ と言って凪葉に変わって答えた。
「彼女は、私の同僚よ。 正確には、私たちはこの実験を作った側だったの」
「モデルじゃないの?」
「まさかぁ」
僕ら3人は、部屋をでた。
そこには、僕ら以外の7人はおらず1枚のプレートだけが立っているだけだった。
>頬に書いてあるのは、ミッションエリアだ。ぜひともペアで行動するといい。
矢印が書かれている。その方向を見ると、ひとりの男が立っていた。 笑ってイばかりいた奴だ。
「待ったよ。えっと...モデルさん」
「それ、名前じゃないって」
さっきまでと変わって普通に会話をしている彼に僕は
「あれ?」
というと、その男がニコニコと説明し始めた。
「あれね演技だから。 だから、僕と彼女そして凪葉は仲間だよ」
「仲間?」
先ほどから何が仲間なのか気になっていた。 凪葉に「君らはいったい何者なんだ?」と聞くと そうねと手を口に当てて考え始めた。
「そうね。私たちは いわば仕掛け人よ。 AIに指示を出されているのそして、君「葉波くん」もよ」
凪葉がそういったとき、僕の肩にトンと手が乗っかった。
「そうだ。君も仕掛け人だ」
振り向くと、30代くらいの男が立っていた。 誰ですか? 僕はそう聞くと 名乗る名前はない とだけ言って話し始めた。
「どうやら、葉波には記憶が残らなかったようだ」
そういうと、事細かに男は話し始めた。
・ここにいる4人以外はゲームとしてAltCommandを探す。
・4人は、4人以外の人間を観察し変化を見る。
・観察と同時進行で、AltCommandを読み込むための装置を探索する。
「そういえば、ここはどこなんですか?」
話が終わり、一息ついている男に僕が尋ねると「えっ」といった具合に驚いた。
「忘れたの?」
「え、えぇまぁ...」
男はポケットから端末を取り出し僕に差し出した。そこには、荒れ果てた トキョー があった。
「こ、ここですか?」
「そうだよ。正確には地下鉄の駅の一角だ。」
僕が覚えていない記憶の世界ではいったい何があったのだろうか。僕は気になったが、ひとまずこのままとどまっている気にもならないでいた。
「じゃぁ、そろそろみんな頼んだよ」
男は、そうとだけ言うと闇へと消えていった。
(いまの俺かっこええ)といういらないセリフとともに...
***
Next.
6人を観察する葉波らは、彼ら以外に存在するヒューマンを見つける。だが、それは僕ら4人だった。
もう一人の自分がいるとでもいうのか...