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ホーリーノヴァ  作者: 虎キリン
18/24

ホーンラビット前編

 ミの村から一層に入る。

 そこにカイとサクが待っていてくれた。二人は、この2年で、大人って感じになっていた。


「来たな」

「今日は、サイカが、頑張るのよね」


「お願いします」

 カーク

「あんちゃん、どんな感じだ」


「ホーンラビットが、集団でリニュリオンしそうな感じだ。中には、五層で、飛カンガルーに進化する奴が、現れるかもしれん」

「じゃあ、ラビットキングが、いるのか」

「ああ。二層入り口に側の森近くまで行かないといけなかもな。いっぱいいたら、おれたちも忙しくなるぞ」

「いいんじゃない。うちの村長さん所の燻製小屋が忙しくなるってことよ」

 ミの村の村長の家には、燻製小屋がある。燻製にすると、肉をある程度保存できる。


 二人ともホーンラビットぐらい余裕という感じに見える。それでも、一番弱いサイカを前面に出すのだ。全く手を抜かないという感じで、顔が引き締まっている。


 狩りの仕方はこうだ。まず、一角ウサギを追い立てる。一角ウサギは、助けを求めてホーンラビットがいるところに逃げ込む。なぜ一角ウサギがホーンラビットの居場所をサーチできるかは不明だが、それで、ホーンラビットが出てくる。そこを鎌イタチの魔法で強引に倒すというのが、今日の狩り。もし出てくるホーンラビットが一匹ではなかったら、そりゃもう大変なことになる。みんな手も足も出してサイカを助ける。だけど一匹だけだったら、カークも手を出さない。サイカの力だけで乗り越えてもらう。


「じゃあ、水場に行こう。先にスライムを倒して、一角ウサギが水を飲みやすいようにしてやろう」

「そういや昔、カークがホーンラビットに、おもいっきり追いかけられたよな」

「サイショノコロノ、ハナシダヨ」

「今は、逆に追っかけているわ」

 実際カークのステータスは高い。おれは、ステータスを数値化できることを誰にも教えていない。昔のおれを知っている奴に隠す必要はないが、今そんなことを言うと、自分の時間が無くなって修行どころでは、なくなってしまうだろう。この世界で、そんなことが出来るのはおれだけだからだ。


「サイカも結構走るの早いけど、ホーンラビットが出るまでは、カークでいいんじゃないか」

「お願いねカーク」

「ソウスル」


 水場のスライムを倒して、茂みに潜む。サイカは、カークの上に乗って一角ウサギを待つ。カークは、Dの店で買った立派な鞍をつけている。この鞍は、サイドバックが左右に有って簡易のキャンプ道具まで入る。その他いろいろ二人で工夫しているみたいだ。この鞍は、最高の使い心地だとカークが言っていた。


 一角ウサギが現れた。耳をピンと立てて警戒している。みんな水ぐらい飲ませてやろうと思っている。だからサイカも動かない。


 一角ウサギは、水を飲みだすと警戒心を解いて、水を飲むのに必死になってしまう。サイカとカークは、茂みから姿を表して、じりじり一角ウサギに近づいて行く。一角ウサギが気づいたときには、相当近くまで詰め寄っていたので、驚きが倍。必死になって逃げる。


 一角ウサギが、耳をピンと建てた。

 ピピン?


「カーク、一角ウサギが気づいたわ。『雄たけび』!」

 アッ、ギャーーーーー


 もうそこからの一角ウサギは、死に物狂いで逃げる。今のカークだと余裕で追いつけるのだが、オラオラーと、一角ウサギを煽りながらついて行く。


「おれたちも行くぞ」

「了解」

「サキが、フォローなんだろ。先に行け」

「任せて」


 おれたち後続組は、静かに二人の後を追った。


「やっぱり、一層の奥まで逃げるわね」

「オビト、呼び笛を準備しろ。総力戦になるかもしれないぞ」

「楽しみだ」


 二層に降りる入り口には、強いモンスターが集まっている。下手をしたら、ホーンラビットだけでは済まないかもしれない。呼び笛は、今、一層に潜っている仲間を呼び寄せる笛だ。風の魔力を込めて吹くと、遠くまで音が届く。ホーンラビットのリニュリオンの噂は、ヒもミの村も噂になっている。サイカの試練もみんな知っている。いざという時はみんな助けてくれる。総力戦になれば、初の団体戦を経験できる。サイカには悪いが最悪を期待した。


 二層入り口付近は森になっている。草原は終わり林になり森近くの茂みに一角ウサギが逃げ込んだ。


 ピピーーーン


 ガサガサ、ガサガサガサガサ。

 ホーンラビットが5匹現れた。


 ぎりぎり、おれたちだけで何とかなる数。リーダーのカイには、2匹を相手をしてもらわなくてはいけないが、行ける。


「よし、修行続行だ。4匹は、おれたちで仕留めるぞ。ザンは使うなよ音で、他のが出てきてしまうからな。散回。!」


 おれは、呼び笛を手から離してホーンラビットをにらんだ。首にかけた呼び笛を服の中にしまう。


 カイが、サイカの右側。おれとサキがサイカの左側に飛び出した。カークとサイカは、そんなこと気にせずに、中央のホーンラビットに突っ込んだ。


「カーク、軽くけりながらジャンプ。1匹をこっちに引き寄せて」

 カーク、カカカカカカッ


 カークは中央のホーンラビットを蹴って怒らせながらジャンプ。5匹のホーンラビットの後ろを取った。上手い戦法だ。おれたちは、5匹を挟撃する形になった。


 サイカは、こういうのが得意なんだよな。


 サイカは、出て来たホーンラビットが一匹だけだったら、カークから降りて戦おうと思っていたが、大事を取って、それをしない。自分に敵意をむき出しにしている敵に、オーバースローで、鎌イタチを撃ち込んだ。


「『鎌イタチ』!」


 きゅッ


 その、ホーンラビットは、怯んだが、全く闘争心を失っていない。肩に切り傷を作ったままサイカに突っ込んだ。カークは、これを簡単に避ける。サイカは、うまい事1匹とさしの勝負に持ち込んだ。


「オレたちも行くぞ」


 カイのあんちゃんは、無茶苦茶だ。鎌イタチを使わないで、一度に2匹を蹴って殴って自分の方に引き寄せた。おれとサキは、無茶するなと思いながら、敵の足を鎌イタチで狙う。動きの速いラビット族は、こう攻略するのがセオリー。


 二層に続く入り口近くで、静かな戦闘が始まった。鎌イタチのスンスンという音と、ホーンラビッと肉弾戦をしているドカドカという音。おれたちは、華麗にホーンラビットの攻撃をよけながら風の魔法を使っているが、カイは、サキと組んでから、前衛を意識するようになった。おれたちとは、戦闘スタイルを変えてきている。最近剣も練習し始めたが、とりあえず、戦いの中で、急場しのぎで戦った肉弾戦が、一番実践に向いているらしくて、魔法のみで戦っていたおれたちとは一線を隔し出した。


 剣の方が楽だとは思うのだが、戦闘スタイルは、人それぞれだ。Dの店にある鋼鉄ナックルをそのうち皆で買ってやろうと話し合っている。


 森と林の間は、茂みが多い。茂みから聞こえるガサガサという音は、一角ウサギのものだろう。それにしても、なぜ逃げない。天敵の蛇が近くにいるのか?そんなことを考えながら戦闘をする。


「『鎌イタチ』!」

 やっと、足に当たった。おれが相手をしているホーンラビットの動きが鈍る。優位になったおれは、周りに気を使いだした。横で戦っているサキは、戦闘開始で敵の足を傷つけて余裕で戦っている。カイのは、あれは修業だな。死闘を演じている。後で、サキに癒しの風を掛けてもらわないといけないだろう。そして、サイカは、………善戦していたが、いい勝負。どちらも傷ついていない。彼女たちの戦い。これは、スピード勝負だなと思った。


 あのホーンラビットやるな!


 サイカと戦っているホーンラビットは、最初こそ、鎌イタチを食らってしまったが、興奮状態で血が止まっている。カークの馬上にいるサイカにジャンプの波状攻撃を掛けている。サイカは、これを小さなバリヤーでしのぎ、鎌イタチで応戦する。しかし、バリヤーで防いでいるとはいえ攻撃を受けているので、その反動で、鎌イタチの命中率が落ちている。ホーンラビットと一進一退の勝負を繰り広げていた。


ピョン。ピョンピョンピョンピョン、ドカッ

「『バリヤー』。やったわね『鎌イタチ』!」

ピョン。ピョンピョンピョンピョン、ドカッ

「『バリヤー』。やったわね『鎌イタチ』!」

ピョン。ピョンピョンピョンピョン、ドカッ

「『バリヤー』。もう、嫌い。『鎌イタチ』!」


 永遠とやっている。でも、カークは、体をさばきはするけど、戦闘にノータッチ。我慢している。


「サイカ、小さいバリヤーじゃだめだ。大きいので押し返せ」


「えっ?」

ピョン。ピョンピョンピョンピョン、スカッ

サイカがおれを見て気を緩めてしまった。当たりそうになった攻撃をスンとカークが避ける。


「大きいバリヤだ。押し返せ」


 サイカは、攻撃より防御の方が得意。器用に敵の攻撃に合わせて弱いバリヤーを張って凌いでいる。防御も、タイミングが良かったらカウンターになって攻撃になる。サイカは、そんな戦い方をしているように見えた。でも、それじゃあ防御が弱すぎる。


ピョン。ピョンピョンピョンピョン、ドカッ

「『バリヤー』!」


 ドッカン


 ホーンラビットは、カウンターを食らって地面に叩きつけられた。

「サイカ、イマダ」

 戦闘センスは、カークの方がいい。


「『鎌イタチ』!」

 スン

 ピキン

「ヨシ、アシニ、アタッタ」


 おれの方は、サイカによそ見をしていたので、いいのを一発食らってしまった。「この野郎」。おれは、短剣を取り出して、調子に乗って攻めて来るホーンラビットのお腹に突きを入れた。やはりおれは剣士職が似合っている。

「『鎌イタチ』!」

 ピピンー

「よし」


 おれとサイカとサキは、ホーンラビットに止めを刺した。しかし、カイは、未だに死闘を演じている。肉弾戦は、ホーンラビットも得意。2匹は、きつそうだ。でも、手を出すと後ですっごく怒られる。おれたちは、腰に手を当てて、カイと2匹の戦いを見守った。


 ガサガサガサ


 まただ。茂みで音がする。


 カイが、1匹倒した時だった。最後の1匹がピピーーーンと、極大の警戒音を出して茂みに逃げ込んだ。そこに、22匹のホーンラビットが現れた。そしてその後ろから、ひときわ大きなホーンラビット。あれはラビットキングに違いない。


「オビト、呼び笛を吹くのよ」


 おれは、思いっきり息を吸い込んだ。


 ホーーーーープワーーーーーーーー、ホーーーーープワーーーーーーーー、


 一層に、呼び笛がこだまする。集団戦闘を期待して、おれらの戦場近くに集まっていた村の仲間が集合する。こっちも20人近くになった。おれたちは、森と林の間で、睨みあった。

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