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ホーリーノヴァ  作者: 虎キリン
12/24

ライナ姫

 その夜、ライナ姫の夢を見た。


 そこは、白亜の神殿。白い大きな羽が背中に6枚ずつ、小さな羽が足元に2枚ずつの美しい天使が、おれを待っていた。


「ドラゴンスレーヤー、いえ、今は、オビトさんでしたね。あなたが、300年前に、私を救出するために亡くなったのは、とても残念なことでした。あの時、私が、あなたに魔力を注いだのは、お分かりになりましたか」


「すまん、生まれ変わって気付いた。タイフーンドラゴンにはやられてしまったが、あんたを救出できたんだ。あの時、死ぬのに悔いはなかったさ」


 それを聞いてライナ姫は、泣きそうな顔をして微笑んだ。


「私は、心残りでしたよ。ファーストキスのお相手がすぐ死んでしまうのですもの」


「そりゃ悪かったな。それに、あの後、人族のために戦ってくれたんだろ。感謝する」


「いいのです。どうやらあのキスは、私たちを深く結びつけたようです。それで、オビトさんが…」


「オビトでいい」


「オビトが、ヒの村に生まれるとき。時を同じくして生まれたミの村のサイカさんに、わたくしの力の一部が、付与されたようです。オビトとサイカさんが接するようになって、わたくしは、オビトを強く感じるようになりました。今日、わたくしは、あなたに呼ばれたのだと思います」


「そう言うことか、なんとなくわかる。聞きたいことがあるんだ。実はおれは、自分の力や他人の力。つまりステータスを数値化して見ることが出来る。今日サイカが、レベル2になったんだ。それで、おれのステータスと見比べた。おれはまだ5歳なのに魔力が、もう人間の限界を突破しそうな所まで有る。それは、ライナ姫の恩恵だと分かるんだが、もう一つ、属性値が異常に高いんだ。サイカは、風をのぞいて5属性が一桁だが、おれは、300もある。これは、あなたの恩恵か?」


「素晴らしいわ。切っ掛けは、わたくしでしょうが、魔力が強くなって妖精たちがあなたに集まってきているのです。妖精は、それぞれの属性のエネルギーの塊。エレメンタルです。きっとあなたを助けてくれるでしょう。みんなあなたが大好きなんだともいます。・・あら、それでは、また呼んでくださいね」


「待ってくれ、もう少し話が‥‥‥‥」


 おれはライナ姫が、サイカと、どう関わっているの聞きそびれた。でも、これは、夢の中の話。ここまでの話でも、大事な話が多かったから、起きても忘れないぞと。さっきの話を何度も頭の中で繰り返した。




 ここは、マルタ島から北に100Km。バルモア共和国の首都チリアの上空5千メートル上空に浮かぶ大天使の城。ここに、大天使ライナの居城がある。

 魔王の復活は近い。いつ何時、何かあるかわからないから、ここの警備体制は、とても厳重だ。その警備網をいとも簡単に破れる化け物がいる。それはライナの大親友であり、恋のライバルであるカジカだ。


 ライナは、白亜の神殿の様な城の寝室で、瞑想するように立っていた。そこに、青い魔気を舞い上がらせたカジカが入って来た。警備網を突破されたライナの近衛兵は、全く違う場所を捜査している。そして、側近のメイド長が制止するのを振り切って、ライナの寝室の扉を開けた。


「あら、カジカ。5年遅れだけど、ここに来るのは、早かったのね。。ナイトメアサーチを切ってちょうだい。もう、オビトとは、話していません」


「5年も前からオビトの出現を知っていたなんて、やってくれたわね。それも、幼馴染から、オビトの考えを見ていたなんて、思いつかなかったわ。サイカちゃんにどんな恩恵をあげたの?」


「メイさん、控えてくださって結構よ。そうね、紅茶を持って来てくれるかしら。親友の急の訪問ですが、歓迎しませんと」

「かしこまりました」


 ライナは、カジカの訪問は想定内だったようで、ソファに座ることを勧めた。ライナも、全開にしていた白い羽をたたんで、人のようになってソファに座る。カジカも黒いコウモリの羽をたたんでそうした


「わたくし、サイカさんには、なんの恩恵も与えていませんよ。サイカさんと同調しやすいように、この5年間、たまにサイカさんを見ていただけです。何かあったら、助けることぐらい出来ます」


「そっか、オビトの幼馴染のサイカちゃんは、ライナの最大のライバルになるかもしれないもんね」


「わたくし達のでしょう。それで、ホーリーの5層のコテージのご主人には会いまして。わたくしとあなたのコテージの話をしてくれたでしょう」


「なんのこと。ガンツさんにコテージを作ってって頼んだけど私のよ」


「5年前に調度品を作ってねって、お願いしていたのよ」


「それは聞いた」


「さっきのような喧嘩を他の人に聞かれたくないのよ。コテージは、二部屋よ」


「仕方ない。後で言っとく。そうそう、一つだけアドバイスしてあげる。機会があったら、オビトと精神感応をしたほうがいいわよ。あいつが何考えているかわかるから」


「よろしいの」


「今更!。これで私と一緒でしょ。でも、ここからは、フェア。互いのことを話し合いましょう。ルインが言うように当分はウォッチだけで我慢する?オビトが5層まで来たらライナも会うでしょう」


「成長したオビトさんに会う切っ掛けのためのコテージよ。でも、魔王の復活がいつになるのかわかりません。オビトさんには、のんびりさせたあげたいのですが、さっき聞いた感じでは、ドラゴンスレーヤーのステータスを持って転生した様です。自分や他人のステータスを見る力はドラゴンスレーヤー特有でしょう。彼の戦力は、不可欠です。強引に、体を成長させるような事態にならなければいいのですが」


「本当ね」


 難しい話が終わったのを見計らったように紅茶が来た。二人は、夜遅くまで話し合った。




 翌朝、眠い目をこすって、じいちゃんがいつも座っている縁側に行って、じいちゃんの横にドカっと腰を据えた。いつもの大穴の奥から朝日が出てきている。森の方から聞こえるボウボウという鳴き声は、イグアノドン。大人しい草食恐竜だ。


「じいちゃん、妖精って、いるんか」

「そりゃいるじゃろ。わしら、手から鎌イタチが出るわけなかろう。妖精が助けてくれとるんじゃ」

「そりゃそうだ。それで、どうやったら妖精に会えるん」

「多分、この辺にいっぱいいるぞ。オビトは、妖精に好かれているでな」

「それだ、それ。おれ、妖精に好かれとるんか」

「そりゃそうじゃろ。5歳のボンが、竜巻起こしてその上に乗った話を聞いたことが無い。みんな、目的が違うと笑い飛ばしとったが、いつオビトに魔法で抜かれるか内心ひやひやじゃ。カイなんかは、いいパーティーメンバーが育っているちゅうて、喜んどったがな」


「妖精って見えるんか」

「なんじゃ、興味あるんか」

「そりゃそうだろ。おれの魔法を助けてくれとるんだろ。例の一つでも言いたいじゃないか」

「とりあえず、今言っとけ」

「妖精さんたち、ありがとう。ちゃんと聞こえたかな」

「分からん。風のエレメンタルじゃったら、エルフ様に聞け。土ならドワーフ、光なら天使じゃ。火は火竜、水なら人魚、闇なら魔族じゃ」


 じゃあルインに聞こう。土だったらドレイク、闇だったらカジカか。光がライナ姫。火と水は困った。


「もう一個いいか。癒しの魔法って言うのは、誰に聞けばいい」

「エルフ様で、ええじゃろ。オビトは、ケガしても唾つけて治るじゃろ」

「いつもそうしているけど、ひどいな。おれじゃないんだ。サイカに覚えさせたい。カークの奴が、体力有るもんだから先走るんだ。サイカがカークを守るしかないだろ」


「そうか、なら、もっと詳しく話すか。癒しっちゅうのは、水、光、風の魔法にあるぞ。オビトが最初に覚えた毒消しな、実はあれは高等技術じゃ。水の清めの方が単純じゃが、教える者がおらん。光の癒しも強烈じゃぞ。無理やり治すんじゃ。そういう意味じゃと、風魔法は、治癒に当たる。体を活性化させ、自己修復するんじゃ。どうじゃ、とりあえず風がええじゃろ」


「風が気に入った。せっかく覚えたしな。エルフ様に会いたいぞ」


「ふむ、一回、挨拶に行くか。オビトもカジカも、魔石を取るようになったんじゃ。じいちゃんが売りに行くのについてくるか」

「行きたい。カジカもいいんか。カークも」

「ええぞ。じゃあ、今日もがんばれ。本もエルザに見繕って貰わんで、自分で選んでみろ。妖精のことをエルフ様に聞きながら癒しの本を探すんじゃ。難しい本を勧められても買え。エルザさんが、読んでくれる」

「それいいな。いつ行く?」

「サイカに都合を聞け。魔石もいっぱい集めた方がええんじゃないか」

「ちがいない」


 朝日もずいぶん眩しくなった。村の井戸に行って、顔を洗って気合を入れよう。朝、じいちゃんと話すと、なんか元気が出る。

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