初期ステータス
カサッ
おれとカークは、茂みから水飲み場を覗き込んだ。おれたちは、水場から相当離れている。サイカは、単独で、一角ウサギを仕留めるために、前方の茂みにいる。
…水を飲みだしたぞ、やれ
…カーク
ふーーーんわっ
「…鎌イタチ」
サイカは、オーバースローの鎌イタチが得意だ。威力飛距離もそれなりだが、まだ、何度も撃てない。一発勝負だ。
丸い形をした風の塊が、手を離れると、鎌のようになって、一角ウサギに襲い掛かった。
でも、ちょっと高い。
ピッ!
空気の流れが変わったのに、一角ウサギが反応して、警戒のポーズをとった。それは背を伸ばして遠くを見る仕草。
きゅう
パスっと首元に当たって、血が噴き出した。一角ウサギが、こっちを向いていたので、血しぶきがサイカに向かって吹きあがった。その血が、サイカにかかる訳じゃないけど、サイカが青ざめている。でも、水場を汚さなかったのはナイス。
ザバッ
「やったな」
カーク!
おれたちは、サイカに近寄って労った。おれが両手を取って、カークが、サイカの顔に頭を摺り寄せた。
「う、うん。なんか凄いことになってない」
「こっちも生きるためだから仕方ないよ」
「チヌキヲ、イッショニ、シタト、オモオ」
頭がプランプランしているのをカークとおれが、水場から離れたところで、枝に吊り下げた。本当は、本人にやらせたいけど、急ぐことでもない。
「これで、スライム十六匹。一角ウサギ一匹だろ。最高記録じゃないか」
「オビトは、スライム七匹でよかったの」
「いいって。それより、サキに、それ見せなよ。おれも、カイのあんちゃんに、紫スライムの話を聞く。たぶん、一角ウサギを三匹は捕まえて来いって言われると思うけど。でも、毒を持ったスライムの話は、絶対してくれると思う」
「ヤッタ!」
「やったね」
おれたちは順調に、腕をあげている。
おれは、前の世界に転生した時に、自分のもそうだが、他人のステータスを見る能力が備わっていた。それが、今世でも失われていなかった。だから、数値でも成長を実感している。
前の世界は、ステータスが見れるのは当たり前だった。ところが、この世界で見れるのは自分だけ。前の世界から、こっちの世界に転移させられたので、そう言うの有りなんだろうと思う。
おれを、この世界。ガイアに呼んだのは、プロトンドラゴンの側近中の側近。プロトンドラゴンが、じいと呼んでいた老エルフのグリーン。相当高齢だったように見受けたけど、エルフの寿命だとどうなのだろう。あれから三〇〇年。生きていたら会いたいものだ。
「実は、母さんが、昨日おれが獲って来たコッコのタマゴで、クッキーを焼いてくれたんだ。ちょっとしかないけど、一角ウサギを倒した祝杯をこれで上げないか」
「嬉しい」
「オレ、カラダオオキイ」
「じゃあ、1:1:3枚でどうだ。これで全部だぞ」
「ヤッタ!」
「現金な奴だ」
二人にクッキーを食べさせて、ステータスを見た。
ステータスオープンと、言って、右人差し指をトントン〈ダブルクリック〉すれば、大きな画面が出てくる。わざわざ声を出さなくていいがダブルクリックは、避けられない。
「カークは、すぐなくなっちゃうから、まず二枚な。そらからはい、サイカ」
サイカというと、サイカのパラメーターが、表示される。自分以外のは、相手を見ながら、名前を言わないと出てこない。わざわざ声を出さないでもいいが、目が合う方がよりステータス情報が、詳しくなる。
サイカ 人族 召喚士
Lv:2
HP:12
MP:12
SP:12
攻撃:5
防御:2
魔力:3
速さ:8
属性:風
スキル
風障壁
称号
なし
おっ、レベル2になってる。保存っと
「もう一枚食うだろ、カーク」
カーク 恐竜族 召喚獣
Lv:5
HP:152
MP:152
SP:152
攻撃:25
防御:32
魔力:16
速さ:42
属性:風
スキル
風障壁 脱兎
称号
太古の記憶を受け継ぎし者
これで0歳だもんな。恐竜族って言うのは、成長が早いな。これも保存っと
おれは、二人のステータスを見て、こいつらは、おれのパートナーになれると確信した。サイカは、人族で、体力も魔力もない。だけど、すばしっこさの伸びがすごい。レベル1の時でさえ4あった。今は倍の8だ。カークは恐竜族だけあって、成長スピードが半端ない。その上ベースステータスも、元々異常に有った。
サイカは、カークの頭脳だ。カークがサイカを守れるようになると、とても強力なコンビが出来上がる。サイカには、魔物攻略とステータス回復を中心に覚えさせる。カークが攻撃。
おれのステータスは、変わっている。前のジョブが、ドラゴンスレーヤー。そして今のジョブが、その真反対の竜騎士。ステータス的には、ドラゴンスレーヤーの剣、技、体力スキルに、魔法が加わった構成で、竜騎士は、ドラゴンスレーヤーの上位職と言える。そして、おれは、ドラゴンスレーヤーのスキルを全部引き継いで竜騎士になっていた。
だから、魔法使いだけをあげていれば、レベルは、うなぎ登り。おれが、魔法使い宣言した理由はここに有る。その上、恐竜族並みの成長速度。パートナーと一緒に成長したいという望みがあるから、全然急いでいないんだけど、現実はこれだ。
オビト 人族 竜騎士
Lv:8
HP:256
MP:256
SP:256
攻撃:63
防御:71
魔力:9974
速さ:77
属性:風
スキル
風障壁 視覚強化 聴覚強化 嗅覚強化 鋭気功、硬気功 剛気功 鷹の目 ウサギの耳 犬の鼻 能力向上 筋力強靭 四肢硬化 加速 倍加速 超加速 毒耐性 マヒ耐性 痛み無効化 鑑定 賢者 六属性耐性 合成魔法・・・etc
称号
時空を渡りし者 母姉の生命を受けし者 森羅万象を解く者 ドラゴンスレーヤー 天使の祝福を受けし者
ドラゴンスレーヤーだった前の世界では、レベルは、99まで、ステータスも999でカンストだった。ところが、この恐竜世界では、レベルは、999まで、ステータスは、99999でカンスト。人族を超越した亜人間の寿命は1000歳。ドラゴン族に至っては、1万年歳。人の寿命では、到底到達できないステータスになる。更にドラゴンのレベルは、これの比ではない。
だから、この世界は面白い。人族は、99歳と短命な分、成長速度が速い。これから面白くなるところだ。
おれのステータスの中で、MPが異常に多いこと以外で、もう一つ気になることがある。
属性、つまりエレメンタルの詳細情報を見ると
光:255
火:268
風:311
水:231
土:283
闇:307
属性レベルが異常に高いことだ。風に次いで、闇の属性レベルが高い。更に闇魔法の詳細を見ると、しっかり消去魔法が載っている。ちなみにサイカたちは、風以外全部一桁。一番修業した風が代表で表示されている。いずれにしてもおれの属性レベルが高い。これも、天使の祝福の賜物か。一度ライナ姫に会わないといけないだろう。
ライナ姫は天使族になったと言っても元々は竜族。長命なはずだ。会って、自分がどうなったのか聞きたい。
おれたちパーティの良いところは、みんな攻防魔のバランスがいいことだ。これは、レベルが低いと雑魚キャラ確定だが、レベルが上がると、前衛とか後衛とか考えなくていいので、2トップで行ける強みになると思うんだ。おれのレベルが異常に早く上がるのは間違いなさそうなので、役割もそれなりになるだろう。楽しみだ。
「じゃあ今日は、ここまでかな」
「そうね、また明日」
「マタ、アシタナ」
おれたちは、ブンブン手を振って別れた。