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ホーリーノヴァ  作者: 虎キリン
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プロローグ

「勇者様、勇者様」


「違う。おれは、ドラゴンスレーヤーだ」


「おお、勇者様が気づかれた」


「おれはドラゴンスレーヤーだと言っただろ。イテッ、頭がズキズキする」


 周りを見回すと、そこは、魔法陣の中。魔導士や、剣士がいる馴染みの世界。


 さっきまで、野宿していたはずだ。チッ、また呼び出しか。


「それで、何の用だ」


「魔王に捕らわれた姫を救出してほしいのです。姫は、我々の希望の光なのです」


 老エルフが、ここを仕切っているようだ。それにしても、腰が低い。その年だと、賢者級の知恵を持った森人じゃないのか。


「姫だと?そう言うのは、勇者様にやってもらえ。おれの出る幕じゃない」


「あなた様は、凄腕のドラゴンスレーヤー。あなた様なら、姫を救出できます。姫を誘拐して閉じ込めているのは、タイフーンドラゴンです」


「ああ、それなら、おれの仕事だ。それで、何匹倒せばいい」


 強力な竜は、雑魚竜を従えているものだ。


「倒すですと!頼もしい。敵は1万でございます」


「何言ってる。ドラゴンなんって、いても1匹。それに、いてもワイバーンなんかの下っ端が、数体いるだけだろ」


「それは、あなた様の世界。ここは、ドラゴンの世界でございます」


 さっきから気になっていたので、もう一度あたりを見回した。オレを呼んだのはエルフのじじいだ。エルフは、深い森に棲んでいる。それにしては、巨木が多いなと思っていた。まさか、その巨木が、風もないのに揺れている。


 そこに、ぬっと黄金のドラゴンが、頭をおれの前に持ってきた。おれは、とっさに、剣を身構えた。


「済まぬ。娘を救ってくれ」

「プロトンドラゴン様ですじゃ」


 口々に、巨木が、「姫を救ってくれ」「頼む姫様を」と、叫び出した。満月の明るい夜。おびただしい恐竜が、この森の中で雄たけびを上げた。





 恐竜の雄たけびは、死を連想させる。


「落ち着け、落ち着けって。お前ら、そんなにいて、タイフーンドラゴンに敵わないのか」


「相手は、魔王。並大抵の戦いでは済まぬ。我らが戦うと星を滅ぼしかねぬ。さあ助けに行こう。じいの秘策がある」


「待て待て、その秘策とやらも含めて全部聞かせろ」


 おれは、頭をおれに接するばかりに向けているプロトンドラゴンに、両手を出して落ち着けとオーバーアクションした。おれは、こいつ1匹でも苦戦しそうだ。


「我は、光の竜。奴は、台風竜。娘を娶って、光は無理でも、雷の力を得て、勢力を伸ばそうとしている」


「魔王は、わしらを虫けらのように扱いますじゃ。ライナ姫様は、そんな男に力を貸す気はありません」


「彼奴の求婚は、我がきっぱり断ったのだ。だが、暴挙に出よった。まさか娘を拉致するとは。さっきも言ったように我と彼奴が戦えば星が滅びかねぬ。出来れば戦争を避けたい。我が胸中察してくれ」


 ドラゴンスレーヤーが、ドラゴンに頼まれてもな


「それで、作戦と言うのは?」


「我が秘術で、姫様を天使に変えますじゃ。そうすれば、拘束は、意味をなさなくなり、いくら魔王が求婚しても力の譲渡は出来なくなります。ところが、魔王の結界が強くて、あと一歩のところで術が発動せんのです」


「わしの額を見ろ。第三の目、龍玉があるだろう。娘にもある。それに、人族が、口づけすれば、術が完成する。だが、娘が捕まっている魔王城は、ドラゴンを倒せるぐらい強くないと、娘に、到底到達できぬ」


「それで、おれか」


「あなた様ほどのドラゴンスレーヤーが、召喚に応じてくださったのです。召喚に応じず仕事を拒否することもできましたでしょうに」


「おれは、仕事を断ったことが無い。だが、そのタイフーンドラゴンは、姫さんに相当執着しているのだろう。やはり戦いは避けられないんじゃないか」


「執着していますのは、魔王だけでございます。姫の救出とは別に、魔王を倒すのをお願いしたく存じます」


「正当なドラゴンスレーヤーの仕事だ。それで、正直に聞く。オレを見てくれ。タイフーンドラゴンに勝てると思うか?」


「それは・・」

「爺、我が話そう。まず無理だ。彼奴は、我より強い。娘を救出しただけでも報酬は出す。だが、奴を倒してくれたなら、戦争も回避できる。報酬は、娘救出の金1万枚に付け加えてアンドバリの指輪を出そう。それでどうだ。財産が増す指輪だぞ」


「その話、承った。だが、おれのやり方でやる。竜の共は、無しだ」


 おれは、今まで十分仕事をしてきた。ここいらで、一財産当てて、のんびりと余生を過ごしたい。アンドバリの指輪は、向こうから材産がやってくる指輪だ。ここは、死ぬ気で無茶をするしかない。


 オレが仕事を受けたことで、大多数の恐竜が、雄たけびを上げている。恐竜の世界のドラゴンスレーヤーか。因果な商売を選んだものだ。夜空を見上げると、知らない星々。えらいところに召喚されたと思った。

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