表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

三つ


「接客のときには、笑顔を忘れてはいけないよ。お前は可愛いんだから、お前は笑顔が似合うんだから、それを忘れないようにね」


 そんなお兄ちゃんの言葉があったから、どんなときでも、笑顔を浮かべて僕は店頭に立った。

 ネットとかでも噂になって来たし、女性客も増えてきたし、これがお兄ちゃんの目的だったのだろうから、愛想を振り撒いて接客を行う。


 古くからのお客様が、批判的に思っていることは僕にもわかった。

 つまりお兄ちゃんにわかっていないはずがないのだけれど、どうするんだろうと思っていたら、何も考えていないはずはなかった。

 何をしたのだかは教えてもらえないけれど、一気に減ったのである。


 はぐらかされるか、「お話をして、誠意を伝えたんだよ」と笑顔で告げられるかだった。

 表情には一切の疲れさえも見えない。

 それなのに、何をどう言えようか。


 もう店のなくなる心配はなくなったことだろうけれど、こうなっては、お兄ちゃんをトップに立ってもらいたい。

 それが間違えなく正しいことであると、僕は強く信じていた。

 お兄ちゃんしかいない、僕の中でそれは事実だった。


「いらっしゃいませー」

「あっ、すみませ~ん、一緒に写真とか撮ってもらっちゃってもいいですか~?」

「構いませんよ」

 商品ではなく写真を撮るために来ているような女性もいたが、僕は笑顔で全てに対応した。

 これがお兄ちゃんの教えを守ることだ。


「いらっしゃいませー」

「めっちゃ美味しそうだし、めっちゃ可愛いですね。あの社長さんが新商品とかって考えているんですかー?」

「何それ! 可愛さ爆発じゃないのよ~」

 回答に困るけれど、笑顔は忘れない。

「そうですね。兄が基本的には原案を描いています」

 大体何を言ったところで、聞いていやしないのだけれど、笑顔で答えるということが大事なのだと僕は胸に刻んでいた。


 僕が何を思うかとか、僕がどうあるだとかではなく、お兄ちゃんの指示に疑問を持たずに従うことが一番なんだ。

 だから、僕の判断が求められるようなことって困るし、勝手なことは言えないんだよね。

 パパのためにもお兄ちゃんのためにも、一生懸命働かなくっちゃな。


「日本一流行っている店にしよう。老若男女受け入れられるようにして、かつ、高級感と伝統も守ったままにしたいね。見た目重視なところと高級ブームとがあるから、売りようによっては難しいものでもないだろう」

「鎌倉制覇はすぐそこですもんね! 東京からお越しのお客様も多いですし、なんと、大阪の方からわざわざお越しのお客様もいたのですよ。お兄ちゃんの力があれば楽勝ですっ!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ