第6話
模擬戦開始
地下にある天井の高いだだっ広い空間にやってきた四人は、勇司の指示により思い思いにストレッチを始めていた。陵司は入念に足首回りをほぐし、雹は高い身長のせいで負担のかかる腰をゆっくり回す。黒いローブに足首まですっぽり身を包んだ明香は軽く首を左右に曲げるだけの動作を見せ、勇司は一人訓練室に備え付けの器具を使って全身をくまなくほぐしていた。
「さてっ、やるか。どっちからやる?相手は俺だよ。」
すでにストレッチで少し汗ばんでいる勇司が二人を見ると、雹の背中が陵司によって押され思わず勢い良く前に出てしまう。
「おっ、雹からか。やる気があって何より何より。そういや久しぶりに特技を見せてもらおうかな。好きな物使っていいぞー。」
少しだけ恨めしそうに陵司を見つめた雹ではあるが、不安そうな表情を顕にしながらも特殊警棒を手に取る。そして律儀に深く一礼すると特殊警棒を伸ばし構えていた。
「もう、陵君は強引なんだから・・・。じゃあ勇司オジサンいきますっ。」
「ここでオジサンは止めてくれよ、一応班長なんでな。じゃあ手加減無しでこいっ。」
「はいっ、班長!」
向かい合う二人の様子を見ていた明香は、イマイチ似合っていないロングコートのまま腕を組んでジッと模擬戦を見つめる陵司に尋ねる。
「攻撃出来るのあの子は?雹君は優しいからね。」
「問題ねえよ、本気で殴る事は出来ないだろうけどな。それでも手加減したとしても・・・、雹は強いよ。そして無闇に素直だ。」
勇司からの言葉に素直に従い全力でいく事を決めた雹は、持っている特殊警棒と履いている靴に自らの特技をのせていた。
【付喪神・警棒】
【付喪神・革靴】
特技によって雹の身につけている物が意思を持ち、そして持ち主の意思に沿うように動き出す。意思を持った革靴によって雹のスピードが上がり、一気に勇司へ迫る。
そのスピードは余裕を持って構えていた勇司の予想を軽く超え、慌てて回避行動に移っていく。
(あれっ?これ貰ったら模擬戦と人生が終わるやつだっ。)
長年特局の現場で修羅場をくぐり抜けてきた勇司の身体は勝手に動き、横に転がって鋭く振られる特殊警棒を避ける。そしてすぐに次の攻撃に備え立ち上がる勇司に、雹は尊敬の眼差しを向けていた。
「班長すごいですっ、じゃあ次いきます!」
「おっ、おう。」
身体と心に冷や汗をたっぷりかきながら、勇司は手に銀色の煙草入れを出現させて白い煙草を一本取り出す。
(これもしかしてもう教える事ないってやつじゃねえか?前雹の特技見た時はたしか傘に特技掛けて、雨降ったら勝手にひらくってキャッキャしてたからな。怖いな年月・・・。)
【付喪神】という特技によって有利に模擬戦を進める雹に対し、ようやく勇司は特技を使う準備が整う。
ここから班長の意地と、雹の成長を見せつける模擬戦が始まるのであった。
少し短めの話が続きます。この話に慣れてきたらもう少しは長くなるかなー。




