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第43話

尾行


タイヤを軋ませながらカーブを勢い良く曲がるワンボックスは、サイレンと赤色灯で周囲に注意喚起を促しながらスピードを上げていく。

横転してもおかしくないスピードで高い車高のワンボックスを操る雹は、目的地付近まで一気に走らせていた。


「もう少しのはずだよー。」


「それにしたってよくこんな短時間で容疑者見つけたよな。こっちは数が足りねえよ。」


「たしかに特局の人手不足はいつもの事ね、今は確か全部で30班いるかいないかって数のはずよ。それよりも警察は容疑者を見つけてもそのまま泳がしてるらしいから、見つけてもこのまま素通りするよ。雹、サイレン消して。」


明香の指示に従いサイレンと赤色灯を消すとワンボックスは速度を落とし、他の走行している車両に紛れ込んでいく。そのまましばらく走ると歩道を歩く目立つ二人組が目に入ってきていた。


「ありゃ案外とすぐ見つかるはずだわな。」


呟く陵司の言う通り歩いているだけのはずの小原と岩切はその体躯のせいか、妙に目につく存在感を放っていた。

小原はそう高くない身長ではあるが、トレーニングウェア越しでも分かるほど肩幅も広く、そして厚みのある肉体をしている。そして岩切は190はあるであろう長身を、ダボつき少し薄汚れたシャツとズボンで包み、少し腰を曲げながら下だけを見て歩いていた。


小原と岩切に視線をやらぬよう注意しながら、三人の乗るワンボックスはスピードを変えず走り去っていく。そのまま距離を取り交差点を曲がると、スピードを落とし陵司と明香はワンボックスから素早く降りていた。


「雹、任せたわよ。」


「はい、じゃあ近くを走らせときますっ。」


雹は一人ワンボックスを走らせていくと、明香と陵司は二人並んで歩き出す。

しかしそこで、陵司はとある重大な問題に気付いてしまう。


「なあ、明香姉。これはちょっとばかし問題ありじゃねえかな?」


「やっぱり気付いた?」


「そりゃ気付くだろ。黒いローブは黒い癖に目立つなおいっ。そして極め付きはその杖だよっ、杖。目立つわっ!」


「どっちも特注品だからね。ローブは脱ぐわけにはいかないし、杖も何かと必要だしね。とりあえず距離を取るぐらいしか方法はないからそれで行くわ。」


どこか仕立ての良さを感じるスーツを着た陵司と黒いローブで身を包み、身長程ある樫の杖を持つ明香は身を隠しながら、来た道を遠回りしながら戻っていく。

すると想定通り小原と岩切の後ろ姿を発見し、かなり距離を空けての尾行を開始していた。


どこか目立つ肉体を持つ二人を追う、どこか目立ってしまう服装をする明香とそれに並ぶ陵司。

かなり距離を空けていても、自分よりほんの少しだけ高い位置にある明香の耳元に陵司は小声で話し掛ける。


「なあ、盗んだのは現金だったよな?それどこやったんだ?」


「それなのよね。それが今泳がせている一番の理由ね。」


「今なんであんなふうに歩いてるのかも謎だけどな。」


「たしかに周囲の様子を探るにしても少し妙な動きね。」


疑問に思いながらも慎重に尾行を続けていくと、対象の二人は徐々に襲撃現場へと戻ってきている事に気付く。それでも慎重に尾行を続けていくと、襲撃現場からほんの三百メートルほどの距離しか離れていない広いコインパーキングの中で突然立ち止まっていた。


陵司と明香は気付かれぬよう、離れた場所からその動向を見ているが、停めてある車に乗る事もなくその場で何かを待っているようであった。


「強盗犯の割りに隠れる事もなく堂々としてやがるな。明香姉、何してんだあれ?」


陵司は腑に落ちないといった表情で先のコインパーキングを見つめると、明香は狙いに気付き隠れることなくコインパーキングに足を向けていた。


「行くよっ、陵。多分見つかってはいないけど、誘われてるみたいね。」


「ほぉー、見つかるのも想定内ってわけか。それは笑えねえ冗談だな。」


コンコンと樫の杖をつきながら歩く明香の横を、童顔に似合わない獰猛な笑みを浮かべた陵司が並び、コインパーキングに入る。


そして四人の視線が交わうと尾行は終わり、いきなりの戦闘が開始されるのであった。



とりあえずの更新です。何か他の話も書きたいと思いながらも、この話は定期的にちゃんと最後まで書ききっていきます。

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