第40話
追走
突然の車内放送で呼ばれた三人が運転席に行くと、ベテランの運転士が慌てた様子で伝えてくる。
「後ろから他の車両が。もう距離は二百メートルないかもしれませんっ!」
三人は後ろを見ようとするが、なかなか後ろは見えずここから確認する事は出来ない。
運転士は緩いカーブに差し掛かった際、その姿がチラッと見え三人を呼んだのであった。
「とにかく最後尾まで行くよっ!」
明香の指示で陵司と雹はすぐに動くがなかなか最後尾は遠く、そして雹はある事が気になっていた。
「この新幹線に追いつくなんて凄いねー。今423キロなのに。」
各車両には新型新幹線のスピードを実感してもらうためにデジタルメーターが取り付けられており、今もスピードは上下している。
「たしかにな、つうことはそーゆう特技持ちって事か。それと列車なんてどこから持ってきたんだっつう話だよな。」
その陵司の言葉を聞き明香は気付いていた。
「多分だけど、後ろに乗ってるのは鉄道会社の人間ね。確かに簡単に盗める物じゃないし、ATSも切ってないとこんな事出来ないだろうしね。」
三人は座席の間を急ぎ最後尾の車両に到着すると、ようやく後方を確認する事が出来る。
そこには、既に新幹線までの距離が百メートルを切っている見るからに古い型の車両が猛スピードで追いかけてきていた。
「あれば寝台特急『プロメテウス』ね。なんとなく犯人の目的が分かってきたわ。だけどこれ、終着駅は大変な事になってるわよ多分。この二本が並んでるんだからしょうがないと言えばしょうがないけど。」
一人納得する明香に対し、二人は少し意外そうに明香を見ていた。
「妙に詳しくねえか明香姉?」
「そうだねー、列車好きなんだー。」
そんな二人の言葉にあくまでも真面目な表情で明香は答える。
「これくらいは常識の範囲内よ。たしかこの『大和』が本走行を始めるその前日に『プロメテウス』はラストランを迎えるはず。これも流れってやつね。」
「へーっ。」
「そうなんだー。」
納得の表情を浮かべる陵司と雹ではあるが、そんな鉄道小話を聞いてる状況では無いことに二人は気付いていた。
「ってそんな場合じゃねえだろ。こっからどうすんだ?もうかなり近えぞ。」
「このままじゃぶつかっちゃうかも。」
後方から寝台特急は数メートル後方にまで来ており、運転士の姿も確認出来る程の距離であった。
そこには車掌の制服を着た男が運転しており、素早く明香は情報端末で写真を撮り特局へと送る。すぐに身元は照合され、容疑者の情報が送られてきていた。
「容疑者は大井 剛、30歳。鉄道会社勤務、勤務態度に問題なしと書いてはあるけど、今は大有りみたいね。特技は【暴走特急】、プロレスラーのあだ名みたいな特技ね。」
「それであの古そうな車体でも四百キロ出るってわけか。凄えな。」
「だけどあの列車悪い音出してるよー。」
寝台特急の古い車体はそのスピードに耐えれるような造りはしていないが、大井の特技によって強引に重い車体を動かし元々ガタのきていた車体は暴走を続け、遂に追いついていた。
新幹線は強い衝撃を受けて揺れ、立っていた三人はバランスを崩す。寝台特急は新幹線の後部に追突し、それでもまだ加速を続ける。座席に掴まり姿勢を立て直す陵司は終点も近いこの場所で、後ろからぶつかってくる寝台特急の狙いに気付いていた。
「こりゃ、結構やばいぞっ。ぶつけられて脱線するか、線路の終わりまで押し出されて脱線するかの二択だな。どーする明香姉?」
「決まってるでしょ、プロメテウスを止めてそして大和を無事車庫に戻すよ。出来るだけどちらも走れる状態でね。ラストランも近いし行くよっ。」
どこか鉄道に愛情を感じる明香の発言に、二人は何かを言いたくなるものの発言自体は真っ当であるので黙って頷くが、そこに更なる衝撃が襲っていた。
再び衝突してきた寝台特急を明香は睨み、二人に指示を出す。
陵司と雹はすぐ指示に従い、三人は暴走特急を止めるための策に入るのであった。
やはり鉄道の知識不足が否めません。
ですがボチボチ続きを書いていきます。




