第3話
橋中 陵司
夢を見ていた。幼い頃の自身に起こった忘れられない出来事の夢を。
陵司には物心ついた時から、負けた記憶がないものが一つあった。
決して訓練をしたわけではない。それはセンスの賜物であり、普段から身体を鍛えている賜物であり、小柄な体躯の賜物でもあった。
鍛えた身体でアクロバティックな場所に登り、小柄な身体を活かしてその身を隠す。
陵司が負け無しのもの、それは隠れんぼであった。
夢の中で幼い頃の記憶が蘇る。相手が大人であっても陵司は隠れんぼにおいて一切負けるつもりはなく、実際自分の父親には勝利し雹に至っては百戦百勝を重ねる。
しかしその夢の中では先程まで壇上に立っていた雹の父親である久信との、初めての隠れんぼを行った時の記憶であった。
高山家の家は少し歴史を感じるほどに古く、そして広い。そのような環境で行う隠れんぼはどうしようもなく楽しく、心躍らせながら隠れんぼに雹と二人興じていく。
しかしその日は珍しく雹の父親である久信が早く帰ってくると、鬼として遊んでくれる事になった。
自信満々で隠れる陵司、あっさり見つかる雹、そして間髪入れず冷蔵庫の上にしっかり隠れていた陵司も見つかってしまう。あまりにも簡単に見つかり、その後何度挑んでもクールに挑戦を弾き返される。
その後謝りつつも仕事に戻ると言い、立ち去るロングコートの後ろ姿を勇司は憧れの眼差しで見つめていた。
「なあ雹、久信オジサンカッコイイな。」
「そうかなー?ボクは勇司オジサンのほうが優しいし遊んでくれるから好きー。」
「あの長い服どこで売ってるんだろ?」
「知らないよー。じゃあ次ボク隠れるねっ。」
二人は再び勝敗の分かっている隠れんぼに興じ、家の中を走り回っていく。
未だ陵司は醒めない夢の中、飽きることなく隠れんぼを続けるのであった。
とりあえず主人公①の紹介のお話しです。次はもう一人を書く予定です。




