第33話
不穏な逮捕劇
決して武器とは呼べない庭ぼうきを持つ明香とスタン警棒を持つ雹は二人で四体の怪物を相手取る。
一見鈍重そうにも見える怪物の動きではあるが、巨大な身体は単純な動きでも相応の破壊力があった。
長身から振り下ろしてきたツギハギだらけの拳を避けた二人は、庭ぼうきとスタン警棒を怪物の顔面に叩きつけるが手応えはあっても全く効いた様子はない。
四体の怪物は連携など気にせず思い思いに突っ込んで攻撃を試みるが、雹の前に出た明香が片手で持った庭ぼうきの中ほどを握り、ほうき一本で攻撃を捌いていく。
手首を打って軌道を変え、更に払い、落とし、打ち上げる。
ほうきを掴まれても慌てる事なくタイミングだけで怪物をほうき越しに投げ、他の怪物に当てるが二体共にすぐ立ち上がってきていた。
(打撃も電撃も堪える様子はないわね。生きているようでも生きてはいないから当然といえば当然だけど。タフなのは嫌いじゃないけど、こうゆうのは勘弁ね。)
唸るような低い声を上げながら腕を伸ばす怪物を、黒いローブをフワリと舞わせながら飛び、強烈な一撃を脳天に見舞い着地する。そこに迫る他の怪物の攻撃をしゃがんで避け、ほうきを伸ばしたまま勢い良く回転すると怪物の足元を薙ぎ払い地面に転がす。
すると雹がタイミングを見計らったかのように特技を使っていた。
【付喪神・革靴】
倒れた怪物の顔面へ上から革靴を一気に踏み下ろす。地面を踏み抜くような一撃に肉が潰れる感触が足に伝わるが、それでも怪物はすぐに動きを見せ顔面の上にある足に手を伸ばしてくる。
慌てて雹は回避に動き、革靴のおかげで身軽に後方宙返りで伸びてくる手を躱すと、革靴でも音も立てず着地していた。
「効いてないやー。どうしよう陵君?」
怪物も見ずに革靴によるステップだけで回避を続けながら、雹は困ったような顔で陵司の方を見つめてくる。
すると陵司はロングコートの中をゴソゴソと探し、ようやく見つけた百円ライターを投げ渡していた。
「これなんてどうだ?怪物にはやっぱり火だろ。」
「うーん?とりあえずやってみるよっ。」
しかし特技を使おうとする雹をまだ早いと明香が止め、ローブの中から黄色の液体の入った試験管を四本取り出し、指の間に挟んで持つ。
「ちょうどいいのがあるからこれのあとに使いなさい。本当はこれ胃腸薬にと思って作ったんだけどね。」
試験管を四本一気に放り投げると、ガードする気などない怪物の顔面に当たり試験管が割れて中の液体をまともにかぶる。
雹はタイミングよくライターに火をつけるとそのまま特技を使っていた。
【付喪神・ライター】
オイルを凄まじい勢いで消費しながら伸びた炎が太く長く伸び、まるで炎の誘導棒に変貌する。
更に革靴に掛かったままの特技で鋭い出足で前に出るとその勢いのままに飛び、雹は炎の誘導棒を真一文字に振ると四体全ての怪物の顔面が火だるまとなり、着地と共にライターはオイル切れで誘導棒は消え去っていた。
声にならない呻き声を上げながら炎に包まれ苦しむ怪物が、倒れ込んでいく。
自らが作り出した怪物が倒される様子を表情を変えずに見ていた土屋ではあるが、その横を金色と銀色の甲冑が挟み後ろには陵司が立っていた。
すると土屋はクルリと振り返り、ずっと眼にあった暗い相貌が消えると楽しげな笑みを浮かべる。
「楽しいっ、特技を使うというのは楽しい物なんだな。この年になってそれがようやく分かるなんて、残念だよっ。」
陵司の目には、少し癖っ毛気味で目を細めて笑う小柄な土屋が天真爛漫に笑い、両手を差し出す姿が見えていた。
手錠を掛けられてもその笑顔は崩れず、警察に引き渡されても後部座席にも自ら乗り込み、笑顔で特局の三人に軽く手を振り連行されていく。
陵司はその笑顔が目に焼き付き、忘れる事の出来ない事件と容疑者になるのであった。
なんとか個人的には予定通り更新です。
ボチボチ更新の速度を上げていければいいなー。




