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第30話

不穏な空気


忙しそうに特技を掛ける雹は様々な物と声を交わしていく。使われなくなった公衆電話、放置されている古タイヤ、朽ちかけている看板などなるべく古い物に特技を掛け、簡単な言葉を交わす。


律儀に声を掛けては頭を下げ大男の向かった方向を掴むと、その道をゆっくり進んでいく。

物への聞き込みを続ける雹に陵司が話しかける。


「なあ、なんで古いのばっかりに声掛けるんだ?」


「えっとねー、新しいのはおしゃべり苦手なんだよ。付喪神だからねー。」


「そうか付喪神だもんな。」


「そうだよー。」


分かったようなそれでもやはり分かっていないような会話をしながら角を曲がり、更に進むと人気は徐々になくなっていきそして雹は足を止めていた。


「多分ここかな?」


「ほう。なんか、っぽい場所じゃねえかよ。」


二人の目の前には今はもう使われていないであろう廃工場があり、壊された扉の鍵が見える。

ゆっくり最後尾をついてきていた明香が鍵を確認すると、壊された傷はまだ新しい。


「間違いなさそうね。じゃあ二人共準備はいい?」


頷く二人を見ると明香は扉に手を掛け一気に開く。二人が中へと飛び込んでいくと、廃工場内は思わず顔をしかめてしまう程、特有の臭いが充満しているがそこに動いている人影はなかった。


「こりゃ何の臭いだ?ってあれだな。」


「嫌いな臭いだよー。」


工場内にはすえたような臭いが立ち込め、死の臭いを三人は感じる。

そして誰もいない事に一応な安堵をするが、工場内の全貌を掴むとその異様な雰囲気に飲まれかける。


これまで盗まれたであろう遺体が三体纏めて作業台に並べてあり、更にその横には無造作に遺体が床に放られ、目を背けたくなる光景が広がっていた。


「だいぶ異常だなこりゃ。」


「・・・うん。」


少し動揺を見せる二人に明香は落ち着いた声を掛ける。


「しっかりしなさい二人共。外に出て身を隠して容疑者を待つから、すぐに準備。ここへ入った事が悟られないようにね。」


すると二人は表情から不安をなんとか隠し、すぐに指示に従う。


「了解、急ぐぞ雹。」


「うんっ、そうだね。」


三人は工場内の痕跡を消し、警戒しながら外に出て行く。

廃工場の入り口が見える場所に身を隠す場所を探し出し、三人は息を潜めて容疑者が来るのを待ち構えるのであった。



なかなか短めですが、とりあえずの更新です。

一応、肝心要の容疑者ですので気長にお付き合いください。

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