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第26話

探す男達


陵司と雹は同じ班であるが故に非番の日はほぼ全て一緒であった。

二人は休日を使い、陵司のリクエストにより少し遠征し車の展示場の前に立っていた。


「車が一杯だねー。」


「だな。それにしたって付き合わせて悪いな雹。」


「いいよいいよー。ボクは買い物に付いてくの好きだし。」


「それにしたってこう大量にあると、どれ見るのかも悩むよな。」


「陵君が悩むなんて珍しいねー。」


その場所は何社もの中古車販売業者が集まる展示場であり、見渡す限り様々な中古車がメーカー車種関係なくズラリと並んでいる。


「そりゃこれだけあると多少は悩むだろ。」


「当たり前だよねー。ボクはその黄色と紫のチェックの車とかいいと思うけどな。」


展示場に入った陵司は雹の言葉は耳には届かず、なぜか一台の車へと一直線に足が向かっていた。


「ねえ陵君、待ってよー。そのピンクと緑のストライプカーもいいのにー。」


慌てて雹は追いかけるが、急に止まった陵司の背にぶつかる。陵司は元は白かったであろう値札もつけられていない、くすんだ色の360㏄の軽自動車の前で止まっていた。

フロントフェンダーにつけられたサイドミラー、最低限の内装、幅も長さも最近見る事のできないサイズの車であった。


「・・・これだな。」


「なになにー?可愛い車サンだねー。・・・もっ、もう決まったの?」


「こういうのは直感勝負だからなっ。」


興味深く眺める陵司に作業着姿の人の良さそうな店員が話しかけてくる。


「兄ちゃん、悪いけどそれは売り物じゃないんだよ。どうやってもエンジン掛からなくてな。こっちなんてどうだい?年式と走行距離だけでも相当に違うぜ。」


その向かいの車を店員は指差すが、陵司は古い車から目が離せないでいた。


「・・・なあ、もしエンジン掛けられたら売ってくれるか?」


陵司からの問いかけに店員は少しだけ考えるが、すぐに答えを出す。


「いいぞ。もし掛けられたらそっちの言い値で売ってやるよっ。」


その言葉にしめたという気持ちを表に出さないよう心でガッツポーズをしながら、陵司は鍵を受け取っていた。

そして受け取った鍵は静かにリレーされ、雹に手渡される。


「えっ、僕?」


「兄ちゃんがやるんじゃないのか?まあ、どっちでもいいけどな。」


戸惑う雹と店員を余所に陵司は助手席にスッと乗り込み、手招きする。

呼ばれた雹は窮屈そうに運転席へ乗り込むと、鍵穴を狭そうに探し鍵を差し込んでいた。


「雹、頼んだ。」


「いいけど、ちゃんとお金払わなきゃダメだからねー。」


【付喪神・車】


特技と共に鍵を捻った途端エンジンに火が入り、製造された当時より生きのいいエンジン音が吹き上がる。


驚く店員ではあるが、その時展示場の隅から怒号が聞こえてきたいた。


「ドロボウ、車泥棒だっ!」


展示場から猛スピードで青いスポーツカーが走り出し、何人かが追い掛ける。更に驚きを増したように走り去るスポーツカーを眺めていた店員に、手動でクルクルと回し窓を開けた陵司がIDカードを見せていた。


「特局です、捜索にご協力を。少しの間これ借ります。」


無言で少し躊躇いながら頷く店員を確認すると、小さな車体は急加速で展示場を走り抜けていく。

盗まれた青いスポーツカーを追い掛け、小型の軽自動車は付喪神のお陰で限界以上のスピードを出しながら追跡を始めるのであった。



なんとなく乗り物を登場させたかったので、事件というよりはお買い物の話です。

乗り物は小さいほうが話を動かしやすい気がしたので、小型な軽自動車となりました。

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