四方山話その2
火事場の男
燃えるアパートに近付く勇司は周囲を見ながら入れそうな場所を探すが、火の回りは激しく階段は崩れ落ちている。
(全部屋見て回るってのは無理か。まずはこれだな。)
立ち込める煙の中その煙に向かい勇司は特技を使っていた。
【煙操作・人形】
周囲にいくらでもある黒く悪い色をした煙を人形に纏めると、アパートの部屋数分の煙人形を作り出していた。煙人形は指示を受けると炎と煙の中に突っ込み、散り散りに捜索を始める。
炎を恐れずドアを素通りし、部屋の中を捜索する煙人形からの報告を待つ勇司は救助の準備をするが、それは煙草入れから新たな煙草を取り出し煙草を一本咥えるだけであった。
走って帰ってくる煙人形達から身振り手振りで報告を受けた勇司は、身振り手振りで返事を返すと急いで走り出す。
「火を怖がってちゃ、こんな特技使ってられないよなと。」
舞う火の粉で咥えていた銀色に輝く煙草に火をつけ、煙を一気に吐き出し自らの身体に纏わせる。
【真銀煙・甲冑】
煙は銀色に輝く全身甲冑へと変わり、一階の角部屋へ勇司は走ると扉に身体ごとぶつかっていった。
燃える扉をぶち破り転がり入ると内部の炎に飲まれるが、何事もなかったかのように立ち上がる。
炎の中で周囲を見渡す甲冑は、煙人形から報告を受けた狭いアパートの中の風呂場を探していた。
(普通ならこっちら辺はずだよな。んっ?ここか。)
脱衣所まで炎は入り込み足の踏み場もないが、勇司は次の煙草に火をつける。
【銀煙・壁】
吐き出された煙は脱衣所を覆うように広がり炎を押さえ込む。酸素を欠乏させ脱衣所を消火すると、煙を霧散させ勇司は風呂場の前に立っていた。
「さてっ、無事だといいんだけどな。」
風呂場の扉を開くと、風呂場の中から赤ん坊を抱き洗面器を振りかぶった女性がおり、突然現れた甲冑に思い切り水を浴びせる。
水びたしになった甲冑の面を上げ、驚く女性と泣く赤ん坊に勇司は声を掛けていた。
「こんな格好ですが消防です。よかったらご一緒に脱出でも?」
恐る恐る頷く女性へ更に勇司は続ける。
「身体に害はないので安心してください。ではここから出ますよ。」
勇司は興奮させぬよう落ち着いた喋り方で話すと、新たな煙草を取り出し火をつけるのであった。
炎によって焼け落ちるアパートから二つの人影が出てくる。
それは小さな甲冑を抱いた2体の甲冑であり、無事救助は成功していた。
赤ん坊を抱いた母親に礼を言われながら、原付きに跨がる甲冑は軽く手を上げて走り去っていく。
しかしふと勇司はある事に気付き、ブレーキを掛け原付きを止めていた。
「甲冑ってヘルメットか?いかん、ノーヘルで捕まるのは問題ありだ。」
慌ててヘルメットを被る勇司は下は甲冑、上はヘルメットで原付きを走らせ、次の現場へ救助に向かうのであった。
とりあえず次回から本編に戻ります。
本編の容疑者の特技に悩んでる間の暇つぶしに書いたお話でした。
だけどまだ次の容疑者考えついてないんだよなー。




