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四方山話その1

火事場な男


消防における特別救助隊から新しく派生した隊がある。それが【特技特別救助遊撃隊】、通称【特特隊】と呼ばれるまだ隊員一人のみの隊であった。


与えられた狭い一室では少し縒れ気味のスーツを着た中年が椅子に座り待ち構えながら、溜息をつく。


「はーっ、なんというか一人か・・・。向いてる職場ではあるんだが、一人だとさすがに一人だよなー。まず名前がとくとく隊ってそれが一番の問題な気がする。」


一人呟く男は特局から無事転職を果たした橋中勇司であり、与えられた仕事は例えるとするのであれば、分かりやすく便利屋であった。

勇司は椅子に腰掛けたまま手狭ではあるが、それでも一人では広すぎる部屋の天井を見つめて考える。


(ここは特局を参考にしていくっつってたけど、一人じゃな。一番の問題は問題が山積み過ぎってとこだが・・・、その前に出番か。)


要請を知らせる連絡音が勇司の携帯から鳴り内容を確かめると、腰を上げスーツ姿のまま一人きりで出動準備し、扉を開く。


ヘルメットをかぶり原付きに跨りながらも、勇司はやはり何かおかしいと気付いていた。


(予算がないと。部屋はあるけど、装備も車も無し。予算を取るには成果を出せって言ってたか。・・・一人だけど。)


甲高いエンジン音を上げながら走っていく原付きが到着した先は、黒煙をモクモクと上げながら崩壊が始まりそうなアパートであった。

先に到着していた消防隊によって消化作業は進められていたが、燃えやすいアパートの材質によって火の勢いが上回りまだまだ鎮火する様子はない。


「中にまだ人がいる可能性ありと、じゃあ急ぐか。」


原付きを適当な場所に止めヘルメットを脱いだ勇司は顔馴染みになりつつある消防士に手を上げ、アパートに近付いていく。


気軽な足取りで火事場に向かう勇司は、火の勢いに少しだけ躊躇いながらもスーツ姿のままアパートに一人、遊撃隊として突入していくのであった。



四方山話なのに、前編です。

後編で終わらせますが、問題としてはこの話では特技全く使ってない事でしょうか。

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