第25話
役割分担その2
荷台に積んである自動販売機の間に落下した陵司と自動販売機を持ち上げた男は、縦回転しながら通り過ぎていったワンボックスを眺めていたが、お互いそのような場合ではないと気付いていた。
自動販売機の間に立つ陵司の後ろでは、トラックの前方にワンボックスは派手な音をたてながら着地し、すぐにバランスを立て直すと素早く走り出す。
細身の少し背の高い男は持ち上げていた自動販売機を道路に投げ捨てると、突然降ってきたサイズ感の小さな陵司を見て、小馬鹿にするように少しだけ笑みを浮かべていた。
(んっ?少々見下してやがるか?だけどそれどころじゃねえ、後ろがやる気だ。)
特技によって周囲を俯瞰で見る事が出来る陵司は、後ろを見ずともワンボックスの動きを視認するとまだ距離があるにも関わらず、対してリーチのない拳を突き出そうとしていた。
一方着地に成功したワンボックスでは雹は悲しそうな表情でハンドルを握り、明香は樫の棒を持ちながら後方を振り返っていた。
「車さんのバンパーが少しだけ削れちゃいました。そういえば前でも大丈夫ですかー?」
「さっきの衝撃でそれだけの被害で済んだの?問題ないよ、前でも横でも後ろでもね。」
「はい、じゃあ行きますっ!」
住宅地まであとわずかと迫ったワンボックスはその場で車体を横に滑らせ、タイヤから焦げ臭いを出しながらトラックの行く手を塞ぐように止まる。
急ブレーキを掛けワンボックスの側面ギリギリで止まったトラックの運転手の目は、スライドドアを開き長い黒髪をなびかせながら降りてくる女性の姿を見ていた。
持っていた樫の棒を握り怪しく微笑む明香は、大きく振りかぶるとフロントガラスに叩きつける。
フロントガラスは粉々に割れ、腕を突っ込み中にいた運転手の襟首を掴むと明香は一気に引きずり出し、地面に転がしていた。
「特局よ。大人しくしなさい。」
IDカードを提示しながら樫の棒を額に突きつける明香に、男は黙って頷くしかなかった。
すると荷台からもう一人の男を肩に抱えた陵司が降りてくる。
「そっちも終わったのかよ。こっちはブレーキのタイミングに合わせて一発だったな。」
荷台での戦闘はブレーキのくるタイミングの分かっていた陵司の拳に向かい、まるで自爆のように男が突っ込んでいきあっさりと終わっていた。
当てた手をプラプラと振りながら、大して重そうにもせず男を楽に担ぐ陵司は明香の指示を仰ぐ。
「この特技だと搬送班呼ばなくても大丈夫みたいだね。二人に手錠しておきなさい。」
肩に担いでいる男を降ろし、明香の指示で二人に手錠を掛けると警察に引き渡し、確保は成功となる。
三人となった26班は上々な滑り出しを見せるのであった。
かなり短めですがキリがいいので更新です。
次の容疑者でも考えながら程よく書いていきます。




