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第22話

自販機泥棒


赤色灯の回る黒いワンボックスのハンドルを握る雹は慣れた様子で一般車両の間を縫うように進め、助手席では陵司が情報端末を見ながら道を指示していく。


すると対向車線からパトカー六台を引き連れたトラックとすれ違い、三人の視線は自然と前方から後方へと向いていた。


「あれだな。」


「あれだよね。」


「あれね。」


荷台に自動販売機を山積みにしたトラックは派手なエンジン音とは裏腹にスピードは出ておらず、Uターンしたワンボックスはあっさりとトラックを追いかけるパトカーの後ろについていた。


「ここからどうしよ、陵君?」


「そりゃやっぱり前にってやつだろ、ここからじゃ手出し出来ねえからな。」


「うん、分かったっ。」


後部座席で無言の肯定を示す明香の顔をバックミラーで確認すると、雹はワンボックスを加速させるべくアクセルを踏み込もうとするが、前を走るトラックに動きがあった。


大量に積まれた荷台の自動販売機の間から細身で少し背の高い男が現れ後方を見ると、おもむろにしゃがみこんでいた。


「何する気だおいっ・・・、ってやけにあっさり持ち上げやがったな。雹、気をつけろよっ!」


「うんっ。」


【付喪神・車】


細い腕で高々と持ち上げた自動販売機を男はまるで重さを感じないかのように、ヒョイっと投げ捨てる。

先頭で追いかけていたパトカーは飛んでくる自動販売機を避けようとハンドルを切るが間に合わず、フロント部分に自動販売機は派手に衝突しパトカーはバランスを失っていた。

横を走るパトカーに追突し、更にそこから巻き込み事故が連鎖していく。


最後尾にいたワンボックスは派手な事故を目の前にしてもスピードを落とすことなく、一直線であった。


「なあ雹、これ大丈夫なのか?」


「知らないよー。車さんにおまかせコースだからね。」


意思を持ったワンボックスは前へ前へと進みパトカーと衝突しそうになるが、それでも前に出ていた。一瞬のブレーキで衝撃を緩和し、その身でバランスを失ったパトカーを受け止めると更に進み事故のド真ん中に陣取る。

事故をその身で収めそして自動販売機を弾き飛ばすと、まだ無事であったパトカー二台と追跡を続けようとするが、無事であった三台はブレーキを掛け停車する。


先程まで前を走っていたはずのトラックが事故に気を取られている間に忽然と姿を消し、追跡していた全員が姿を見失ってしまうのであった。


後部座席から身を乗り出し明香が前を見ながら周囲を見渡す。


「交差点もないし、気を取られたのは一瞬。どこに行ったのかしら?」


姿形の見えなくなったトラックを雹と明香が探す中、陵司は息を一つ吐くと目を瞑り特技を使っていくあった。



三人になってからの初事件は自販機泥棒です。

最初ですしあっさり解決予定なので、次話には終了予定です。

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