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第20話

最後の模擬戦、後編


僅か30センチ先も見る事があやしい濃霧の中、陵司はスッと雹に近付き何かを耳打ちしていた。

頷く雹にロングコートの中から何かを取り出し手渡すと、二人は背中合わせとなり濃霧の中警戒の姿勢をとる。


それなりに広い訓練室の中を気配を消しながらゆっくり移動を続ける勇司は、濃霧に紛れながら煙の動きと煙の中でも大して変わらない視力で二人の動きを確認していた。


(ほーっ、対処としては70点。ここからの動き次第で点数の増減ありってとこだが、少し妙だな。二人共探す仕草すら見せないどころか、陵司にいたっては目を開けてすらいないと。もしかして誘われてるか?)


ゆっくりと大きな円を描くよう慎重に二人の周囲を歩いていくと更に雹までもが目を閉じ、見るという行為を放棄する。

その様子に勇司は更なる警戒を強めるが、模擬戦で自ら仕掛けた故に動かないという選択肢はなかった。


(いつまでもこのままって訳にもな、行くか。この状況・・・、有利なはずなんだがな。)


息を潜め歩き回るのを止めると、狙いを陵司に変えゆっくり前進していく。


その様子を目を閉じている陵司はしっかりとある方法で確認し、後はタイミングだけを計っていた。


(この特技は俺と、そして雹とも相性悪めだったな親父。問題は距離と、あとは雹との連携だがこっちはどうとでもなるか。)


背中合わせのまま濃霧に紛れて近付く仮の敵を索敵したまま、陵司は後ろ手に雹の袖を緩く握る。

そして勇司までの距離がおよそ三メートルといった所で陵司は雹の袖を狙わせる方向へと引き、同時に頭を少しだけ横に傾げていた。


【付喪神・扇子】


陵司の髪を掠めながら振られる雹の扇子によって風が吹き上がり、勇司を中心にした煙の濃霧が吹き飛ばされる。


そして訓練室で丸見えになる中年に対し、首を縦に戻した陵司はロングコートの中から抜いたリボルバーの拳銃をすでに構えていた。


(首を曲げるだけで振った手が当たらないっつうのは少し寂しい身長差ってやつだな。)


躊躇なく陵司は引き金を引くと、勇司の胴体ド真ん中に真っ赤な染料が飛び散る。


ペイント弾が致命傷と言える部位に当たり、模擬戦は陵司と雹の勝利で終わる。しかし敗北しても勇司の表情は晴れやかなものであった。


「いい模擬戦だった、二人共いい局員生活を過ごせよ。」


「ああ。まあ、なるようになるだけだよ。」


「はいっ、僕も頑張ります。」


返事する勝者の二人を置いて勇司は訓練室の扉に近付いていくが、その時重い音を伴いながら扉が開いていく。


そこには少し髪を乱しながら冷たい視線を走らせる黒いローブ姿の明香の姿があった。普段より低く、そしてどこか怒りを押し込めているような声を出す。


「何やら面白そうな事をやっているようですね。私とも御相手願えますか、班長?」


「あっ、明香ちゃん?オジサン少し今模擬戦で負けたばっかりで、いろいろとしんどいんだけども・・・。」


すると明香は勇司の全身を下から上に眺めペイント弾の跡を確認すると、少し悪い魔女の笑顔を浮かべていた。


「そう言われましても。班員全員との模擬戦は慣例行事みたいなものですから。本当の敗北とはそんなものでは無いと教えて差し上げますよ。」


そう言い明香はゆっくり訓練室の真ん中へ歩いていく。その後ろを疲れた表情でついて行き、最後の模擬戦に向かう勇司の後ろ姿を陵司と雹は見つめていた。


「ありゃ・・・、ダメだな。」


「うんっ、いつもより明香さん気合い入ってるねー。」


勤務最後の日、勇司は死力を振り絞り部下に抗うが歩いて訓練室を出る事は叶わず、それでも悪くない二連敗で特局を去る事になるのであった。



とりあえずここまでがプロローグ的なお話です。

次の三人になってからが、本編になっていく予定です。

のんびりお付き合いください。

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